第11話 真実

 俺は黒竜の剣を貰った後剣の鞘をディグルから受け取り、村周辺の調査に出ていた。


 俺は村から少し離れて、さぼりに来ていた。

なぜなら先日ここに来て剣の修練をした時、少しを覚えたからだ。


「なんか結局、伝説の技に続いて魔剣クラスの化物を手に入れてしまった……。

これで固有スキルがあればほんとに敵なしだなこりゃ」


 俺は剣を鞘から抜き剣を構えた。そして気合を込め、

剣を振った────はずだった。


「あれ?」


剣が振れない。正確には体が動かない。なぜだ?一体何が起きているのだ。


「どうしたの?」


突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「その声は…エルだな?」

「ピンポーン!正解!!」


エルは笑顔で俺の前に現れた。


「びっくりした?」

「ああびっくりしたよ。それより助けてくれ動けないんだ。」

「まあ、そうだろうね。だって僕がやったんだもん」


「…………はい?」

「今解除するよ」


エルはそう言って俺に手のひらを向け「えいっ!」と言った。すると体はいきなり動き出し、勢いに負けてその場に転んだ。


「イッテ!」


エルは「あはははは」と腹を抑えながら笑っている。


「なんでこんなことしたんだよ」

「それはねぇ君が困っているところを見てみたかったからだよ。」

「はぁ、そんなことか」


俺は呆れた口調で言った。


「それはそうと、なんでここに来たんだ?他に要件があったんだろ?」

「うん!僕の世界はどうかな?」

「ああ、良い世界だ。来てよかった。」

「そう?なら連れてきたかいがあったよ!」


俺はエルに聞きたいことがあった。それはについてだ。


「おい、エル。」

「ん?どうしたの?」

「俺はこの世界に来る前、そして俺が地球に生まれる前はこの世界の住人だったんだろ?」


 俺は真剣な表情で言った。


「へぇ、それに気づいちゃったんだ」

「やっぱり、そうなんだな?」


俺は確認するように言った。


「確かに君はここの住人だよ。もともとはね。」

「俺をここに連れてきた理由は一体なんだ?」


エルは珍しく真剣な様子で考えている。


「そうだね。君には話してもいいかな。この世界…いや空間には全世界を管理している、コア・ネイラーと言う調整者がいるんだよ。今のコア・ネイラーは二代目。その二代目は死んだ者の魂を住んでいた世界とは違う場所に転生させているんだ。でも、そんなことをしてしまえば世界のバランスは崩壊しかねないんだよ。例えば殺伐とした世界出身の者の魂には殺戮という本能がある。だから他の世界に生まれてしまうと、いつかその本能を芽生えさせてしまう。君がVR世界の中で、ものすごい実力を出していたのも、もともとはこの世界の住人だからってこと。だから僕はそういうことになる前に…と言いたいけどそれも無理なんだよね。」


「なんでだ?」


「それはね。その人間がここに来る時に本来その年齢になっているであろうときに連れて行かなきゃいけないんだ。そうしないと体に大きな負担がかかるしその世界の人にも負担をかけてしまう。」


「なるほど」


「君を連れてきたのはこの世界に必要な人物だったからだよ。だから君を最優先でここに連れてきた。」


「やっぱりここと地球の時間の流れは違うんだな。」


「そうだよ。古い世界であればあるほど時間の流れはどんどん早くなっていく。君はこの世界に来た時、ものがゆっくりに見たんじゃない?」


「ああ、正確には動きをはっきりとらえることができた。」


俺はエルの言葉で不思議に思っていた点がすべてが繋がった気がした。


「つまりはそういうことだよ。」


「俺がこの世界に必要だって言ってたよな?それはなんでだ?」


想像イメージの使い手だからだよ。」


俺はなぜかこの言葉が猛烈に重たい言葉に思えた。


「何かが起こるんだな?」


「そうだよ…近いうちに…ね」


「俺は何をすればいい?」


「君には兄弟みたいな関係の人がいるはずだよ。もちろん血はつながってないけどね。でも、別のものでつながっている。」


「別のもの?」


「そう、想像イメージの力でね。」


これでわかった。なぜ俺の頭の中に映像が流れていくるのか。

それは想像イメージのちからを持つ者同士は繋がっている。そのもう一人の覚醒者が俺の記憶を持っていた。そして俺にその記憶を送ってきていた。ということだ。


「それだけじゃないよ。」


「え?」


想像イメージの力は未来、過去、現在問わずすべての想像イメージの覚醒者と繋がっているんだよ。」


「なるほどな…でもそのもう一人の覚醒者は俺のことはわからないんじゃないのか?」


そう、なぜなら世界を移動してしまうともとの世界の人間には認識されなくなるからだ。


「そうだね。でも死んだ後であれば存在はわかる。代わりに名前を思い出せなくなるんだよ。」


「そうか、俺はこの世界のためならなんでもするぞ。エル、お前は俺と、そのもう一人の覚醒者とコア・ネイラーを倒せって言いたいんだろ?」


「なんで君はそんなに鋭いのかな~まぁそういうことだよ。」


「これからよろしくな。エル」


「うん、よろしく」


『《アウェイク覚醒》の覚者さん。』


エルは俺に『たのむよ』と言わんばかりの笑みを残して消えていった。


 俺はもう一人の覚醒者がこの村に居ると確信を持っていた。これも想像イメージの力のせいなのだろう。


11話 真実 完

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