初めてのホテル

「シャワー浴びないの?風呂に入るのでも良いけど。結構広いよ」


寒かったので体をあっためる意味と、今後の為にシャワーを浴びて来た。

私は化粧をしないから、こういう事は気楽で助かる。

素直に言うなら風呂で温まりたかったけど、あんまりこいつを待たせても可哀そうかと思った。

まあ、こいつが風呂で悠長に温まるようなら、私も入ろうかな。


「あ、えっと、その、うん」

「・・・分かりやすいなぁ。そんなにこの格好がいいの?」


今の私はバスタオルを巻いているだけの格好だ。

胸が無いから、この格好ではとても微妙な気がする。尻も小さいしな、私。

にもかかわらず、こいつは私の姿を何度もちらちら見ては視線を外すのを繰り返している。


「こういう所入ったんだから、今更でしょ。堂々としなさいよ」

「あ、うん、その、お前はこういう所来た事、あるのか?」

「無いよ」


有るわけが無い。彼氏はこいつだけで、私は売りもやって無い。

正真正銘、初めてのラブホテルで、初めての行為をする。


「良いからとりあえずシャワー浴びて、少し冷静になってきな」

「あ、ああ、わかった」


未だ混乱してる臭い彼氏を風呂に押し込め、シャワーを浴びさせる。

その後布団をポンポン叩き、下手なホテルより良いんじゃないかなんて思いながら、布団に転がる。

あ、この布団寝心地良い。









「ん・・・あ、少し寝ちゃったか」


目を開けると、隣で携帯をいじっている彼氏が居た。服も来てる。


「あれ、服なんで着たの?」

「いや、俺そんなに持ち合わせないから、もう少ししたら出ないとさ」


彼氏の言葉に首を傾げていると、携帯の画面を見せられた。

そこにはデジタル表示で、既に8時間が経過した事が解る時間が表示されていた。


「あー・・・なんか、ごめん」


流石に謝っておこう。

あれだけがちがちに緊張して、シャワーを浴びに行って、戻ってきたら相手は寝てる上に全然起きないとか。

流石の私でもこれはちょっと謝るしかない。


「いや、いいよ、俺も先走り過ぎた気がするし」

「そう?あんたがそう言うなら別に良いけど」


私も出る支度にと、服を着替える。

あー、此処で着替えるとこいつに裸を見せる事になるのか。

まあいいか、別に。元々見せる予定だったし。


私は堂々と布団から出て、服を着替える。

うん、特に恥ずかしくはないや。まあこいつだしな。


料金は割り勘で払って外に出る。

払おうかとも言ったけど、拒否されたので、じゃあ半分と言った。

全面的に私が悪い、とまで言うつもりは無いが、多少の罪悪感は私にもある。


その日はそのままお開き。自宅に帰る事になった。

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