第7話かいわ、かいわ、かいわ。

 で、スーパーに向かって二人で並んで歩き出したわけだが・・・・・・。

「サトウくん、倫理の授業とってるよね? 時々見かけるよー」

 結局、俺の名前は正解に辿り着けないまま、『サトウくん』で落ち着いたようだ。まぁ、倫理はほぼほぼ休んでいないから、サキちゃんも同じくとってるのなら、見かけもするだろう。『時々見かける』と言っているあたり、彼女はそんなに真面目に倫理の講義に出席していないのだろう。そう思いながらも、「あぁ、そうなんだ。 倫理とってんだ」とだけ。無難な返答を、無難な微笑みを返しておいた。

「あ、そうだ。 今日はどこか出かける予定あったんじゃないの?」

 そういえば、昼過ぎのこの時間に、しかも手荷物も特になく、強いて挙げるのなら、財布やスマホが入っているだろう小さなバッグくらいしか手に下げていない。今更な感じはするその質問を、他にする話題もないのでとりあえず間を繋ぐ意味も込めて言ってみた。

「んー。 あるっちゃあるけど、無いっちゃない。 みたいな?」

 はなしつづかねー。

 分かるような、分からないような返答。まぁ、大事な用があるなら一緒にスーパーに行く、なんて訳の分からない誘い断るかなー。

「へー」

 まじで、特に何も言葉に出来ず、無意識のあいずち。かいわがつづきません。考えてみれば、キロ以外の女性と話すことなんて、そうそう無いことなので、なかなか慣れないのも当然か。

 うーん。大切な物は失ってから気付く。って、このことか。なんかちょっと違う気もするけど。しかし、これは、俺の改善すべき課題だよなー。

「で、サトウくんはスーパーに何買いに行くの?」

 あ、そういえば言ってなかったかも。

「アイス」

 端的に、単語での返答。やっぱり、俺は、キロ以外の女性と会話を続けるのは苦手なようだ。もしかすると、キロのせいで、俺の会話する力が衰えてしまったのかもしれないけど。あいつ、一人でも喋ってるからなー。

「ふぇー。 そーいえば、サトウくんの家ってこの近くなの?」

 変な、亜熱帯の方に居そうな鳥の鳴き声のような声と、普通の質問。んー。説明するのは、なんとなく面倒な気もするけれど、仕方ないか・・・・・・。

「あー、友達の家がこのあたりでさ、俺は実家に住んでるんだけど——」

「あぁ、なるほど!」

 そこまでで、大体察したらしく納得してくれた。さすが、女性は違うなー。根本的なコミュ力が違う気がする。サキちゃんとは、これからも仲良くしておきたいものです。コノコイイコ。

「じゃあさ、サトウくんの家はどのあたりにあるの?」

 もう、何度目の間違えなのか分からなくなってきた名前のミスを、俺は訂正する気はかなり前から無くしてしまっていた。

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