ケモ耳娘お休みでした

 私がバイトを始めてから、既に2週間が経過していた。未だに商品が盗まれるという事は起きていない。

 その代わりに、何故か最近になって猫からの悪戯が増えてきた。詳しく説明すると、店の前に糞尿されるようになったのだ。後処理は魚屋さんがしてくれているが、流石に頭を抱えている。

 出来る限り威嚇して猫を追い払ってはいるのだが、何か他に効果的な事は無いのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳なんですよ」

 

「何か、大変なんだな……」

 

 俺が頭を撫でてやると、アズキは目を細めながら俺の胸に顔を埋めた。

 今日は久しぶりに2人とも仕事が休み。だから、今日はたくさんアズキに構ってやる事が出来るのだ。

 最近、此奴も頑張ってるからな。こんなのが褒美になるのかはわからないが、本人が喜んでいるんだから良しとしよう。

 頭を撫で、続いてクシで髪をとかす。アズキは何時髪を触ってもサラサラしているのだが、俺がして上げたいのだ。

 1通りとかし終え、くしを置くと、アズキが上目遣いをしていた。

 

「春斗さん、性行為しませんか?」

 

「……ん?」

 

 不意にアズキが妙な事を口走った。俺を見上げる表情は蕩けており、紅潮している。

 おい、俺は撫で回してただけだぞ……?耳とか擦ったりしてないぞ?

 

「お、おいアズキ!いきなりどうした!?」

 

 肩を掴み、揺するとアズキはハッとした表情になり、先程よりも顔が赤くなっていく。

 

「……すみません、今のは忘れてください」

 

 羞恥で泣きそうな顔を覆い隠し、恥ずかしそうに言うその姿が可愛すぎて惚れそうになったのは黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、どうするか……」

 

 俺は昼食を作りながら考え事をしていた。

 それは、アズキがバイト先で捕まえようとしている、泥棒の事だ。

 何でも、アズキ曰くその泥棒はアズキと同じ獣と人が混ざったようなヤツらしい。

 なんの獣か、どんな奴かは知らないが、流石に捕まえた後どうするかを考える必要がある。おそらく、警察に任せると獣人とか言ってマスコミやらが異常な生物として取り上げるだろう。最悪、解剖実験なども行われてしまうのではないだろうか?

 ……いや、これは漫画とかで良くありそうな展開並べてみただけだけど。

 

「アズキー!飯できたから運ぶの手伝ってくれ!」

 

 料理が出来たのでアズキに声を掛けるが返事はない。

 仕方ない、俺が運ぶか……

 

「うう、もうお嫁に行けません……」

 

「お前まだやってたのかよ!いざとなったら俺が貰っとくからさっさと配膳手伝え!!」

 

「春斗さん、今聞きましたからね?私鈍感難聴主人公じゃないですからね?」

 

 あれ?勢いに任せて言ったんだけど、満更でもない?

 

 

 

 

 

 

「ご馳走さまでした~♪」

 

 飯が食い終わるとアズキはさっきまでの羞恥を忘れたようにくつろぎ始めていた。

 俺は食器洗いだ。

 因みに、今日のおかずはオムレツだった。幸せそうに頬張るアズキは最高に可愛かったんだぞ?

 

「……なぁ、アズキ」

 

「はい?」

 

 食器洗いを終えた俺は、部屋に戻ってアズキに呼びかける。

 俺の表情から、真剣な話をすると悟ったのか、アズキは伸ばしていた足を曲げ、正座をした。

 俺も向かい合うように正座をする。

 

「……お前はどうしたい?」

 

「春斗さんと結婚ですかね」

 

「真面目な話って悟ってくれてなかったのかよ!?」

 

「わ、私は真剣ですよ!」

 

 や、止めろよ。そんな顔を赤く染めながら言われると、童貞の俺は勘違いしちゃうだろ!

 何とか真剣な表情を保ち、俺は脱線しかけた話を戻す。

 

「そうじゃなくて、泥棒の件だよ」

 

「あぁ……」

 

「捕まえて、アズキはどうしたい?」

 

「……私は、生まれついた時からこの耳と尻尾が付いてました。ですので、私は知っています。人々にとって私のような人と呼べない姿の者は恐怖や好奇心の対象でしかないことを。……恐らく、泥棒の方を警察に任せても、やはり、その……」

 

 珍しく、アズキが口籠もった。

 やはり、こいつは過去に何かがあったのだろう。

 正直、問い詰めたい。1人で全て背負い込まずに、せめて俺に打ち明けて少しでも楽になってもらいたい。

 だが、それをアズキが望んでいないのだ。無理に問い詰めるなんて事、出来るはずがない……

 

「ーーるとさん!春斗さん!」

 

 アズキに肩を揺すられ我に返る。

 ……つい、ボーッとしてしまっていたようだ。

 

「悪い」

 

「いえ、平気です」

 

 相変わらず、可愛らしい笑顔でそう答えてくれる。

 その表情を見ていると、過去の事なんて知らなくていいのではないかと思ってしまうから不思議だ。

 俺はアズキの頭に手を伸ばし、少し乱暴に撫でてやる。

 特に嫌がってないので暫く続けていると、何かを思い出したかのようにアズキは俺から少し距離を取り、姿勢を正した。

 

「は、春斗さんに撫でられていたら、本題を忘れてしまってました」

 

 アズキは、頬を赤く染めたまま咳払いをして、真剣な表情に戻す。

 

「私は、春斗さんに迷惑が掛かってしまうと思いますが、泥棒を捕まえ次第、本人に家族や住む場所が無いならば保護した方がいいと思います」

 

「よし分かった」

 

「即答ですか!?」

 

 何やらアズキが驚いていたが、今後の方針はそんな感じだ。

 捕まえ次第、本人の意思によっては家で保護する。

 別に今更ケモ耳が増えても殆ど変わらないしな。

 さてと、今後の方針も決まり、まだ休日は残ってる訳だ。

 たっぷり、アズキと遊んでやろうじゃないですか。

 

 ……この後めちゃくちゃ格ゲーした

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