第13話ナンバーズ

「いけ、22、23」


 コルセイが号令をかけ、鉄塊が走り出す。


「ジュディ! 一人一殺!」

「はいはい」


 アルマの気合いに適当な返事で返すジュディ。


「魔導生命かしら?鉄人形アイアンゴーレム程度じゃたかが知れてるわね」


 そう言ってジュディが腰から小振りの鉄球のついた柄を手にする。


「さて、早速で悪いけど沈んでね?」


 柄の先から鉄球が飛び出す、鎖に繋がれたソレは真っ直ぐに22と呼ばれた鉄塊の頭部へとぶつかり、小規模な爆発をした。


「相変わらず謎の武器だよな、それ‥‥‥っハァッ!」


 横目でジュディを見ていたアルマの両腕に青い炎が灯る。


「溶けちまいな! デカブツ!」


 アルマが23と呼ばれた鉄塊へと走り出す。


「呆気ないわね、避けも出来ないなん‥‥‥えっ?」


 爆発を起こした頭部から煙がはけ、中からは全くの無傷の頭部が出てきた。


「アイアンゴーレムがあの威力で無傷って‥‥‥」


 22がジュディに向けて歩き出す。


「アイアンゴーレムじゃ、無い‥‥‥? っ、アルマっ!」


 ジュディがアルマに向け叫んだ時、既にアルマは23に殴りかかる瞬間であった。


「おらぁっ!喰らいなっ!」


 アルマの乱打が23の全身に何十発と当たり、当たった箇所には青白い火が数秒間纏まとわわりついた。


「はっ! 1000度を越えるほのおの味はどうだい! そのまま溶けちまいな!」


アルマが炎に巻かれて屈んでいる23を見ながら吠える。


「‥‥」


 微動びどうだにしない23を見詰めるアルマに、ジュディの叫びが聞こえた。


「アルマ!ソイツから離れなさい!」


 ジュディの声を聞き、何を言ってるんだと思いながら目を向ける。


「‥‥‥え?ジュディが頭を爆発させたのに何でアイツ‥‥‥っ!」

 そこまで喋ったアルマは、自分の前方から感じる違和感に振り向いた。


「code《コード 》Sequence《シークエンス 》‥‥‥01ヨリ02ヘ移行、再起動マデ3‥‥‥2‥‥‥1‥‥‥起動シマス」


 瞬間、23の目の位置にあるバイザーの中心にある単眼モノアイに、光が収束を始めた。


 アルマの背筋せすじに悪寒が走る。


「くっ! おおおっ!」


 強制的に背筋はいきんを曲げ、ブリッジへと移行した瞬間、23のモノアイから光の帯が射出された。


「うぉおっ!?」


 光は遥か上空の雲を切り裂き、巨大な穴を穿うがった後、見えない高度までも光の帯を伸ばし続けた。


「なっ‥‥‥っ! 何だよソレ!?」

 ブリッジ状態から体勢を変え、23と距離をとる。


「アルマ! コイツ等アイアンゴーレムじゃ無いわ! 何か別のモノよ!」


「別のモノって何だよ!? 気配も何もない単なる雑魚じゃ無いのかよ!?」


 ジュディもアルマも、22、23を見た時に単なるアイアンゴーレムだと判断していた為、脅威的な耐久力と正体不明の攻撃に慌て始めた。


「クッ、クックックッ‥‥‥コレは凄いな、まさかここまでイカれた性能とは‥‥‥」


 コルセイが笑う。


「‥‥‥さあ殺せ、22、23」


 その言葉を受けて、22、23の後背部こうはいぶの各所が開かれ、駆動音くどうおんと共に開かれた部分が放電を始めた。


 その一瞬後、尋常じんじょうではないスピードでジュディとアルマへと突進した。


「なっ!?」

「早ぇっ!?」


 22、23は突進しながら左右の腕から50㎝程の光の帯を生やした。


「あれはティナちゃんと同じ‥‥‥っ!」


 見覚えのある形状にジュディが慌てる。


「アルマ! あの光に当たったら駄目よ!」


 そう叫び、手に持つ鉄球武器モーニングスター【明けの明星】を再度 投擲とうてきする。


 22は向かい来る鉄球を、驚くべき事にスピードを緩めもせず直角にかわして、そのまま一拍いっぱくも置かずに前進を続ける。


「おい! 何だよあの頭のおかしい避け方は! って、うおっ!?」


 アルマが22の回避に目を奪われている一瞬に、23が距離を詰めて光の帯で攻撃を仕掛けてきた。


「くっ‥‥‥そったれがぁ!」


 連続で繰り出される攻撃の隙間すきまい、腰を回転させた廻し蹴りを放つ。


 アルマの廻し蹴りは、特異体質の一つの雷を自分の脳内に使い、脳の神経細胞ニューロンを刺激して普段は抑制しているリミッターを外し、威力だけでも三メートルはある岩を粉砕出来る脅威的な威力を持っていた。


三メートル程23を押し返せたが、23の外装にはヒビ一つ入らなかった。


「痛ってぇっ! って、嘘だろ! アタシの蹴りを受けてノーダメージかよ!」


「アルマ、能力使うわよ!」


 アルマと23の攻防を横目にして、ジュディが叫ぶ。


「だっ‥‥‥駄目だジュディ! コイツ等がいるなら魔天衆共も居る筈、まだ見られる訳には‥‥‥っ!」


「それどころじゃないでしょ! このままじゃヤバいでしょうが!」


 必死にかわしながらジュディは能力の解放にはいる。


「くっ! それしか無いのか‥‥‥」


 アルマがうめきと共に同じくクリムゾンの能力の解放にはいる。


「‥‥‥何かやるつもりみてぇだな、22、23、早く仕留め‥‥‥」


「コルセイ、尻尾を出してくれて有り難う」


 コルセイが命令をかけようとした時、背後から声が聞こえた。

 驚き、後ろを振り替えるコルセイの首を何者かが締め上げた。


「‥‥‥グッ!」


「アンタ達も動かないでよね、コイツの首へし折るよ?」


 後ろで、目の前にいきなり現れたルビィに驚愕している三人に向けて言った。


「な、なんか‥‥‥変な状況になってない?」


「コルセイを掴んでる奴誰だ? てか、鉄塊共の動きも止まったな‥‥‥」


 ジュディとアルマは、急展開に混乱していた。


「ゼロ、22、23の回収に入りな、無理なら破壊を許可するよ」


 ルビィがそう言った瞬間、上空から鉄塊を更に複雑にした様なモノが降り立った。


「ルビィ、破壊シテハ証拠トシテ使エナクナリマスガ、ヨイノデスカ?」


「あー、部品だけじゃやっぱりキツいかな?」


 ゼロの言葉にルビィがおどけた調子で言った。


「‥‥‥っニジュヴニッ!ニジュヴザンッ!ゴイヅを殺れ!」


 首を掴つかまれ宙に浮かされるコルセイが、ルビィを睨みながら叫ぶ。


 ジュディとアルマの目の前で静止していた22、23が、向きを変えてコルセイ達へと向かう。


「はぁ‥‥‥めんどくさ、ゼロ?」

「了解デス、ルビィ、任務遂行ニ移リマス」


 ゼロの身体にいく筋もの光の帯が走り、甲高い駆動音と共に足元より凄まじい風が巻き起こる。


「ロストナンバー『ゼロ』テイクオフ」

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