じっとりと息苦しい空気の先に広がるのは、虚しいほどに青く爽やかに広がる空。
そんな夏の刹那を切り取ったような、大人の掌編です。
学生時代、妹のように可愛がっていた後輩が「海が見たい」と訪ねてきたところから物語が始まります。
学生時代は互いに恋人もいて楽しい時間を過ごしていたが、それぞれの事情で別れを経験し、それぞれの思いを抱えながら大人になった二人。
触れ合うことで、学生時代やその後の後悔を思い出していく過程が、淡々とリアルに、胸に迫る描写を散りばめながら丁寧に描かれていきます。
しがらみや後悔を抱えながらも前に進んでいくことが大人になるということ。人生を歩んでいくということ。
そんな風に考えさせられながらも、読んだ後には乾いた風が心を静かに撫でていきます。