第6話 小野 黒妖怪

次の日の夜。

俺と祇園は神鉄に乗って揺られている。祇園は眠いからか俺の肩に持たれてくる。...祇園の脇腹に指をツンっとするとビクンっと跳ね起きる。

「な、何してんの?」

「どういう反応するのかを見てみたかった」

「や、やめてよ...」

「結構可愛かった」

「うっ...うっさい!!」

そして23時48分。最後の電車が小野駅に到着する。にしても...不気味な駅だなぁ...。周りは真っ暗、車窓からして田舎って言うのは分かってたけど周辺に家があるから明るいのかな〜......って思ったけど暗い。駅を出てスマホを見ると「商店街を歩け」と言う指示が出ている。誰も居ない、まぁこの時間だし状況が状況だからって言うのもあると思うが。自販機で買ったコーヒーを飲みながら商店街の中を2人で歩いて行く。

「なぁ、あれ人倒れてへん?」

「ほんまや」

少し前の方に人が倒れている。俺と祇園は急いでその人の元へと走る。...人じゃない、マネキンだった。にしてもめちゃリアル...ん?スマホを見るとまた文字が表示された。

「そいつの首をぶった斬れ」

...え、い、いいの?そんな不謹慎な事はしたくないんだけど。祇園はこくんと頷く。仕方ない...やるか。刀を大きく構えてそのマネキンの首目掛けて振るとサクッと斬れた。そのマネキンの首は少し飛んで道端に転がる。

「そいつの首をここにある賽銭箱の上に置け」

場所を見ると少し離れた神社のような所だった。スマホの地図通りに歩く。俺と祇園は手を繋ぎながら歩いている。別に恋人って意味じゃなくて普通にもしも何かあった時に一緒に逃げれるようにって意味だ。...どんどん暗くなり始めてきた。すると祇園が俺の手をギュッと握り始めた。祇園の顔はなんか恐そうな顔をしている。俺の方に寄ってきながらゆっくり、ゆっくりと歩く。......ガサッ。

「ひぃっ...!?」

祇園が俺にしがみつく。ただの野良猫だった。って、ちょ...そ、その...胸が当たってるって.....って言ったら「何で私にそんなことさせんねん!!」って究極理不尽な事言われそうだよね。

「大丈夫?」

「...ごめん」

「もう少しで着くから、頑張って」

そして37分後(正確です)。やっと神社に着いた。祇園はまだ俺の手と腕を握っている。そして賽銭箱の上に首を置く。.........何も起きない。10分、20分経っても何も起きない。なんか間違ってる?マネキンを手に取ってもう1度置......

「待って!!!」

「えっ!?」

祇園が急に止めた。

「なぁ...これ見て...」

祇園が俺のスマホの画面を見せる。

「ん?どれどれ...そいつの首をここにある賽銭箱の上に置いて30分待て。ただし2回置くと大変な事が起きる.........」

俺の首を持っている手を見ると既に賽銭箱の上に首を置いてしまった。

「...こんな文章無かったよな......?」

「......おう...俺視力AAだから読み間違いは無いはず.........」

首から手を離して社から少しづつ離れる俺と祇園。

「だ...だ、だ、大丈夫だって...こんなの...嘘やから...なぁ」

「そ、そうやんね...き、きっとバグ!!そう!!バグや!!このスマホインフルエンザにかかってんって!!」

「そ、そうそう!!熱68℃あるから頭おかしなってんねん!!!ははっはははは!!!」

「ははははは!!!」

ブチュっ...!!!

「ははは...はは..........へ?」

.....お互い顔が青ざめる。その首の頭が割れ始めたからだ。インフルエンザ並みにバグって熱が68℃出てるのは...こっちの方だ。まずい、まずいって。スマホを見ると「妖怪を殺せ」と出ている。え、よ、妖怪!?その首の頭と賽銭箱からどんどん黒い液体が流れ始めて液体はグチョグチョ言いながらどんどん大きくなって行く。な、何だよ...これが妖怪なの?目の前には四つん這いで口がやばいくらい大きくて目が3個付いて俺と祇園の3倍の高さのクソでかい真っ黒な怪物に変化した。.....なんやこれ...ほんもんの妖怪やん。

「はぁああっ!!」

祇園がその妖怪の腕に斬り掛かる。ブチャっ...と音がして斬れた......と思っていた。グチチチチっ...!!いっ...!?聞いたことのない変な音がした。...復活した...!?予想外だった。斬った腕が復活したのだ。どこを斬っても斬っても復活する。...まじかよ。

「.....なぁ、賢治」

「...?」

「さ、さ、さささっきまで...ただの首やったよな...?そ、それがな、ななな何でこんな馬鹿でかいのに変わったん......?」

「祇園...そんな事を知るより...逃げ場所を知った方が良さそうやで...」

「グォオオオオオオ!!!!」

馬鹿でかい妖怪が吠える。臭い、人の死体の匂いがする。

「...その方がよさそうやな」

「グゥウウウウ!!!!」

「......逃げろぉおおおぉおおお!!!!」

俺と祇園は手を繋ぎながら全力で逃げる。それと同時にその妖怪が俺と祇園を追う。

「どこに逃げるん!?」

「分からへん!!!俺はとにかく商店街の方に逃げた方がええと思う!!!」

「了解ぃ!!!」

逃げる、とにかく逃げる。車、ゴミ箱、電柱、自販機、を潰しながら妖怪は追い掛けてくる。この妖怪速すぎだろ...ていうかやばい、追い付かれる!!!

「祇園!!分かれるぞ!!!」

「え!?どういう事!?」

「横に飛べ...うわっ!?」

「きゃっ!!!」

妖怪が突然俺と祇園に殴りかかって来た。寸前で左右別々に飛んで避ける。妖怪は走っていたため少し前の方で止まった。その間に祇園を抱いて側道へと逃げる。妖怪はまだ追い掛けてくる。その側道を逃げていくと目の前に壁が見えた。よし、曲がろうとしたが壁だった。......行き止まりだ。妖怪は容赦なく迫って来る。上を見ると家の屋根があった。

「祇園、ちゃんと掴まって」

「え?何すんの?」

俺は腰からワイヤーガンを取りだして上にあげる。

「行くぞ...」

「え!?ちょ」

上に向けて発砲する。ワイヤーが勢い良く伸びていく。そして屋根に引っ掛かった。

「よっ...!!!」

「う、うわぁああ!!!」

トリガーを引くとびゅーんとワイヤーが巻かれて俺と祇園が引き上げられる。妖怪は俺と祇園を見上げて突っ立っている。俺と祇園は勢い良すぎて一回転して屋根に到着した。妖怪はどこかに走り去っていった。

「助かった...」

「鍛えてて良かった...」

一安心してどうやってあの妖怪を殺せばいいかを考える。

「斬っても復活する......」

「なぁ、また付け加えられとる」

祇園が俺にスマホを見せる。

「妖怪を殺せ。ただし、かなり強い衝撃を与えないと殺せません」

...何で今日は俺達に不親切なのか。いや、最近こんな感じだ。俺と祇園に「察せ」と言っているのと同じだ。何?どうにかなるとでも思ってる?んなわけぇだろ馬鹿野郎!!!まぁまぁ冷静になれよ俺。強い衝撃...あの馬鹿でかいのに強い衝撃を与える...相当強くないとダメってことだよな?すると祇園が何か閃いた顔をする。

「電車は...どうかな?」

「電車...電車!?え、さっき乗った神鉄であの妖怪轢き殺すの!?」

「うん。だってそれ以外無くない?」

「...まぁ......でも...」

確かに...それもそうか.....電車が妥当か。...って待て待て待て待て。

「電車の運転の仕方知ってんの?」

「ちょっとだけ」

「知ってんのかい...」

「んじゃ知らんって事に」

「任せた」

だとしたら線路にどうやってアイツを線路に置くかだよな...。そこに止まらせる...でもどうやって止まらせるかだ。足とかは斬っても復活するから...あ、目を潰す...ん?待てよ?さっきアイツが吠えた時人の死体の匂いがしたよな...つまり人の素質があるって事だよな?人の目を潰すのは簡単だけどアイツの目は潰せそうにないよな...じゃあ閉じさせたらいいんだ。人は目を閉じる時って洗剤とかが目に入ると痛くなって閉じる...つまりアイツの目にも洗剤をかけたらいいって事か。でもバケツでかけるのは無理...ん?屋根から商店街を見下ろすと駄菓子屋がある。駄菓子屋.......あ!!そうだ!!

「祇園、下りるで」

「え?なんか思い付いたん?」

「うん。一か八かでやってみる」

屋根から飛び降りてその駄菓子屋に入る。

...あった。目の前にはでっかい水鉄砲がある。後は洗剤......ん?祇園が俺に緑のボトルを差し出す。

「こういう事やろ?」

そのボトルを見るとサビ取りとかで有名なサンポールだった。手でグッドをすると祇園も返してきた。俺と祇園の水鉄砲のタンクに水とサンポールを混ぜて補填する。よし、準備OKだ。商店街に出ると妖怪はかなり前の方に居た。祇園が指笛を吹くと妖怪がこっちに気付いて振り向く。

「グォオオオオオオ!!!!」

こっちに向かって走って来た。よし...俺と祇園は一緒に線路の方に走っていく。そして踏切から線路に入る。するとすぐに妖怪が線路に入って来た。

「行くぞ!!!」

「はいよぉ!!!」

水鉄砲を構えて目に向かって発射する!!予想通りに目を閉じてその場に蹲り始めた。

「賢治!!後は任せた!!」

「おん!!急げ!!」

水をかけたのを確認して私は急いで駅の方に走る。駅にはさっき乗った電車が止まっている。操縦席のドアを開けて席に座る。えっと...これをを前にしてスイッチを...あれ?スイッチはどこ?普通見えやすい所にスイッチがあるはずなのだが見当たらない。やばいやばい早くしないと妖怪が...あぁっ!!もう......何で見つからないのよ!!!!!!!イラついた私は自分でも驚くくらいの強さで殴った。すると何かが起動する音がした。...え、あ、あれ?その殴った先を見ると「制御電源」と書かれたスイッチがあった。...よ、良し!!OK!!ブレーキを下げてマスコンを下げると電車が動き始めた。フル加速で電車は妖怪の居る方へと動く。

一方賢治は。

早く...早く来いよ...!!タンクの水が無くなるくらい目にかけまくった。後は電車でぶつけるだけ.....え。気が付けば少し後ろに電車が来ていた。え、ちょ、妖怪はいいけど俺も死ぬよ!?

祇園は。

あ、ライトつけ忘れてた...って!?賢治!?ちょ、え!?少し前に賢治が突っ立っていた。このままだったら肉片まみれに...あっ!!そうだ!!

一方賢治は。

く、くそう...もうガラス割ってでも飛び込むしか無ェ...!!!すると電車の真ん中のガラスが開いた。中には祇園が居る。こっちに手を振っていつでも来い!!みたいな感じで待っている。電車にダイブか......怖いけど...おりゃああっ!!俺は死ぬ気でジャンプしてそこに飛び込む。

「うあっ!!」

「ぐっ!!」

祇園に抱き着いた瞬間壁に全身をぶつけて痛みが走る。ブチャアっ...!!!!黒い液体が全身にかかった。電車が妖怪にぶつかったのだ。そのまま電車は進んで行く。

「大丈夫...?」

「うん...賢治は?」

「...大丈夫」

黒い液体はすぐに消えた。スマホを見ると「ミッション成功!」と出ている。良かった...。


...プシュー......。

電車は終点、粟生に着いた。時刻は3時。駅の自販機で買ったジュースを粟生駅の屋根で一緒に飲む。

「今日は祇園に助けられたわ」

「ふふっ、前のお礼よ」

空を見上げると星が綺麗だ。

「あれ蛇や」

「あれが蠍か」

やっぱり星がきれかったら星座を言い合うよね〜え?しない?ごめんなさい。

「んであれがヘラクレス...」

「ヘルクレスやで?」

「え!?嘘やろ!?私ずっとヘラクレス言うとった」

「よっしゃ俺の方が頭良いの確定」

「はぁ!?んなら私の名前漢字で書けるか?」

「もちろん......はい!」

「正解...って何スマホで打っとんねん!!」

気が付けばこんな感じでわちゃわちゃしていた。こうやって笑い合える日がずっと続ければいいな...。そう願う夜だった。

一方...Zeroでは。

「...いい感じに進んでるな...フフフ...」

不敵に笑うE25。

「ですがE25様、本当にこのゲームは終わる事が出来るのですか?」

「...もちろんさ。死んでも生き返させればいいのさ。Zeroの長年の技術でなぁ......」



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