第12話 再会
俺はエルの言葉について少し考えていた。
「もう一人の覚醒者……」
どうしても気になってしまう。あの時の俺の記憶であろう映像、あの映像には明らかに俺ともう一人居た。あれは誰だったのだろう。いや、わかってはいる。この村に居る、あいつだ。あの事件のときに後ろの方で見ていた俺と同い年くらいの男子。俺が
「……そろそろ戻るか。」
俺は剣を鞘に収め、村に向かってあるき出した。少し歩くとルードが村の入り口に待ち構えていた………。
「よう、神風、村の周りは問題なかったか?」
なんだろう…この威圧感…。いや、わかっちゃいるんだが。
「……何も問題なかったですよ。うん。」
「そうか。剣の修練は楽しかったか?」
やっぱり……バレてたよ……。
そういやこの村には優秀な索敵士が居たなとこの時思い出した。
「あははは………ごめんなさい……」
「はぁ、お前ってやつは…まったく……」
「しょうがないな。私からの特例だ。お前はこれから自由に仕事をしろ。そのほうがお前は実力が発揮できる。」
「まじで!?」
「ああ、ただし!!しっかり仕事しろよ?」
ものすごい圧力を感じた。だが言葉以上の意味があるように思えた。
「ルード、お前、俺があそこで話してたところ見てたな?」
「な、なんのことかな……」
動揺した。これは確実に見てたなこりゃ。
「言いたいことはわかると思うけど、俺ちょっと用事できたから、今日は帰るわ。」
「ああ、仕方ない。頼んだぞ。神風。」
どうやらルードは一番俺のことを理解してくれているようだ。
俺は村の中に入り、あいつに会えるであろう道を歩いていた。すると後ろから聞き覚えのある声がした。
「あの……」
「きたか、《天風》。」
「!?」
「ど、どうして俺の名前を!?」
「まぁ、気にすんな」
俺は笑いながら、言った。天風は動揺を隠せないで様子だった。
「で、俺に何の用?」
「あ、えっと…俺に剣を教えてください!!」
「なんで剣を握りたいんだ?」
「それは…俺、友達と約束したんです。一番になろうって。」
「でも、街の外に出て街の人に内緒で剣を練習していたときに殺人集団と出くわして、俺のことをかばってその友達は死んでしまったんです。」
「俺は必死で逃げてなんとか街についたら両親が連れされれたんです。」
「もう、あんな思いはしたくない。だから俺は強くなる。約束を果たすためにも。」
天風の言う、友達と言うのは俺のことだとすぐにわかった。黒竜の剣を握ったときの記憶が今になって鮮明になった。
「わかった。俺はお前の力になるよ。」
「本当ですか!?」
「ああ、でも、その前に、その敬語やめようぜ。俺ら、同い年じゃん」
「そ、そうだね」
おそらく天風も薄々気づいているのだろう。俺がその友達だってことを。なぜならこいつは、
「じゃあ、よろしくな天風!」
「うん!よろしく!」
「えっと…」
「神風だよ」
「神風!」
「んじゃ早速、剣の修練に出るか。」
「おう!」
天風は今あったばかりだというのにかなり口調が柔らかくなった。おそらく俺たちは幼馴染であり兄弟のような関係だからだろう。
俺達はあの、湖に向かって歩き出した。
12話 再開 完
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