第19話 黒き影
俺は全身に新しいコートの重みを感じながら天風の横を歩いていた。
「なんか、いつもと違う雰囲気が神風からするんだけど。」
天風は新装備に酔っている俺を見抜いたらしく少し冷たい視線を飛ばしながら言った。
「そ、そうか?」
「うん。まぁどうせそのコートが気に入ったんだろ?」
「わかってるじゃないか。やっぱいいよなー新しい装備って。」
「そうだね。それは共感できるなー」
「それはってなんだよ!」
天風は最近、より親しくなってきたせいで、俺に対しての棘が鋭くなってきた気がする。
「そういえばさ、神風の元いた世界ってどんなところだったの?」
「そういや言ってなかったな。」
「ここほどいいところではないよ。剣とかの武器類は持てない世界だからな。それでも武器を持たない人間に手を出すようなやつがいたりする。」
「それに、国と国の戦いもなかなか収まらない。ある意味では
「そうなんだ…。ん?でもなんで神風はそんなに剣が使えるの?」
「うーん。それは説明が難しいな。俺のいた世界には人間が作り出したこの世界みたいな世界に自由に行き来できたんだよ。唯一、その世界だけが剣を握ることを許されている場所なんだ。俺はその世界で剣を極めたんだ。」
「へーそうだったんだ。まだちょっと異世界があるって言うことは実感を持てないけど、神風が本当のことを言ってるってことはわかる。」
「そうか。」
俺はなんとか俺のいた地球について簡単に説明を終えることができた。
そんなことを話しながら歩いていると辺りはもう暗くなってきていた。
「もう真っ暗だね」
「そうだな。そろそろどっかで休むか。」
「そうだね」
俺達はマップを見て良さそうなところを探しながら歩いていた。すると、いきなり俺達に向かって暗闇から白銀の閃光が飛んできた。
俺はすぐさま、剣を腰から抜き、その白銀の閃光を弾いた。その白銀の閃光は『キィィィン!』と言う音をたて、闇に消えていった。
この音は剣が弾かれた音と同じ音だ。つまり───俺たちを誰かが攻撃してきたということだ。
「おい!出てこいよ。」
俺がそう言うと、暗闇から一人の男?が出てきた。
なぜ男?かというと黒いフードをかぶっているうえに辺りが真っ暗なため見えないからだ。ただ見た目がちょっとガタイが良かったから男だろうと推測したわけだ。
「まさか、俺の技を見破るとわなぁ。」
「お前、どんな反射神経してるんだぁ?」
「お前こそ、何者だ!」
「どぉせ、気づいてんだろぉ?」
「やっぱりか。………殺人集団、リーダー、ガイルだな?」
「俺の名前まで知ってるとわなぁ。」
俺は村を出る前、昔俺たちを襲い、俺を殺した奴らの事を調べていた。その時、俺はこいつの名を知った。
「それにしても、すげぇ、ハイドテクだなぁおい。」
「俺でもそこまではできねぇわ」
「ハイディングスキルは得意だからな。」
こいつは今、俺が何気なく使った《リーダー》という言葉を理解し、更には《ハイドテク》と言う言葉まで使った。つまりこいつはこの世界の住人ではなく、俺と同じ、地球の人間だ。
「そこにいるのに、そこにいない…か。そんなハイドテクどこで手に入れたんだぁ?」
「お前に教える必要なんて無いね」
俺はこの暗闇の中で気配をボケさせることで完全に姿を見えなくしている。俺の新防具のバフで暗闇での隠蔽率が更に上昇していることもあり俺の位置はすぐ隣りにいる天風でさえもわからないだろう。
「あぁ、そうかい、なら、その首をもらって、てめぇの死体に聞くしかねぇか。」
「あぁ、でも、死体は喋らねぇか。」
ガイルはそう言って、腹を抑えながら笑う。
「お前の他にもあと、3人いるだろ。出てこいよ。」
「てめぇ、ハイドだけじゃなく、索敵スキルもたけぇんだなぁ。」
「一体、どうなってやがるんだぁ?」
ガイルはそう言った。
「さぁな。」
俺はそう言って、ハイド状態を解除した。
その瞬間、ガイルは表情を変え、短く言った。
「やれ」
その瞬間、四方から必技と思われる閃光が俺をめがけて飛んできた。
俺はそれを右手に持つ剣でそれを受け止め、
『パキィィン』
と言う音が周囲に響き渡った。
19話 黒き影
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます