第18話じゅぎょうとか。

通路でキロと別れて、講義室へ向かう途中、サキちゃんと会った。 どうやらサキちゃんは、俺と同じ講義室を一限に使う講義をとっているらしかった。

「あ、おはよー!」

「おう」

サキちゃんが挨拶してくれた。 しかも手をふって。キロは手をふったりするようなタイプじゃないから新鮮な感じがする。 そんな可愛い挨拶に応じてすれ違う。

「今から?」

「おう」

「がんばってね!」

「ありがと」

他愛ない会話。 思わず表情が緩んでしまう。

そして、講義室の扉をあけ、中へ入る。 俺と同じように二限の講義を受けるため早めに席に着いている者と、一限終わってだらだらしている者とで、だいたい半々くらいの割合になっている。 先生が来るまで、まだ少し時間があるのでスマホをいじって時間を潰す。 ネットニュースのアプリを立ち上げて、今日本で起こっていることを目で追って行く。

「……」

なんというか、特にたいしたニュースもなく、少なくとも昨日1日は、日本全体で見れば平和だったようだ。 俺の周囲だって、いつも平和だよなぁ。 しみじみ。

無駄に時間を空費するというのは、体感時間よりも、リアルタイムのが早くに来るらしい。 そうこうして、色々考えたり考えなかったりしている間に二限開始のチャイムが鳴り、気付けば一限が終わってだらだらしているやつらの席だったところには、二限の者達が陣取っていた。

講義が始まって、初めのうちは真面目に聞いていたが、先生の間延びした話し方や、低いテンションと低い声によって眠気がものすごいことになってきたので、またスマホへと手がのびてしまう。 良くないクセだよなぁ。 そう思いながらもいまだに治せずにいるから、多分簡単には治らないんじゃないかなぁ……。 この先生は、「要するに」とか、「要は」とかよく言ってるけれど、全然要約出来てないんだよな。 綺麗にまとめられてないまま次々進んで、よく分からないまま特に意味のなかった板書を消してく。 まぁ、レポートで単位貰えるから、そこは良いんだけど。

スマホを開くと、メッセージアプリから通知が一件来ていたので、確認する。

『授業! クソつまんね!!』

タップすると、その一行が表示された。 まぁ、名前を見なくても誰か分かるような、このメッセージの送り主は、案の定キロからのものだった。 今回は、俺も同意だったので『みーとぅー』と、返信する。 そうだよなー、この時間の授業は大体クソつまんねんだよなぁ……。

鬱々とした気分で、スマホをおいて、ホワイトボードに目を向け、頬杖状態で話を聞き流す体制に入ると、また先生の「要するに~」とか聞こえてきて、なんだかもう逆に面白かった。

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