第23話ふたつめ。

キロの機体が撃墜されるか、キロがステージをクリアするか。 手に汗握る名ゲーム、にはならなかった。 俺がやられてから5分くらいで危なげなくステージをクリアして、ステージ2 に入る。 同時に、俺の機体も復活。

「よし、次はやられねぇ」

「がんばってくれ」

キロと固い誓いをかわし、いざ戦場へ!

「……」

「……」

「……」

静寂。 部屋の中には俺達のコントローラーのボタンをカチャカチャやる音だけが響いている。 いや、まぁ、当然っちゃ当然なんだけど、この時間ってホントに無言になっちまうよな。 撃破されてから喋り始める、みたいな。

「なぁ、このステージ終わったらサキちゃんとか、福原とか呼んでみね?」

なんとなく、手持ちぶさたになって、キロにそう提案してみる。 キロはモニターから目を離さずに、「あぁ、そだね。 いいよ」と答える。 まぁ、サキちゃんと福原が来てくれるならなんとなく賑やかにはなりそうなので、この無言の時間は格段に減るだろう。 あ、ちなみに福原は俺の友人で、中学からの付き合い。 大学は違うけど今でも仲良しです。 時々会って一緒に遊んだりする。

「そーいや、前に福原に会ったのっていつだっけ?」

「んー、冬?」

ゲームを進めながら話す。

「あー、鍋やった時だっけ?」

「そーだった気がする。 あれ? すき焼きだっけ?」

「わかんね」

ははは。 キロも俺もなんとなく笑った。 まぁ、なにをやったかは、些末なことなので、そんなに気にしなくていいか。

「そーいやキミ、サキちゃんの連絡先知ってるの?」

「あ、聞いてないかも」

「はい、私知ってるー」

「まじすか!?」

意外にも、こいつサキちゃんの連絡先を知ってやがった! そして、そのことに動揺(?)した俺は敵機に簡単に撃墜されてしまう。

「モニターから目ぇ離すなよ。 今日2回目の爆破じゃん。 これは今日のピザパーティー代、キミ持ちね」

「え、ピザパーティーなの、今日!?」

どうやら、キロの中ではもう予定が組まれているらしかった。 この能力をもっと有効活用した方が良いと思うのって俺だけ?

ステージ2では、俺はさっきのステージ1よりも長く生き延びれていたようで、俺がやられてからほどなくしてキロがステージ2をクリアしてしまった。 ステージボスみたいなのがあっさりやられていて、なんとなく悲しいような気分。

キロはポーズ画面にして、サキちゃんに連絡を試みる。

「福原、よろしく」

そう言われて、俺は福原に連絡する。 電話をかけるとすぐに繋がって、馴染みの気だるそうな声が聞こえてくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る