第28話 エルフの村
俺達は東の白竜の洞窟に向かう途中、エルフが集まる、村に立ち寄ることにした。どうも、そこにはニリアの古くからの友達がいるそうだ。挨拶に行きたいらしい。
俺はニリアとついでに天風に剣技を教えながらその村に向かった。
数10分ほど歩いたところに少し大きめの村が見えてきた。
「お、見えてきたよ」
「あれか?」
「はい。そうです。」
俺たちの眼にとんでもない物が飛び込んできた。
「え!?」
ニリアは戦慄の表情を浮かべている。
「うそだろ?」
「どういうこと…なんだ?」
「なん…で、エルフの結界を越えてきてんだよ…魔族が……」
そう、村の西側から魔族の大群が迫ってきているのだ。
「まずったなぁー」
俺は少し考えてから指示を出す。
「ニリア、お前は村に直接向かって村の護衛を、天風は、一旦戻ってセヴァンに報告、それが済んだらすぐに戻ってきてニリアと同じく護衛に努めろ!絶対に村の人を守れ!!」
「か、神風くんはどうするの!?」
おい、素が出てるぞ。まぁ口には出さねぇけど。
「俺はあいつらを止める!!」
俺はそう言い捨て、ソニック・ムーブを使った。ちなみにこの技は硬直が長い技ではあるがうまく、行動すれば硬直無しで連続使用ができる。
「無茶だ…あんな数……」
「やるしか…無いみたいね……」
2人は言われた通り、ふた手に別れる。
「なんとか間に合った。」
俺は肩を下ろす。だが、気を抜くわけにはいかない。
「さてと。」
魔族の大群を見やる。結構な数の魔族。これをどう対処すべきか─────
俺は思考をフルに回転させ、対策を模索する。俺にできること。俺にしかできないこと。俺は目を瞑り、自分に問いかける。いや、過去に問いかける。そしてひとつの《イメージ》が伝わってくる。
魔族の軍隊はもう目の前まで来ている。
「人族の剣士よ、そこを退いて貰えないか?」
魔族のリーダーと思わしき人物が前に出てきて言う。
「なんでだ?」
俺は問う。
「私はこの豊かな大地を火の海に変えなくてはならないのでね」
────なんで火の海にしなきゃなんねぇんだよ!!!!
俺はよっぽど、そう言ってやりたかった。
「なら、俺を倒してからにしてもらおうか。」
「ほう。人族にしては威勢がいいな。なら、その力試させてもらおう。」
黒の騎士鎧を身にまとったこいつは右手をまっすぐに上げ、振り下ろした。それと同時に後ろの魔道隊と思われる集団から様々な属性の魔法弾が放たれた。
俺は剣を抜き水平に構える。剣の軌道を前に伸ばすようなイメージを剣に伝え、タイミングを計り剣を水平上方向に向けて振る。剣は空気を斬る。だがまだここまで到達していない、魔法弾がことごとく破裂し消えていく。
「なに!?」
リーダーは驚きの声を上げる。
「まだやるか?」
「くっそ!」
リーダーは毒づき、もう一度命令する。すると次は広範囲に広がる霧のような魔法を放つ。
「無駄だ!!」
俺はこの剣に眠る"イメージ"を開放する。こいつの"過去"つまり黒龍だ。すべてを飲み込む魔族の守護龍。その過去を具現化する。
「飲み込め!黒龍!!」
剣を前に突き出すと、剣から黒い霧のようなものが広範囲に
霧が消え、視界が開ける。そこには先ほどまであったはずの大軍勢はほぼなくなっていた。恐らく残っているのはこの攻撃に耐えられるくらいの幹部達のみだろう。
「ま、まさか…これは…《神技》!?」
その通りだ。これは神技。剣の持つ過去を剣の技として発動させる。この力は神器級の武器にのみに使える最強の必技だ。
「さ、これを見てもまだやるか?」
「くっ………」
リーダーは戦慄の表情を隠せない。
「私達が行きます。」
そういって様々な武器を持った幹部たちが前に出てきた。
「頼む。」
そういってリーダーは一歩下がる。
「はぁ、あんたらさすがにしつこいわ。まぁ、来るなら殺るけど。」
─────突然だがこの世界では大きく分けて人族、魔族の二つの種族に分かれる。人族は"生命"つまり命だ。だが、魔族は厳密にいうと違う。魔族は生命ではなく"人形"魂の入れ物に過ぎない。そのためいくら殺したところでしばらくすれば同じ魂を持った、魔族が生まれる。これが魔族の厄介なところだ。
「行け。」
幹部の指揮をとる黒いローブの男。
人数は5人。左右に3、2と別れ、囲んでくる。素晴らしい連携力だ。だが────
「─────」
幹部たちが動いたのを最後に一切の音がしなくなる。しばらくして、幹部たちの持つ武器がことごとく地面に突き刺さる。
「な………。」
俺は同時に攻撃してくるのを予測して、静止状態から体を回転させ、水平に切る技、《ホリゾンタル・サイクル》を使い、すべての武器をはじいたのだ。
「さ、これでもまだやるか?」
俺は剣を払い、威圧するような余裕のある笑みを見せた。
28話 エルフの村 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます