第3話 育ってきた村

 森の大樹から村までは20分程度でとても遠い場所にある訳では無い。それでもまだ村の人からは早いうちに帰ってくるように言われる。別に夜になったからといってこの森に魔獣が出てくる訳ではない。

 そもそもこの場所に来れるのは午前中に僕を住まわせてくれている家の手伝いをし、昼食を摂った後の午後だ。大樹の前に立っていた少女、メイスィアとあったのも昼下がりである。

 などという今の状況をまとめていると村の前についていた。結局帰り道の間には何も話せなかった。メイスィアも何も言わず、ただ僕に手を引かれ歩いていただけだった。


「えっと……。着いたよ、ここが……」

 村の名前を言おうとしたときに、太い声が僕の言葉を遮った。

「おう、カルム!帰ってきたのか。今日は早いな!…っと、おい。その嬢ちゃんは誰だ?」

 村に来て早速、メイスィアのことが見つかってしまった。

「あっ…バライスおじさん」

 僕に話しかけてきたのはこの村で鍛冶屋をやっているバライスおじさんだった。

「なんだなんだ?お前がいつも行ってる場所ってのは女が自然に湧く所なのか?」

「違うよ!この子…メイスィアは、道に迷ってる所だったから一旦この村に来ようってことにしたんだ」

 そう言ってメイの方を見た。村に入った直後に変な人に会っても顔色を変えなかった。やはり怖い。笑うもなく、引くもなくの表情で僕を見ている。

 ……若干、困ってはいそうだ。

「とりあえず、このことをユーリスおじさんに話そうと思ってる。だから一回僕等の家までつれて行くんだ」

 ユーリスおじさんとは僕を家に住まわせてくれている人だ。元々王都の騎士をやっていて、一等騎士であったから苗字も賜っている。

 本名はユーリスクオーレ・ベンノット。僕は剣術をユーリスおじさんから教わっている。流派は自己流、ライズ流という剣術で、腰を落とした状態から繰り出される重い一撃から繋がるしなやかな連撃が強力、と、騎士団にいたころに仲間に言われたそうだ。今のところ、この流派を習っているのは僕と…。

「そういうことなら、早く連れて行ってやりな!寛大なあいつの事だ。追い返されはしねぇよ」

 分かっている。ユーリスおじさんは困っている人を見捨てたりしない。見捨てないで助け合ったからこそ出来たのがこの村というわけだ。

 この村……。そういえば!

「そういえば、この村の名前、さっき言いかけてたわよね?」

 自分で気づくと共に、メイスィアに同じことを言われた。

「そうだよね。まだ言ってなかった。この村の名前は、ルィヴィス村だよ」

 ルィヴィス村。その村こそ、僕が今まで育ってきた村だ。

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