第23話 契

 俺達はセヴァンの部屋で目を覚ました。昨日、俺達はセヴァンに連れられ、神樹エリフィアの中にある騎士の専用部屋に泊まった。今日は実際にエルフの王《アルス・ニヴァレス》に謁見することになる。


「さ、準備するか。」


「そうだね」


俺達は早々に準備を始めた。するとドアの方からコンコンと音がなった。


「君たち、もう起きたか?」


「ああ、起きてるぞ。」


「入ってもいいか?」


「ああ、構わないぞ。てかセヴァンの家だろ?ここ」


俺がそう言うと笑いながら部屋に入ってきた。


「はははは。確かにそうだな。」

「おはよう。神風君、天風君。」


「おはようセヴァン。」


「お、おはようございます。」


「先日は久々に剣についてあそこまで語ったよ。」


「俺もだ。」


「今日はアルスに謁見だな。下手すれば殺されるから気をつけるんだな。」


「え!?」


天風は戦慄の表情でセヴァンの方を見やった。


「冗談だ。」


「びっくりさせないでくださいよ!!!」


天風は珍しく、大きい声でそう言った。


「それは失礼。」

「君たちに話しておきたいことがあるんだ。準備ができたら、リビングへ来てくれ。」


「分かった。」


 俺達は早急に準備を済ませセヴァンのもとに行った。と言ってもドアを開けて数歩、歩いただけだが。


「来たか。」

「まぁとりあえず座れ。」


「ああ。」


俺達は言われるがままにセヴァンが座るソファの反対側のソファに座った。


「話したいことってなんだ?」


「お前たち、本当に想像イメージ使い手なんだな?」


「ああ。もちろん。」


「もう一つ、サッツァニアに迫っているについてだ。」


「近いうちに、魔族たちが、この人界に攻めてくる。」


俺は短くそう言った。


「それは本当なのか?」


「おそらく。確証は無い。だが、俺達のいた村、ウォロ村に魔族の軍勢が襲ってきた。それに、想像イメージの力を持つ俺がここに存在している。」


「君はなぜ、それに気づけた?」


「想像の力の使い手、いや、言い直したほうがいいかもな。伝説の力を持った人間は過去、未来問わず繋がっている。と思う。たまに変な記憶のようなものが頭に送られてくるんだ。」


「それで気づいたと?」


「そうだ。」


「あえて、想像イメージの使い手と言わなかった理由は?」


使。」


それがそう言うとセヴァンは真剣な表情に変わった。


「そうか。私の話を信じれるか?」


「突然どうしたんだ?」


「突拍子もない話だからだ。」


「内容によるな。」


俺は笑いながらそういった。


「それもそうだな。よし、話そう。300年前。サッツァニアに想像イメージの力を持った人間が王都の市街地で生まれた。そして、それから更に12年後。つまり312年前、魔族との戦争が始まった。あまりにも突然のことだったので、兵の招集もできず、事態は深刻化していった。地を削り、森を焼き、街を破壊し、人を殺したその戦争はついにほぼ全ての人族を消滅させることになった。だが、当時12歳という若き想像イメージの使い手、はその力を完全に開放し、世界を再生し、魔族を一斉に封印した。という話がある。」

「あれは本当にひどい戦いだった。」


俺は違和感に気づき質問する。


「なんか実感のこもった言い方だな。」


「いいところに気がついたな。私はその戦争に参加しているのだ。他のエルフの騎士の中にも数名経験している者がいる。このことは極秘なのだが、想像イメージの使い手が現れたとなると話は別だ。」


「話は大体つかめた。だが、今回はそうはさせないぞ。俺がなんとかする。そのためにこの国まで来たんだ。」


「君はこれからどうするつもりなんだ?」


「決まってる。三国に協力を要請し、三国で魔族に立ち向かう。それしか無い。」

「あと、もう一つ、タイムリミットは迫っているがより多くの人間を想像イメージの力を使えるようにする。」


「なるほどな。了解した。私も全面的に協力しよう。」


「本当か?」


「もちろんだとも。」


 俺達はその場で立ち上がり剣を抜きそれを横に倒し、水平に並ぶように腕を前に突き出した。慌てて天風も同じようにし、三角形を描くように並べた。


「よろしく頼むセヴァン、天風。」


「うん!」


「ああ。」


 俺達は剣士の契のようなものを交わし、剣を閉まった。それと同時に部屋に『ぐうぅぅうう』と言う音が俺の腹から響き渡った。


23話 契 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る