第5話 umie 鬼ごっこ
「ハーバーランド、ハーバーランドです...」
神戸市営地下鉄海岸線から降りて地上に上がる俺と祇園。静かだな...。
「ここが...umie...」
「うん...」
俺はよくここに来て服とか買ったり食べに行ったりしていた。毎回俺が行く時は人がわんさか居る。
「ええなぁ...めっちゃ楽しそうやん」
「今は死体の楽園やけどな」
しかし今は何も音がしない、本当に静かだ。人の代わりに死体や血が散らばっている。中に入った瞬間スマホの画面に文字が表示された。
「ボールのジェットコースターの前に行け」
ボールのジェットコースター...あぁ!umieにはビリヤードの球を使ったボールのジェットコースターみたいなものがある。大人でも子供でもずっと見てられる。そこに行くとスマホに文字が表示される。
「ボタンを押せ」
ボタン.....?そんなんあったっけ...うわ、ホンマにあるやないかい...。親切に荷物置きもある。そこに荷物を置いてボタンに手を添える。
「...押すで?」
「えっ...」
「えぇっ...あかん?」
祇園が怖そうな顔をして俺を見る。それを見たら俺も怖くなってボタンを押そうか迷って来た。確かに怖いよな...って、もうミッション始まってんだから仕方ないじゃないか...。
「い、行くよ?」
「...ば、爆発したらどなえすんの...?」
「えっ!?そ、それは...」
「じ、10数えてから私が押す!!」
そう言って祇園がボタンに手を添えながら10数える。
10...9...8...7...6...5......4.......3.........2....................................。
祇園の押す手が震えている。
「...ハクシュン!!!」
「うわっ!?」
ポチっ。
「あ」
俺のくしゃみで祇園が驚いてボタンを押してしまった。祇園は顔を硬直させながらブルブル震えながら俺の服の裾を掴む。するとアナウンス響く。
「只今から、鬼ごっこを始めます」
そのアナウンスと同時に鍵が閉まる音が聞こえた。
「ルールは簡単、あなた方プレイヤー2人が10人の鬼から逃げながら鬼を殺せばクリアです。但し、途中でumieから出た場合、処刑の対象になります。では、今から1分間数えます。プレイヤーは逃げて下さい」
そう言ってアナウンスが終わる。
「...ど、どういう事?」
「とりあえず...とりあえずどっか逃げよ!」
そう言って祇園が俺の腕を掴んでグイグイ引っ張る。非常階段、店の裏へと続く扉も鍵が閉まっていた。そして隠れたのは大垣書店のカフェカウンターの裏に隠れた。
「それでは、スタートします」
隠れたと同時にアナウンスが響く。鬼が俺と祇園を探してるってことか...。
「...なぁ」
「ん?」
「何でここにしたん?」
「特に理由は無い」
「血迷ったんやな?」
「...お察しが宜しいですな」
まぁ...どこに隠れようが鬼10人いる時点で同じか...。
ガンッ...!
「ひっ...!?」
俺と祇園の真後ろで重い音がした。音は定間隔で続いている。歩いてる...?下のカウンターの隙間から覗くとでっかいハンマーのようなものを持ってゴリラのような身体で人の2倍くらい大きい鬼が居た。そのままどこかに行った。ありゃ死ぬぞ......。
「いつ行く?」
「今から」
「流石ノリの良さは満点」
カウンターから出てゆっくりと静かに歩く。
「...まって」
「ん?」
祇園が急に止まる。すると急に祇園が俺の腕を掴んで歩く。そして向かった先は下のスーパースポーツゼビオだ。「ここにおるん?」と聞くと頷く祇園。刀を構えろと合図を出す。構えて一緒に中に入る。
「ギィイイゥウ...」
居た。いつもの怪物と少し大きい鬼だ。さっき見たクソでかい鬼とは違う。
「行くわ」
「はいよ」
祇園が素早く鬼の後ろに回って腹をブチ切って倒す。スマホを見ると「鬼1/10 あと9体」と表示された。1体退治したってことか。
「私耳めっちゃええねん」
「女ってみんな耳ええよなぁ...」
「...何か来る!!」
「えっ...ちょっ!?」
祇園が俺の腕を掴んで一番端の試着室に逃げる。物凄く重い音が聞こえる。ちらっと隙間から外を見るとあのクソでかい鬼だった。すると試着室の反対側の端の前に立つ。
ドゴォンっ...!!!!
「!?」
横からすんごい衝撃音がした。するとまた音が鳴る。どんどん音が近づいて来る。まさか...試着室を破壊してる...!?やべぇよ...やべぇよ...。祇園の足はガクガク震えて俺の腕をしっかり握ってる。こいつ...痛いんだけど...。そして横の試着室に鬼が立った。
「行こ!!」
「おう!!」
そう祇園が言って横の試着室を破壊した音がした瞬間に勢い良く試着室室から飛び出す。
怪物はゆっくりと俺と祇園の方を見る。
「...危ない!!!」
「え!?うわっ!?」
俺は祇園を抱いて地面に這いつくばった。なぜなら真上を鬼の持っていたハンマーが飛んできたからだ。
「怪我は無いですかお姉さん」
「あ...ありませんよお兄さん」
ハンマーは勢い良くエスカレーターを破壊していた。俺と祇園が当たってたら2Rホームランだった。鬼はゆっくりと歩いてハンマーを取りにこっちに来る。俺と祇園は急いで遠くへと走る。
「なぁ賢治」
「ん?」
「トイレ行っていい...?」
「えっ...い、今!?」
こくりと頷く祇園。と言うことで小学中学の放課後の掃除の時にしか入ったことの無い女子トイレに入る。な、何か緊張する...先生に怒られないかな...。そして個室のトイレに入って「覗かんとってよ!?」と俺に警告して鍵を閉める。そんなに疑わんでもええやないかい...。
「まだ?」
「も、もうちょい待てやこのせっかち!!」
「関西人はせっかちですけど何か?」
どんっ...!!!
...え、やべ。なんと怪物が4体トイレに入ってきた。
「祇園、もうちょっとトイレタイム延長しといて」
「え?何で?」
「ちょっと来客がね...」
「グアアアア!!!」
怪物が4体ともゆっくりと歩いてくる。何祇園のトイレを覗こうとしてんだよ!!!それは俺が許さんぞぉおおお!!!!
シュイシャインっ...!!!
怪物を斬って斬って斬りまくってぶっ倒す。...祇園のトイレを覗いていいのはこの俺だ...。それと同時に水の流れる音がしてガチャっと扉が開く。
「ご苦労さん」
「はいよ」
トイレから出て残りの鬼を倒して行く。そして残り1体。あのクソでっかい鬼を探す。服屋、おもちゃ屋等、かれこれ20分探し廻っているが見つからない。そして仕方なく1階の広場に行く。
「どっかに隠れて私らの事監視してるんかな」
「さぁ...あんなでっかいのすぐ見つかるはずなんやけどな」
柱にもたれてリラックスする俺と祇園。すると祇園がキョロキョロし始めた。
「......何か...音せんかった?」
「いや...何も」
ドスンっ......!!!!
...え?な、何だ?俺と祇園のかなり後ろの方で何か重いものが落ちた音がした。恐る恐る後ろを見るとクソでかい鬼が立っていた。俺と祇園の顔は「あ...やべ、宿題持ってくるの忘れた...」みたいな顔をする。
「...で...出た」
「来ちゃったな...」
「グォオオオオオ!!!!」
甲高い声で吠える鬼。
「改めて見るとでかいな...」
「もう行くしかあれへんでぇええ!!!」
2人で鬼に走って刀を腹にぶっ刺す。しかし鬼は全く怯む様子がない。
「嘘やろ...!?って、うわっ!?」
「賢治!?」
急に鬼が俺の腕を掴んだ。そのままおおきく振りかぶって屋台に俺を投げた。俺はそのまま木の屋台にぶつかって壁に打ち付けられた。
「っ...はぁあああッ!!!」
その間に祇園が何度も何度も鬼に斬り掛かる。しかし鬼の様子は変わらない。
「グォオオオッ!!!」
鬼が祇園をハンマーで凪払おうとするが素早く祇園がバク転する。...急所は...胴じゃない...だとしたら...頭?でもでかいから頭に刺すとしたら...あっ!!
「...祇園!そいつを橋の方に誘導して!!」
「え?な、何で?」
「ええこと思い付いた!!!」
「...了解!!」
そう言って祇園が鬼を橋の方に誘導する。
俺はその間に2階に行ってその橋の上に立つ。そして柵を登る真下には鬼と祇園が戦ってる。...よし、行くぞぉおおおお!!!!!
高所恐怖症の俺がブルブル震えながら柵からジャンプしてその鬼の頭目掛けて刀を突き刺す。
グサッ...!!!
「グワォオオオオオオオオオオっ!!!!」
大量の血を流しながら鬼が頭を抱えて暴れ始めた。すぐに刀を抜いて飛び降りると鬼はその場で倒れて爆発した。何とか俺の作戦は成功した。そしてスマホが震える。見ると「ミッション成功!」と表示された。するとその下に報酬と書いてあったものがあった。わ、ワイヤーガン?何それ。
「これや」
「ん...?」
そのワイヤーガンと言うのは爆発した怪物の前にあった。これって...何かゲームでみたことのある鉄砲の形をして撃つとワイヤーが飛び出して高い所や離れた所に移動できるめちゃめちゃ便利なやつじゃないか。ゲームの中だけだと思ってたけど実在したんだなこれ...。
「 ...ほう、そうか...計画はいい感じに進んでいるんだな...」
とある場所、ここはZeroのアジトがある。...ここまで来たらもう後戻りは出来ないなぁ...ま、いいけど。俺はアイツと一緒になれたらそれでいいんだから......フフフ...フハハハ......。
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