第五話「恋愛シミュレーション」

『あの、よかったら会ってみませんか?( ̄▽ ̄)』

どうだ、このド直球にしてなんの含みもないアプローチ、俺はもう迷わない。黒子娘ほくろこごときに心かき乱されることなく、恋愛シミュレーションのごとく、ただこの一連の流れに身を任せ結果を楽しむだけだ。

 よし、間違えてDMではなく自身のタイムラインでリプライしていたことに気が付いた俺は冷静だ。冷静に削除して、冷静にDMで打ち直す。私は冷静だ。

『あの、会いたいです。会ってお話してくれませんか』

『そう、ちょうど映画のチケットが余ってるんです。ゆっくり映画でもみましょう(=゚ω゚)ノ』


映画のチケットの空売り。君がOKなら2枚金券ショップで買ってこよう。これは恋愛シミュレーションだ。どんな風に転がったって僕の人生のプラスになる恋愛シミュレーションなんだ。いやー、俺も罪な男だ。一人の幼気な女性を弄んでしまおうとしているんだから。映画観て、楽しくお話させてもらえたら、そのままポイって寸法よ。これくらいできる男にならなけりゃ、いつまでたっても女は偶像でしかありえない。嘘でもなんでもどんとこい、全部笑顔で受け止めてやる。出会う前からもう惚れてんだ。首筋黒子娘、きっと君がどんな姿であったってこの名前には勝るだろう。君の本当の名前が知れたら、この恋愛シミュレーションはベストエンディングなんだ。


『わかりました!日曜日、学校がお休みなので明後日の日曜日でもよいでしょうか(*^^*)』

『もちろんです!!』


が、学校!? もしかして小学生でしたパターンか!それは怖いぞ。そのエンディングだけはヤバイ。いい年した大人が小学生とおてて繋いで映画観て、てゆうかなんで手を繋いでいる!? いやあらゆることがありうるぞ。これ、全部心霊現象だった、のほうがまだ怖くない。いや、待てよ。今までのやりとりからしてそんな年齢が下のわけがない。高校生、あるいは大学、専門、もしくは嘘、といったところだろう。なにを恐れることがあろう。会える約束ができた時点でほぼこの物語はエンディング間近だ。やばい犯罪集団に巻き込まれた場合にだけ気を付けてお金は必要以上に持ち出さず、財布にもカードを入れないでいこう。よし、あとはどんな服着ていこうか、日曜まで考えればいい。

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