第62話 謳おう、伝染するほどの喜びを!
ーーあれから3年が経った。
つまり、『真実(しんじつ)ちゃん』もとい時任真実(ときとうしんじつ)という彼女ができ、そして同棲するようになってから3年という年月が経ったという事である。
この3年の間に色々あった。
まず、おれの出世作品である『剣士なおれとウィザードな彼女』がなんと5巻目でアニメ化した。
これには渡ツネオもショックを受け(ヤツの作品がアニメ化したのは10巻目からだったから)、数日間知恵熱を出したらしい。
いやらしいヤツだ。
しかし何だかんだと言って楽天的なヤツでもあるから、
「おめでとう亜流タイル!! やっとおれの足元まで来たな!!」
などとほざきつつ酒を奢ってくれた。
その時はもうおれだっていっぱしのラノベ作家だったからきちんと奢り返してやったが。
また、おれの作品のアニメ化イコール栄美の作品のアニメ化でもあるから、彼女の知名度もますます上っていったようである。
「祐樹にいのおかげだよー」
なんて言われたり。
おれが居なくたってアイツは出世できる才能を持ったヤツだと思うけども。
ちなみに渡はまだ栄美に懸想しているようだ。
関係性は全然進展していないけど。
そしてーー。
真実が。
あの、1行書くのにもひいひい言っていた真実が、なんと大学卒業と同時にラノベ作家として本を出す事が出来たのである。
タイトルは、『ぜんぜん売れないラノベ作家のおれがネット上でファンの娘と交流した件』だ。
このタイトルはおれが考えてあげた。
人間、自分の経験をモチーフにして1冊は本が書けるという。
だから、おれと真実の出会いをラノベ風に書いてみたらどうか、と提案してみたら、彼女はそれを一気に書き上げた。
それが、白鳥出版の鈴元さんの目に留まったのだった。
有難い事にそこそこ売れたようだ。
彼女は今、2作目を書いている。
所で今現在、アニメ『剣士なおれ』の第2期の準備中だ。
スタッフさんは第1期に引き続き同じ方々が作成してくださるようだ。
おれは、これを機に真実にプロポーズをしようと画策している。
彼女の事を愛しているのは勿論、いい加減おれの髪の毛を小さく可愛い巾着袋に入れて持ち歩くのはやめてほしいからだ。
そんな事しなくたって、おれの全部は君の物だという事を夫婦という形にして示してあげたい。
彼女は、喜んでくれるだろうか。
それにしても。
人は何故、時代を彩るような恋と、
それだけじゃきっと満たし切れず愛を囁く? 今宵ダンスと共に(引用)。
例えばどうしても好かんリア充を見た時。
「こんなヤツら不幸になってしまえ」
引きこもり時代のおれならそう願っただろう。
だが、今は違う。おれには真実という可愛い可愛い彼女がいるのである。
他人に対して「不幸になってしまえ」等という下劣な思考回路にはならないのである。
『両想い』というのはこれ程までのチカラがあるのだ。
人類全体が『両想い』になれれば戦争も起こるまい。
これこそが世のシンジツなんである。
戦争は金で動いていると言うが。
え、金儲け? 何それ美味いの? 『両想い』より美味しいの? って感じだ。
まあそれとも、戦争をしたがるヤツらはそういう性癖なのか。
皆にも是非ともそういったお相手を探し出してほしい。
諸君、幸せとは何だ?
悩み無く好きな人と一緒に居られる事だ!!
謳おう、伝染するほどの喜びを!
ぜんぜん売れないラノベ作家のおれがネット上でファンの娘と交流した件 いのうえ @773
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