第22話 アルフヘイム
俺達はエルフの騎士に先導され、アルフヘイムに向かっている。
「何か連行されてるみたいだね」
「そうだな…。」
「まぁ、殺されるわけじゃないし大丈夫だって。」
「え!?殺されるの!?」
「だから大丈夫だって」
そんな話をしていると森を抜けた。そこに待っていたのは、ウォロ村の近くにある場所だとは思えないくらいファンタジー感のある場所だった。確かにこの世界はリアルなファンタジー世界だ。この世界に降り立った時俺はまさにファンタジー世界だと、そう思った。が、ここは桁違いだ。緑を基調とした、街並みに加え、そこらには白、青、黄、緑、赤などいろんな色の光が浮いている。
これがアルフヘイムか。と、俺達はその光景に目を奪われ、完全に思考が停止してしまった。
「おい!何をしている!早くこい!!」
俺達はエルフの言葉で我に返った。
俺達はエルフの騎士に追いつくために少々走った。
「ここがアルフヘイムか……綺麗なところだな。」
「本当に綺麗なところだね。」
「アストニアにこんなところがあったんだ……。」
「ああ、ウォロ村から1日しか歩いてないのにな。」
「別世界だ。」
「君たちはどうやらいい人達のようですな。」
「私達のことを見てもどこにも悪感情を宿していない。」
「純粋にこの街を楽しんでいる。」
「わかってくれるか?」
「てか、エルフはこころまで読めんのか?」
「ええ、と言っても一部の者にしか使えないがな。」
「へー心を読むとか、どうやって戦えばいいんだよまじで。」
「それは聞き捨てなりませんな?」
俺はそう、指摘された時にようやく俺の犯したことに気づいた。
「い、いや。これはなんというか……剣士としての本能と言うか強い人と剣を交えてみたいと言う気持ちが前に……。」
「すみません…」
俺はそう言って頭を下げた。
「ははっ。面白いことを言うな。確かにそうだな。私も忘れていたよ、騎士を目指して、強くなろうとしていたときの気持ちを忘れていたよ。」
エルフの騎士は笑いながらそう言った。
「お?わかるか?この気持?」
「分かるとも。やはり、種族は違えど、人類には変わりないのだな。」
「君とは仲良くなれる気がするな」
俺はこの騎士と同じ感想を持っていた。この騎士とは良きライバル、そして良き戦友となれる気がした。
「俺の名前は神風だ。よろしくな。」
「私は、《セヴァン・ニヴァレス》だ。よろしくな。神風。」
俺はセヴァンが出してきた手を握り返し握手を交わした。
「おいおい。なんでこんな一瞬で仲良く慣れるんだよぉ。」
「あんなに敵対してたのにー」
「これも剣士の絆ってやつだろうな。」
「そうだな。」
俺とセヴァンは声を揃えて高らかに笑った。
「はぁ、全く、本当にぶっ飛んでるよなぁ、神風は。」
「それが俺だからな!」
「胸張って言うことかよそれ!」
こんな話をしているとすでにアルフヘイムの中心、にそびえる樹、《神樹エリフィア》の麓まで来ていた。
ウォロ村からも見えるほどにでかいこの樹はものすごい存在感を放っていた。
「そろそろ、辺りも暗くなってきている。とりあえず、私の部屋に案内しよう。王様への謁見は明日にするといい。」
「そうだな。でも、いいのか?騎士様の部屋に招待してもらっちゃって。」
「ああ、構わない。私はエルフの騎士団、《魔剣の騎士団》の中でも権力を持っている方なんでな。私のわがままはたいてい通る。」
「いや、それむしろダメなんじゃ……」
天風は俺の後ろでぼそっとつぶやいた。
「私にはこの部屋は広すぎるのだ。まぁベットは無いが、部屋は開いている。布団は用意しておいてやる。」
「ありがとうなセヴァン!」
「気にするな。これも何かの縁だ。ゆっくりしていってくれ。」
そう言ってセヴァンはエリフィアの中に入っていった。
「え!?この樹の中にあんのか!?」
「ああ。ここは騎士たちが住まう場所でもあるからな。」
俺はある意味監視されているということに気づいたが、まぁ仕方ないと心のなかで思った。
俺達はセヴァンの部屋に招かれ、夕食をともにした後、しばらく剣について語り合った。それはもうたくさん。天風がパンクしてしまうくらいに。
22話 アルフヘイム 完
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