第4話 村の少女
大きな森の近くにひっそりと存在する村。それが僕が今まで育ってきたルィヴィス村だ。この村には今、森で迷子になっていた記憶のない少女メイスィアを連れてきている。これからどうするか自分でも分かっていない少女を放っておくわけにはいかない。そう思って連れてきた、という事を説明するため、僕を住まわせてくれているユーリスおじさんの所へ行く。
僕はこの村以外は森へしか行ったことがないが、商人である村の人は別の村へ行くこともある。その人達の話によるとどこの村にも村長がいるそうだ。しかし、この村には村長がいない。その商人の人は言っていた。「もしこの村に村長を作るなら、その時は絶対ベンノットさんかなぁ」と。
ユーリスおじさんの家は村のほぼ中心にある。とはいえ、そんなに大きい村ではないので村の入口から5分ほど歩けば着いてしまう。
村の入口で会ったバライスおじさんと別れ、また2人で歩いていく。
いろんな人に声をかけられ、その度にメイスィアの事を聞かれるので、村に入ってから家に着くまで10分ほどかかってしまった。結局、メイスィアと話す機会は無かった。
「あの家が僕の住んでる、ユーリスおじさんの家だよ」
家の前まで来て、やっと話しかける事ができた。しかし、返ってきたのは、
「気になっていたのだけれど、ユーリスおじさんというのはあなたのおじいさんではないの?」
というものだった。
「……なんで?」
「だってあなた、さっきから『僕等の家』とか、『ユーリスおじさんの家』としか言ってなくて、1度も『僕の家』とは言ってないじゃない」
……鋭い。やはり、子供とは思えないほど勘が鋭い。確かにその辺はまだ話していなかったから、話をするべきか。
「……うん。確かにそうだね。どっちみち後で話すつもりではあったから、とりあえず家に入ろう」
そう言って家の扉を開けようとドアを引いたその時…
「────あ痛っ!」
ドアの方からこちらに来て、僕は額をぶつけてしまった。
「えっ?何?」
僕が額をぶつけ後ずさると、ドアが完全に開き、中から赤い髪を後ろで二つに結んだ少女が出てくる。
「って、なんだ、カルムじゃない。大丈夫?」
そう言って手を伸ばしてくるこの子は…
「うーん……。レンか…。割と痛い」
レンこと、レンフォード・ベンノット。ユーリスおじさんの孫娘であり、僕の幼馴染み、というか家族である。
「ご、ごめんね?というか、今日は帰ってくるのが早かったわね」
「まあ、いろいろあってさ」
手を借りて立ち上がっている時に、
「いろいろって…?」
この村に入ってから何回も聞いた言葉がまた言われる。
「…って!その女の子誰!?ままままさかっ、あたしにだけ見えてる幽霊!?」
…他の人とは違い、混乱と恐怖が混じった声で。
「いやいや!違うから!!僕にも見えてる人だから!」
とりあえず誤解を解こう。
「じゃ、じゃあ誰なの!?」
「その辺のことは説明するから!とりあえず家に入れてもらっていい?」
家に入って、ユーリスおじさんと話す時にレンにも話せばいい。
「わ、わかったわ。とっ、とりあえず家に……入ってね?」
メイスィアに向かって、なぜか怖々とそう言った。
「私、喋れるわよ?」
「ひぃぃぃっ!喋る幽霊!?」
「だから幽霊じゃないって!」
とりあえず、レンを家に押し込むような形で入れた。
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