第3話 部屋

「Aさ~ん、3570-1と書かれた部屋にお入りください」


俺は生まれてからこうして呼ばれ続けている


そして入った部屋で何かしらの処理、催眠を受けて成長してきた


恐らく他人もそうだろう


入った部屋の中で隣に座って診察?を待っている人と話すことができる


「あなたは何部屋目ですか?」

「いや~、もう覚えたませんね、多分0歳の頃からこうやってるはずですし

  数えようもないでしょう」


そう、普通はそうなんだ

でも俺は、自分自身でも疑っているけど、生まれた直後からの記憶がある


それを子供のころ自慢げに言うと職員に、臨時によばれて記憶を消す

 処置を受けさせられたことがある

でもそれでは取り除けなかったらしい


以来、俺はたぶん臨時的な処置を何回も受けている

でも消えないんだ


何もない部屋で一人の処女が粘土をこねている

それはやがて人型になり

少女の涙や体液が注がれていき

人になる

それが俺だった


俺はその少女に恋していたのかもしれない

子供の頃は嫌悪感だった

体液を出す方法が、何か汚かったから


でも今は違う

たぶん俺はあの少女と同じくらいの年になった、、、はず

ここには鏡がないけど、手の長さとか、欲望の変質で分かる


「Aさ~ん、どうぞ」


俺は呼ばれたので主室に入った

そこには医者のような格好の男と助手の少年がいた


「さあ、今日は体の成長の終わりの処理をします」

と、医者が言う

「お兄さん、僕が子供に見えますか?」

と、助手が言う

俺は頷くだけで、あとは身を任せた


俺の体に何かが注がれる

体毛は濃くなり、俺は、、、初めて下唇の下に髭が生える

痒くて気持ち悪い

鼻の下の髭はもっと子供のころから少しづつではあるけど

 産毛のように生えていて、まあ慣れてはいたんだけど

痒いんだ

そしてひげは剃られ服が着せられる

助手はまるで幼児のように見えた


しばらくベッドに横にされ、ちょっとだけ休まされた

「はい、もう大丈夫です、外の方をお呼びしていただけますか」


俺は部屋を出るとさっきの男に

「次の方、入っていいそうですよ」

と伝えた

その人はなぜか白衣になっていて

「大丈夫そうですね」

といって部屋に入っていった

俺は大人になったので、その辺は勘繰らないよう努めた



ある朝、急に起こされた

ここでの昨日の労働が堪えていたので、ちょっと不機嫌になった

でもその呼んだ人の姿を見て眠気は吹っ飛んだ


「あ、夢の造形の女の子」


つい幼児のようなリアクションになる

新生児の頃の記憶は、今では夢のようになっていた


いや、でもだんだん現実っぽく思えてきた

いや、これは現実だ

現実・・・


俺は

最後に見た視界の中に、自分の

まるでちょっとでも強く握ると折れそうな

赤ちゃんの手を見た


・・・

























「Aくん、順番だよ、ちゃんとせんせいのはなしをきいて・・・」




「・・・はい」



今度はうまくやれそうだ

宇宙は続く

誰かがいるから

誰かが思うから

誰かが気づかないから続く


誰もが神で

誰もがモブだ


宇宙はこうして構成され続けている

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