第13話 命の重み
俺達はあの湖に向かっていた。
「え?村から出るの?危ないよぉ」
「情けないなぁ。別に問題ないって、いいところがあるんだ。そこに向かう。」
「それまでは、とりあえず剣を握ることの重みを言っておかなくちゃならない」
「重み?」
「そうだ、剣は一歩間違えれば簡単に人を殺すことができてしまう。お前ならわかると思うけど、命の重みをしっかり念頭に置いて剣を握る必要がある。」
「うん」
天風はかなり真剣な顔になって頷いた。
「いいか?どうしても命を選ばなきゃいけなくなるときが来る。魔族だけじゃなく人族の人間だって殺さなきゃいけなくなることもある。でも、ためらうな。この世界は理不尽だ。だが、だからと言って何でもかんでも殺せばいいってわけでもない。」
「分かってる」
「それじゃあ、殺人集団と同類だからな。」
「うん。でもどうすれば?」
「殺さずに殺すんだよ。」
「え!?」
天風は驚きを隠さずには居られなかった。
「こ、殺さずに殺すって…どう言う…」
「何も、剣を相手に向けるだけが、戦いじゃないってことだ。」
「え?…どう言う意味?」
「例えば、絶対的な力の差を見せつける。相手ではなく剣を狙うんだ。」
そう、俺は今までたとえゲームの中だとしても一切、プレイヤーにはダメージを与えたことは無い。俺は剣を狙うなり、相手の攻撃を全部避けたりと、絶対的な力を見せつけ降伏させて勝ってきた。
「剣を?」
「そうだ、殺すんではなくて
「でも、それは簡単なことじゃない。殺さずに殺すためには、それ相応の強さが必要だ。それも、相手を圧倒できる強さが。」
「なるほど……神風!俺を強くしてくれ!もう誰も失わないように…」
「ああ。そのためにここに来たんだからな。」
「ついたぞ」
俺達は話している間に湖に着いていた。
「おお…綺麗だ。それにどこか懐かしい。」
それもそうだ。俺たちが小さな頃、剣の修練をした場所もこんな場所だったからな。だからここに天風を連れてきた。天風に俺のことを完全に思い出してもらうためにも。
「だろ?」
「じゃあ、早速始めるか。とりあえずこれをやるよ、俺が村の兵士を始めたときにもらった鉄剣だ。」
「いいのかい?」
「ああ、俺には
「うわぁ、綺麗な剣だねぇ」
「だろぉ?」
俺は自慢げに言った。
「んじゃまずはこの基本の技から練習しようか。」
「うん!」
俺は前に出て剣を腰の横に構え、片手剣初級基本水平斬り、《ホリゾンタル・スラッシュ》をやってみせた。
「おお!」
「ほら感動してないでやってみ。」
「おう!」
天風は見よう見まねで剣を構え、必技の起動と同時に剣を振った。
が、天風は爆発音とともに吹き飛ばされた。
「うわっ!?」
天風はその場でダイナミックに転んでみせた。
俺はそれを見て腹を抱えて笑った。
「あはははは」
「イッテー……そこまで笑う必要無いじゃないかー」
天風はお尻を抑えながら言った。
「すまんすまん。転び方があまりにも面白かったんでつい」
「なんか、納得行かない。」
「まぁまぁ、初めてなのに技を起動できたんだ。それだけでもすげぇよ」
「そ、そう?」
「ああ。でも、まだ構えがあまいな。もっと腰を低くして……」
俺は天風に剣の使い方についてあたりが暗くなるまで教え込んだ。きっと天風はいい
13話 命の重み 完
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