第18話 旅立ち
俺達は村の復旧を手伝いながら旅立ちの準備をしてきた。そしてやっと今日、ほぼすべての作業を終えた。
そして今日は例の物が出来上がる日だ。
「神風君、天風君、ちょっといいかな?」
そう言って俺達のもとに来たのはディグルだった。
「ディグルさん?別にいいですよ。どうしました?」
「例のものが完成したのでな。」
「まじ!?いやー待ちくたびれたぜ!早く行こうぜ!!」
やはりMMORPGゲーマーとしては新アイテム、新武器、新防具といったものは興奮してしまうものだ。俺はある程度の敬語で話していたのにも関わらず、思いっきり本性が出てしまった。
「面白いやつだな、本当に。」
「す、すいません……。」
「相変わらずだなぁーこんな状況なのに。」
「す、すいません……」
俺はディグルのみならず天風にまで笑われてしまった。
「まぁ、きにするな。ついてこい」
「はい。」
「さっきまでの勢いはどこに行ったんだよ。なんか小さく見えるのは気のせいかい?」
「多分。」
「多分って。」
天風は呆れた様子で両手を左右に出しながら言った。
俺は舞い上がってしまい、恥ずかしくなって体感でも一回り小さくなったような気がした。
「さぁ、ついたぞ。」
気づくともう鍛冶場についていた。
「ほら、神風!天風!お前らの新しい防具ができてるぞ!」
そう言って鍛冶場から出てきたのはこの村一番の鍛冶職人の《ガルト》だ。
「おお!早く見せてくれ!!」
ちなみにガルトとは割りと仲がいい。ガルトが作った剣を試してほしいと俺に依頼してくることもある。それに、俺の剣、黒竜の剣の鞘を作ってくれたり、この剣を強化してくれた。
ちなみに黒竜の剣は合計で50回も強化ができる。流石は神器級の武器だ。
すでに+10まで強化済みだ。
とまぁこんなことをやってもらったりやったりしていたため中が良くなったってわけだ。
「ほれ」
そう言ってガルトが出してきたのは、漆黒のレザーコートだ。丈が長く、肩には漆黒の金属の肩当て、全体的に金色のラインが入っていて、高級感、頑丈さをものすごく感じるいいコートだ。
天風はいかにもファンタジーと言ったような白ベースの金色のラインの入った、いかにも騎士と言った感じの服だ。
俺達は早速貰った装備を装着した。
黒と白でなかなかにいい感じになった。
そして、もう一つ。
「ほれ、これがお前の新たな剣、《エンジェリック・ソード》だ。」
なにそれ!?かっけぇ!!と思ってしまったが、これは俺のではなく、天風のものだ。
「おお!これが…すごいです!!ありがとうございます!!」
「まぁ、白竜の剣が手に入ったら使わなくなるんだろうから、そのあとは売るなり好きにしてくれ。」
「まさか!!売るなんてことは絶対にしません!大事にします!」
「おうよ。まぁそれはありがてぇ。頑張ってくれよ。俺達の希望なんだからな。」
「「ああ!!」」
俺達は声を揃えて返事をした。
そして、2日後。ついに俺たちの旅立ちの日が来た。
「みんな、今までありがとう。本当に助かった。絶対に、帰ってくるから。」
「なに、水臭いこと言ってんだ!お前らしく大暴れしてこい!」
そう言って前に出たのはルードだった。
「わかった。」
俺は短くそう答えた。
「神風くん、天風くん。帰ってきてくだいさいね。ここは、二人の帰る場所はちゃんとあるから。」
今度はルースが前に出てきてそう言った。
「おう」
「うん」
「さぁ、行って来い。ここは私が守る。安心して旅をしてこい。このことがもし何らかの事件じゃ、なかったとしてもその経験は絶対に役に立つ。」
ディグルはいつもとは違い煉劉聖騎士の鎧を纏い、腰には剣が携えてある。
俺たちを安心させるためであろう。
「わかった。この村は頼む。」
「それじゃ、行ってくる。」
「いくぞ、天風。」
「うん。それじゃ、俺からも。行ってきます。」
「「行ってこーい!!」」
「「頼んだぞ!!!」」
村のみんなから応援の声が上がった。
俺達はその後は何も言わずに村に背を向け歩き出した。
18話 旅立ち 完
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