11 僕たちは、人類のためにこの翼をささげる
人型迎撃戦闘機――
『ガンツァー』は、人類が『巨人』に対抗する唯一の対抗手段であり切り札。
その迎撃方法は――いたって単純であり、簡単なもの。
『新横浜基地』に設置された『マスドライバー』から、地球の静止軌道上に『ガンツァー』を打ち上げ、『巨人』が大気圏に突入するまでの間に『ガンツァー』で『巨人』を破壊する。
これが、『巨人』迎撃の『第一フェーズ』。
その後、宇宙空間で破壊されて大気圏に突入した『巨人』の破片を、熱圏から成層圏の間で確固撃破する。
これが、『第二フェーズ』。
『第二フェーズ』からは迎撃支援用の『ガンツァー』や、従来の人類兵器――航空戦闘機、艦隊、ミサイルなども投入し、『巨人』の欠片を全て撃破するための総力戦となる。爆破されて破片となった『巨人』は、『重珪素』の性質である時間と空間への干渉能力が弱まるため、これまでの人類兵器でも確固撃破の成功率が上がる。
この『巨人』迎撃作戦――『ギガント・マキアー』において、一番重要なのは、肝心要は『第一フェーズ』の『巨人』の直接破壊。そしてそれを行うには、
第一第二『巨人』迎撃には、従来の人類兵器――航空戦闘機などを無理やり宇宙空間に打ち上げて迎撃を行ったが、その結果は無残なものだったと言う。
人類の力を結集した総戦力は――
文字通り全滅した。
『ガンツァー』が『巨人』迎撃の唯一の対抗手段であり、切り札足りえたのは――『ガンツァー』を製造するための素材に、重珪素『ギガニウム』が使用されている点と、『マキア』の存在が大きかった。
操縦席周りの素材と機体の装甲材に『ギガニウム』を使用することで、『ガンツァー』は『巨人』接近時でもレーダーの使用を可能とし、通信の切断や乱れを防ぐことに成功し――そして、編成された部隊による迎撃活動を可能にした唯一の兵器となった。
『ギガニウム』を使用した従来型の航空戦闘機なども製造されたが、巨人に接近して破壊する上では、人型の利点と汎用性は計り知れず、こちらの生産ラインは少しずつ縮小していった。
そして、『巨人』迎撃に不可欠なもう一つの存在――
『マキア』。
『ガンツァー』の操縦に特化するように遺伝子操作を行い、生まれながらの戦闘機乗り――『ガンツァー・ヘッド』である子供たち。
彼らは、生まれながらにインプラントされている『iリンク』よって、それを肉体や感覚の一部として、何の違和感もなく使用することができる。思考、通信、検索、その他の拡張機能の全てを、十全に使いこなすことができる。
その結果、『マキア』と『ガンツァー』とを『iリンク』で同期させ、肉体の操縦だけに頼らない思考による操縦方法の開発に成功した。
それが――
『iコントロール』。
これにより、自分の四肢のように精密かつ柔軟に『ガンツァー』を操縦することが可能となり、人型のメリットを十全に発揮することが可能となった。
そして、人類はついに『巨人』の迎撃をついに成功させた。
初の迎撃成功は――
第四『巨人』。
これの迎撃成功により、『巨人』迎撃作戦――『ギガント・マキアー』は、少しずつその形を洗練させ、達成可能な作戦へと昇華していった。
しかし、一見達成可能で単純な作戦に見えたとしても、『巨人』迎撃によって出る犠牲者の数は凄まじい。
直接前線に出る『マキア』はもちろん、迎撃に任務に携わる多くの人類――迎撃支援・援護の『ガンツァー・ヘッド』、航空戦闘機、護衛艦隊など、それらに搭乗する多くの人類が犠牲となる。
迎撃し損ねた『巨人』の欠片が一つでも地上に衝突すれば、もちろんその被害も甚大だ。人類の大半が暮らす『地下都市』にまで被害が及ばないとしても――『国家救済機関』が見捨てた多くの人類がまだ地上では暮らし、彼らは常に死の危険と隣り合わせで生活をしている。
旧中華街の子供たちのように。
そして、僕の知らない国や土地にも、たくさんの地上で暮らす人類が――子供たちがいる。
だからこそ、僕たちは一つの欠片も撃ち漏らすことなく、『巨人』を破壊しつくさなければならない。
僕たちに、失敗は許されない。
僕たちは、常に多くの人類の命を背負って空を飛ぶ。
何度でも、
何度でも。
僕たちは、人類のためにこの翼をささげる。
もう一度、人類が空を見上げてその先に思いを馳せ――
手を伸ばせるようになるために。
――空に。
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