第16話 覚醒
俺は、親友である神風が倒れるのを見て自然と体を動かした。俺の一番苦手な技、《ソニック・ストライク》を無意識的に起動した。
「うおおぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「神風に!手を出すなぁぁぁぁあああ!!」
今まさに神風を襲おうとしている魔族のダークヒューマニティの後ろから必技をヒットさせた。が、鎧に阻まれ、貫通まではしなかったもののダークヒューマニティを吹き飛ばすことに成功した。
「くっ、誰だ。」
「俺の名は《剣士》天風!」
「俺はお前を許さない!何があっても!!」
俺は神風から貰ったこの鉄の剣をしっかり握り直して地面を蹴った。そして剣を体の横に構え、技を想像する。剣は青白く光はじめ俺はタイミングよく体を動かし技に入る。片手剣初級、2連撃技《ツイン・スラスト》だ。修練の時には一度も完全に成功させれなかったが、この時、初めて完璧に技を発動させた。
だが、それでもこのダークヒューマニティには無意味だった。
「あまい!!」
俺の必技は簡単に弾かれ俺は体制を崩した。そして相手の突き攻撃をまともに食らってしまった。
「うわっ!」
当たりどころが悪かったせいか体を動かすこともできなくなってしまった。
俺はその場に倒れうずくまる。なんとか立とうとするが、立つことはできなかった。
よく見るとスタン状態になっている。声すらもまともに発せなくなっていた。
俺はなんとか力を振り絞って彼の名を呼んだ。
「神風……」
俺は神風の方に手をのばす。だが、やはり腕が上がらない。
俺は必死で心の中で叫び続ける。
『神風!神風!!』
気づくと俺の両目から涙がこぼれていた。
──────『ここは一体…どこだろう…』
俺はただ、真っ白な世界に立っていた。
『俺は……誰だ?』
いや、知っているはずだ。
『そうだ、俺は神谷伊風だ。』
『なぜ俺はここに居る?』
『ここは何処だ?』
『ここは地球ではない。そう、サッツァニアだ。』
『でも、こんなところはあったか?』
『俺は…死んだのか?』
頭の中を探っても、何一つ記憶が無い。いや、一つだけある。
それは俺が剣士だと言うことだ。
『俺は剣士だ……。剣士ならやることがあるはずだ……。』
それは一体何だ?俺は真っ白な頭の中を必死に探し回った。
『そうだ、守らなきゃならない……だが、何をだ?…』
俺は再び考えた。脳をフルに動かして。
その時、俺の頭のなかに膨大な力とともに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『神風!神風!!』
俺は頭を抑えその場に膝をついた。
『この声は一体……』
『いや、知っているはずだ。』
そう、これは彼の強い
俺はこの状況だからこそできることを導き出した。彼の
俺は自分の脳に眠る力を完全に開放するため頭のなかに意識を集中させた。
俺自身の最深部にある力、それを
次第に、俺の生前の記憶、つまりサッツァニアに生きていたときの記憶が鮮明に蘇ってくる。
そして、あたりがだんだん暗くなっていき。そして一筋の光が見え、やがて明るくなる。
俺は咆哮とともに立ち上がった。
「うおぉぉぉおおおお!!」
残り1割を切っていた天命も完全に回復し、力を開放させる。
「な、なんだ!?」
流石にシャービスも動揺を隠せていない。
「シャービス……決着をつけよう……。ここで……」
「お前!?どうして…。」
俺は自分の
この剣に眠る力を開放する。そのためには剣の《記憶》に入り込む必要がある。
黒竜の剣はかつて魔界の守護竜だった。だが、その竜は人界の一人の騎士によって倒され、その騎士に使える竜となった。そしてその騎士がこの村が魔物に襲われているところを助け。その騎士は命を絶った。そしてその後ボロボロになった竜は自ら騎士の持っていた剣と融合し、この黒竜の剣となった。
その《記憶》を開放し力に変える。その技の名は《神技》だ。
神技とは、魔剣クラスの武装に存在する《
この剣の神技の特徴は力を貯めることができるということだ。つまり、神技を発動している状態で必技を発動できる。
俺は剣を前に突き出し、《ソニック・ストライク》を使い、黒竜の如く突進した。
そう、この剣の元の姿。魔界の守護竜、《黒竜ゾディヴァーナ》のように。
「いけぇぇぇぇ!!!」
俺の必技はシャービスめがけて吸い込まれるように命中する。
「うわぁぁぁああああ!!!!」
技を終えるとそこにはもう、シャービスの姿はなかった。なぜなら黒竜ゾディヴァーナはすべてを飲み込む竜だからだ。
「はぁはぁはぁ……」
俺の体は限界を超えた力を使いすぎてかなり疲弊していた。
俺は一度膝をつくが、すぐに立ち上がって、天風の方へ向かう。
「天風……。すまなかった。」
俺はそう言って手をかざしまだ少し感覚が残っている
だが、その力の正体はわからない。
「ありがとう……神風……。君が謝る必要なんて無いよ。」
「神風……君はもしかして……あの時、俺をかばって死んでいった俺の親友……なのかい?」
「ああ、そうだ。」
俺は短くそう、答えた。
「やっぱり……。君は本当に変わらないね。本当にありがとう……。」
「そして……おかえり、神風。」
天風は溢れる涙をなんとかこらえながらそういった。
「あ、ああ……ただいま。天風…本当にあえて良かった……。これからもよろしくな。」
俺は涙を堪えることができず、泣きながら言った。
「うん…いつか…一番になろう。二人で……。」
「「必ず!!」」
俺達は声を揃えてそういった。
16話 覚醒 完
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