第10話ライジング・サン

 燃えるような赤髪をした、セミロングの女性がフューゾルの西側の地区にいた。


 目の前には、眼帯をした金色の長髪をヘアバンドで後ろに流している男と、付き従う様に後ろにつく三人の男女がいた。


「あんたがコルセイ=リングス?」

 赤髪の女性が目の前の男に聞いた。


「‥‥‥ああ、アンタは確かライジング・サン‥‥‥ルビィ=デルタ、で良かったかい?」


 あごに手をあて思い出しながら聞く。


「そ、親しい人はルビィD《ディー》って呼ぶけどね‥‥‥って、蛇足かな?」


「アンタの愛称なんて、確かにどうでも良いな」


 コルセイは心底どうでもいい、と言った風にルビィを見た。


「オルファノ連合の神将様が、俺達に何の用だ?国同士の同盟だか何だか知らんが、こんな国にまで来て干渉してくる意味が解らんが」


コルセイが鋭するどい目付きになり聞いた。


「別に、ウチだってフューゾルくんだりまで来て帝国に干渉したくなんてないさ‥‥‥ただ、あんた達が隠し持ってるアレ‥‥‥どうやって手に入れた?」


 そう言うと、ルビィが殺気を四人に向けて放つ。


「‥‥‥何の事か解らんな」


「ふーん、すっとぼける訳、ね」


 殺気を受け流しながら答えるコルセイにルビィは言った。


「ナンバーズ‥‥‥存在しない筈の22、23がウチの国からあんた達に流れたって事は掴んでるんだけど、ね?」


「知らんな、大体存在しないモノをどうやって手に入れるんだ?」


 一拍いっぱくおいてルビィが言葉をはっした。


「‥‥‥ゾンダーク」

 ルビィが呟く。


「‥‥‥」

 コルセイが沈黙で答える。


「あの参謀から手に入れたんでしょ」


「知らんな」


 しつこくたずねるルビィに若干じゃっかん苛立いらだちを見せるコルセイ。


「ウチの大将、ソドリム様はゾンダークの暗躍を放置してるみたいだけどね‥‥‥ウチ等十神将は違う」


「知らんと言っている」


「‥‥‥あんたが尻尾を出すまで、ウチ等十神将が見張っている事、忘れないように」


 そう言うと、ルビィはきびすを返して歩き出した。


「俺達を見張るより、国に戻ってゾンダークなにがしを見張っていたらどうだ?」


「それであいつを引きずり下ろせたら、こんな苦労はしていないよ‥‥‥」


 そう呟き、その場を後にした。


「折角のゾンダークの裏を知るチャンスだ、フューゾルで何をするつもりか知らないが、精々踊って貰うよコルセイ=リングス」


 ルビィは、自分達のアジトへと早足に戻った。


ーーーーー


 ティナ達は、場所を変えロゼッタの居る市庁舎の市長室に来ていた。


「まだティナちゃんに話してなかった訳?ジュディ?」


 ロゼッタが溜め息と共にジュディを見る。


「うー‥‥‥タイミングが中々、ね」

 明後日を見ながらジュディ。


「まあ仕方ない、か‥‥‥ティナちゃん、詳しく内容は聞いた?」


「ジュディさんいわく触りの部分までらしいですが、どこまでかは解りかねますね、てか聞きたくないんですが」


 勘弁してくれ、と言った感じでティナは顔をしかめる。


「ハァ‥‥‥アルマ、貴女も口が軽すぎるわよ、もう少し慎重にねぇ‥‥‥」


「解った、解ったよ、勘弁してくれよロゼッタ‥‥‥‥」


ロゼッタの小言に辟易へきえきとするアルマ。


「貴女ねぇ‥‥‥はぁ、もういいわ、んで、そっちの女性はアルマが見つけた能力者、で良いの?」


「お初にお目にかかります、ロナ=クレオと申します」

 優雅に礼をするロナ。


「ええ、宜しくねロナさん、ロゼッタよ」

 軽く会釈するロゼッタ。


「それでティナちゃん、この話は無理に聞かなくて良いのよ、正直 ろくでもない話だし、話を聞いたら後戻り出来ない事になるから」


「‥‥‥話を聞いた後で断る事は?」


「御免なさい、詳しい話を聞いたら部外者には出来ないの」


 申し訳無さそうなロゼッタ。


「‥‥‥ジュディさんに聞いた範囲は知っても大丈夫な範囲なんでしょうか?」


 その言葉に一抹いちまつの不安を覚えたロゼッタ。


「‥‥‥ジュディ、アンタどこまで話した?」


「か、軽くよ軽く? ホントにホントに」


 挙動不審きょどうふしんになりながらうすら笑いを浮かべるジュディ。


「因みにティナちゃん、どんな感じで聞いたの?」


 ジュディではらちが明かない為ティナに話を振る。


「帝国の中枢部を壊滅する、みたいな?」


「ガッツリ話の中核を話してんじゃねぇかジュディィィイっ!」


ロゼッタの絶叫が市庁舎に響き渡った。


「‥‥‥ふぅ、仕方ないわね‥‥‥ティナちゃん、申し訳ないけど巻き込ませてもらうわ」


一頻ひとしきりジュディに小言を言った後、話を再開した。


「拒否権‥‥‥」


「恨むならジュディを恨んで‥‥‥ホントゴメン、ティナちゃん」


 手で顔を覆いながらつぶやくロゼッタ。


「‥‥‥詳しい話も解らず巻き込まれるのも何だし、少し説明するわね、諦めはついたかしらティナちゃん?」


「全くつきませんが、取り敢えず聞きます‥‥‥」


 諦めた表情で言った。


「私は悪くないわよね、ティナちゃん!?」


 未だに責任のがれをしようとするジュディを置いて、ロゼッタが話始める。


「先ず、私とジュディ、アルマは昔帝国軍に居たの」

「昔、ですか?」


 ジュディやロゼッタの過去をよく知らないティナが首を傾かしげる。


「そ、私達が帝国から逃げ出したのが大体五年程前かしら‥‥‥私達三人は同期でね、特殊な体質を持ってた事から十二使途の長、アノス=レイフィールズに若くして見出だされ使途入りしたんだけどね」


「その話は私も初めて聞きますわね、ね? アルマさん?」


 ロナが話に入ってくる。


「まぁ、あんまり重要な話でも無いんだけどね、話を続けると若くして十二使途に入った私達には妬みややっかみがかなり多くてね、逃げ出すまでの四年間程は色々な事があった訳、内容は押して知るべしってトコね」


 あまり詳しくは話したく無さそうに言うロゼッタ。

 その雰囲気を感じとり、ティナもロナも話を流す。


「その色々な事も、私達が帝国から逃げ出した理由に含まれるけど、それよりもヤバい理由を知っちゃったのよ、私達は」


 そう言うとロゼッタは一呼吸置き、話を始めた。


「負の遺産‥‥‥『虚無』、それを見付けた帝国中枢部による稼働エネルギーの収集」


「虚無‥‥‥ですか?」

 ティナが聞き返す。


「そう、虚無のデータベースに登録する事が出来た生物の存在を作り替え、強制的に次のステージへと進化を促すとわれる、大陸歴以前の文明が残したと文献に記されていた存在」


 ロゼッタが話を止め、続きをアルマが話始めた。


「それを発掘した帝国が、文献に記されていた方法でエネルギーを集める為に起こした行動が‥‥‥」


 ジュディが言葉を引き継ぐ。


「七年前に始まったファトゥナート大戦‥‥‥って訳」

「因みにエネルギーは‥‥‥大量の霊長類の魂、ね」


 ロゼッタが話を締めた。

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