第8話 西脇 肝試し

8月14日。

お盆。

俺と祇園は西脇市駅から少し離れた伏見稲荷のように鳥居が並んでいる名前の無い神社で御参りをして黄昏ていた。あぁ...夕方だから眺めがいい。この小説を読んでる皆さんは本来ならお盆になると田舎に帰ってお墓参りしたりしますよね?ただ俺達の世界ではそんなの関係ありませぬ。今日もミッションです...26個目の。やっと昨日折り返しに入りました。やっとですやっと。今回のミッションは少し怖い。「深夜0時にここに行け」という指示だ。地図で場所を見るとそこは高校だった。ここで頭のいい祇園は考えた。真夏+深夜の学校=肝試し...と。祇園は今目に見えてる絶景から元気の源を吸収している。怖いのが苦手中の苦手だから仕方ない。

...そして、23時58分。

お互い黙って校門の前に立つ。祇園はプルプル震えながら俺の腕を絞め殺すくらいの強さで握っている。

「大丈夫?」

「っ...だ、大丈夫やったらこんなんせぇへんわボケ!!!」

何故かよくわからないが久しぶりのツンデレを発動された。時間になったため校門を開けて校内に入る。相変わらず血と死体まみれだ。スマホには「2-1-お+ひ+2こ=どこ?(左から順番に)」と表示されている。謎解きか...苦手でもないけど得意でもないなぁ...。あぁ、長引きそう。にしても暗いし不気味だな...。プルプル震えている祇園。そして真ん中の渡り廊下から校舎に入る。真っ暗な廊下...職員室とかかな?するとスマホの画面が変わった。「校舎内には何体かの幽霊のような怪物が徘徊しています。お気を付けて」俺と祇園の目が殺意に満ちた目に変わる。何?幽霊のような怪物って何!?それもうお化けでええやないか!!それに目に見えないものって何!?

「はぁ...長くなりそうやな...」

「ほんまそ」

ガンッ...!!

「っ!?」

音がした。職員室の方...?

「行く?」

「て、手掛かり見つけなあかんやろ...」

お互いへばりつきながら職員室のドアをゆっくり開ける。うわぁ...ぐっちゃぐちゃじゃん...。資料とかペンとかが産卵している。相当悲惨な状況だったのが伺える。すると祇園があるものを手に取る。

「何それ?」

「見た感じ名簿やな」

それは全クラスの名簿だった。

「どこ?ってどっかの教室を指してると思ったんやけど...どうやろ」

「あぁ、なるほど...流石祇園」

「こう見えてIQ180はあるからなっ」

「じゃあこれ解いてよ」

「さっぱり分からん」

「えっ!?」

一応名簿を持って行くことにして職員室から出ようとドアを開けようとした時だった。祇園が何かを察知して後ろを向く。俺に物凄く密着してくる祇園。なんか最近距離近付いてきたような...?まぁそれはいいとして...祇園はガクガク震えている。

「何か...トコトコ聞こえん?」

「え?いや、何も聞こえんかった」

「それはお前の耳が悪いから」

ゴトッ!!

「ぬっ!?」

音がした。何かが落ちる音。

「祇園...1.2.3で下を見て逃げるで...ええな?」

「う、うん...い、1.2.3やな......?」

「うん...行くで...1...2...3っ!!!」

一緒に下を見る。

「ニャーー」

「うぎゃあああああああああああ!?」

俺と祇園はビビって後ろに跳ねて転ける。何だよ...猫かよ......。黒猫がトコトコ歩いていた。

「良かった...猫で...これでお化けやったら発狂もんやろ...ほら、しっしっ」

そう言いながらドアに手を添えた時だった。

「...祇園!!危ないっ!!」

「えっ...ちょっ!?」

急いで祇園を抱いて地面に伏せる。

「どなえした...えっ!?」

祇園は目を見開いている。何と猫の身体が割れて人の形をしたお化けに変身した。そしてそのお化けが祇園の頭を凪払おうとしたのだ。

「ぐぅうううああああ......」

「こ、こ、こここれは...お、お化け......?」

「...わ、分からん...おもちゃかもよ...?」

「ははっ...す、凄いなぁ!!!い、いいい今のおもちゃってほんま凄いなぁ!!!こ、ここここここここここんなリアルに再現されてるおもちゃ見た事あれへんわ!!ははっ!!ははは!!!」

「はははははは!!!!」

俺と祇園は気が狂ったのか下らないことで笑い始めた。しかしお化けはこっちに迫ってくる。

「ううう!!!」

「はは...ははは...はは...は......」

段々表情が硬くなってくる俺と祇園。

「ぐわぁ!!!」

「ひゃい!?」

お化けがまた手を払ってきた。祇園は寸前で避けて俺の方に飛び込む。

「お化けはお断りですぅ!!!!」

急いでドアを開けて廊下に出る。祇園は泣きながら走っている。後ろからはお化けが追いかけてくる。

「どこ逃げる!?」

「...あ!!ここ!!!」

祇園に腕をヨーヨーのように強く引っ張られて2階の女子トイレの個室トイレに急いで入って鍵を閉める。疲れた...何でこんなにも驚かなきゃダメなのか......どごぉんっ...!!!トイレの扉が勢い良く開いた。それと同時に俺と祇園の身体がビクッと震える。って待て。足見えたら終わりじゃねぇかよ!!!それに気付いて急いで足を浮かせる。俺は祇園に便座に座らされて祇園は俺の太ももの上に膝を乗せて足を浮かせて俺に寄る。外からはぶちゃぶちゃとお化けの歩く音がする。さっきのお化けだ。

カチャッ...。

1番手前の個室トイレの扉を開け始めた。またこのパターンかよ...。ここは5個あるうちの真ん中...ど、どうにかなる...よな?

「賢治...賢治...!!」

「何や」

「...い、痛くない?」

「ま、まぁ...って、顔近すぎやろ...」

「っ......し、仕方ないやんか!!怖いん...やから...」

めちゃめちゃ怖いからか俺にすんげぇ抱き着く祇園さん。これで安心できるものなのか良くわからないけど。

「おーいいねぇ今の顔可愛いよ〜」

「...後で覚えと」

ドンっ!!!

「っ!?」

とうとうお化けが俺と祇園の居るトイレのドアを叩き始めた。祇園は俺に抱き着いたまま目を閉じてブルブル震える。...あれ、そのまま素通りして次の扉を開けた。ほっ...良かった。よーしこのままお化けがどっかいったらこっちの勝ちだぁあああと思っていたその時だった。

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!!!!!!

「ひっ!?」

お化けが突然太鼓の達人のように何度も何度もドアを叩く。祇園は怖がって...いない!?

「...あーもう!!!うるさいんじゃボケぇ!!!」

突然祇園が俺から離れて扉を蹴り破った。ドアと同時に倒れるお化け。祇園は番長みたいに右脚を踏み付ける。お化けは扉を押し上げようとしている。

「...ええ加減にせぇよ...人驚かすんも大概にせんかいや......ようできたおもちゃさんよぉ!!!」

ドドドドドドドドドドッ......!!!!!

やばいくらい勝ちを誇ったカッコよ過ぎる顔で背中に装備してた鉄砲で10発くらいお化けに連射した。扉の下から真っ赤な血が流れている。お化けは動かなくなった。

「お、おお...よう出来たおもちゃやったなぁ...」

「ま、私の方が優秀やったようやけどな」

そしてゆっくりとトイレから出る。引き続き探索を続けるが急に廊下のガラスが割れたり校長室から大量のペンが飛んできたり祇園にだけスプリンクラーが全身にぶち当たって制服びしゃんこになって「何見とんじゃぼけぇ!!」って0.5秒くらいしか見てないのに祇園さんにビンタくらったり多数の怪奇現象に襲われて祇園はカンカンに怒っている。そして少し休憩してからもう一つの校舎に移った。「情報・繊維科 職員室」という所に入った。情報かぁ...パソコンとかな?繊維って裁縫...両方まぁまぁ出来る...って訳でもないか...と色々思っていると祇園が机の上にあったプリントを手に取る。そこには「2進指数え法 やり方」と書かれたプリントがあった。...2-お+ひ+2こ......左から......1.2.32......。

「...あ!!分かった!!!」

「えっ、IQ180は嘘じゃ無かったん!?」

「お前なぁ」

祇園が俺に分かりやすく説明する。

「この「2-1」って2年1組に見えへん?」

「あー確かに。でもこれは?」

これとは「お+ひ+2こ」の事だ。すると祇園が不敵な笑みを浮かべる。

「ふふふぅ...こっからさ、2を取ったら「お、ひ、こ」になるやろ?これは何かわかる?」

「お、ひ、こ...おひこ......」

ふと手を見る。

「指?」

「流石「親指、人差し指、小指」の略やねん。これが何に関係するか言うたらこの「2進指数え法」やねん」

「何2進指数え法って」

「はぁ!?」

「えっ」

祇園が唐突に怒り出した。何?またツンデレ?いやここでツンデレ発動はおかしいと思うぞ祇園よ。

「ググれやそれくらい」

「いや通信使えないんですけど?」

「あ...そうやった...」

「おバカ」

「っ...う、うるさい!!!人間やねんからミスることだってあるわボケ!!!」

「あーごめんごめん」

安定のツンデレを発動して頂いたがスグに気を取り直して説明する祇園。

「普通に両手使ったらいくらまで数えれると思う?」

「10」

「せやろ?順番に数えたら指10本やから10まで数えれる......しかし、この2進指数え法を使えば何と両手で1023まで数える事が出来るんですよ!!!!!」

「ほう...?」

「えっ、も、もうちょい驚いてや...」

祇園が紙に数字を書き始めた。「1、2、4、8、16」と書いている。

「右手の親指から1、2、4、8、16って続くんよ。これ見てもらったら分かるけど2が0、1、2、3、4って累乗されてんねん」

「なるほど」

「つまりこのお+ひ+2小って言うのは右手の親指、人差し指で、二つ目の小指って事やから左手の小指って事。はい、いくらやと思う?」

俺も手で指を上げて見る。えっと...1、2、4、8って累乗されてるから小指は2の5乗だから...。

「35か」

「正解!!つまりこの35ってのは流れ的に出席番号を意味してんねん。全部合わせたら2年1組の35番って事!!よし、行くで!!」

「はーいよ」

と言うことでゆっくりと3階にある2年生の1組の教室に入ってさっき手に入れた名簿を見ながら35番の席を探す。なんかホラーゲームみたいだなぁー...あ、ここか。俺と祇園は35番の席の前に立った。机の中に紙がある。

「なになに...「隣の更衣室にある真っ白な箱を開けろ」って...?」

更衣室に入ると女の子達が体操服に着替えて...いる訳でもなく真ん中に本当に真っ白中の真っ白の箱があった。

「...ええな?」

「俺はおっけー」

お互い手を重ねて蓋をつかむ。

「いっせーのーせっ!!」

パカっと箱を開ける。...あれ、特に何も起きない。ちらっと中を見る。すると何かが書かれた紙とペンがあった。

「問題です。さっき貴方達が居た2-1の生徒数はいくらでしょうか?」

と書かれた問題がある。

「生徒数...?」

「こんなん名簿見たら簡単やん」

「ほんまや」

祇園が名簿を見ながら女の子らしい字「36」と答えを書く。すると答えを書いた瞬間紙に何もしてないのに赤丸が出た。そして次の問題が勝手に書かれた。何もしてないのに。俺と祇園は驚き過ぎて無口になる。こんな紙に金かけなくても良いだろと言いたい所だ。

「なになに?じゃあ、今校内には何人人がいるでしょう...?」

「そんなん...2人やろっ...!!」

祇園が女の子っぽい字で2人と書く。ブブーーー!!!

「は...?」

間違えた時の音が響いた。俺と祇園はやばい事をして怖い先生に怒られる中学生の顔をする。

「...な、何が起きたん?」

「......間違えたん...よな?」

「...えっ、コレ見て」

「なんじゃこりゃ」

紙を見ると「お化け増員 全て倒せ」と出てる。俺と祇園は真顔中の真顔になる。はぁ...またおもちゃと遊ぶのかよ...はぁ。

「うぇっ...!?」

「どしたん?そんなおっさんみたいな」

「あれ...何...あれ......?」

「んー...ん!?」

祇園が後ろを指差してちらっと見る。そこには真っ白の中の真っ白に血が垂れている生首が更衣室の横を遅れまくって前が詰まりまくってる新快速のようにゆーっくり通過した。

「...怖い?」

「......さぁ?」

「強がり方が下手くそになってきてる気がするのは気のせい?」

「...ふっ、バレた?」

「結局怖いんかいっ」

祇園の怯える顔に癒されながら更衣室からゆっくりと出る。左右を見て何も居ないことを確認して静かに移動する。そして階段を降りていた途中だった。

「キャーっ!!!」

「えっ!?」

下から女の子の悲鳴が聞こえた。校内にまだ生きてる人が...!?

「行こ!!」

「うん!!」

急いで階段を降りて声のした方に行く。2階に着いて声のした教室に入る。...ありゃ?誰も居ない...いや、お化けが居......る。

「おいおい...」

「わぁお...」

大量のお化けが俺と祇園の事を出迎えてくれた。生首、首の無い死体、目が抉れている死体、服だけのお化けが何十体も居る。俺と祇園はため息をつきながら背中と背中を合わせる。すると祇園が俺に何かを渡した。

「...遺書?」

「こんな重い遺書書けるほど人生充実してへんわ」

渡してきたのは短目の日本刀だった。うわぁ...めっちゃ切れそうな刀だなぁ。すると祇園が刀を抜いた。

「...賢治、二刀流の見本見したろか?」

「えっ、いいの?」

「後でコーラ奢ってな?」

「強引なやつやなぁお前」

祇園が刀を2本抜いて左手を後ろ、右手を胸の横にして構える。おぉ...な、何かかっこいい。そして高くジャンプして刀を振り下ろす。そしてドンドン前に突っ込んで行く。回転したりバク転したりと鮮やかに決めて行く。かっこいい。制服だから余計にかっこいいんだよな〜って見とれているとお化けを全て倒していた。

「...どない?」

全身血塗れの祇園がドヤ顔でこっちを見る。

「あっぱれです」

「せやろ?初めてやから緊張したわ」

「え、初なん!?」

「うん。どんだけ行けるかな〜って思って」

「俺にもやらせろや...」

スマホを見ると「体育館倉庫のどこかにある赤い鍵を探しながら残り一体のお化けを倒せ」と出てる。

「この残り一体ってまさか透明人間...?」

「ですな」

「透明人間かぁ...まぁ、どなえかしてや?」

「何?さっきの二刀流のお礼としてって事?」

「お、IQ高くなったな。コーラと一緒によろしく」

「はーいよ」

祇園からのお褒めの言葉を頂きながら体育館の裏にある倉庫に行って鍵を探すがどこにも見当たらない。

「...あったぁああ!!!」

「嘘ん!?」

流石祇園。机の下に手を伸ばして鍵を取って身体を起こした...時だった。

「...よーし、取れたとれうわっ!?」

ドンっ!!!

急に祇園が身体を倒した。それと同時に机が大きく凹んだ。よく見ると鉄の棒が打ち込まれてる。いや待て待て、誰がやったの!?俺なんもしてないよ!?まさか...透明人間...うわっ!?透明人間に押されて床に倒れる。するとさっきの鉄の棒が勝手に動いた。

「させるかいやボケぇ!!!」

俺に打ち付け用とした鉄の棒を祇園が食い止める。すると祇園が何故か入り口の方をじーっと見ている。すると透明人間を入り口の手前に蹴り飛ばした。

「ど、どしたん?」

「...何か......来る」

祇園がそう言った瞬間だった。

バゴぉぉおおおんっ...!!!!

...え?突然扉が倒れた。

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