最終話 悪評と欲情、そして破滅

俺が強姦されてから一部女子が喜ぶ。夏目 涼子を筆頭に俺に辱めを受けた連中だ。俺はあえて彼女らに罵倒されてみる。

「こいつホモのくせに良く生きていられるね」

見下すように言う過去のアイドル。俺はニコリと彼女に微笑む。

「何よ…」

「その歪んだ顔が素敵で」

「あんた気持ち悪いのよ」

「貴女がそう言う趣味とは意外ですね」

「何が言いたいの?」

「同性同士の行為、それをそこまで目を輝かせているとは」

周りの女子がひそひそしだす。

「はあ?何を言って…」

そう言いながら彼女は悟った顔をする。男同士の性愛を愛する女性。そう思われているという事を。

「襲われて頭がおかしくなったんじゃない」

彼女はヒステリックに言う。それに対して俺は満面の笑みを浮かべる。傍から見ればさぞかし狂気の沙汰だろう。しかし俺はそんな自分にも美を見出す。汚され罵倒される。そして見下す態度を取られるその姿。まさに負の感情に潜む美を感じられてならない。そして、この罵倒する女が更に落ちればどうなるか?


(この女が汚されたらどんな表情を見せるのか)


それから俺は彼女が罵倒するたびに笑みを浮かべ優しく接する。その結果、彼女の周りから誰もが離れだす。


(まだ足りない)


俺は孤立し暗くなっていく彼女に更に優しくした。何時しか彼女は俺の傍から離れなくなる。そして彼女が俺に依存しだしたころ俺は素っ気ない対応をするようになった。


「最近、冷たくない?」

「別に付き合っているわけではないでしょ?」

俺の言葉に彼女は黙る。そして何処までも顔が歪んでいく。


(綺麗だ)


俺はその顔に見惚れる。

「何よ…」

「綺麗だなと思って」

「そうやって私を貶めて楽しい?」

「楽しいかどうかではないですね」

「じゃあ、なんでこんなに私を貶めるのよ」

「貴女が無様で魅力的ですから」

俺の頬に痛みが走る。そして彼女は大声で泣きわめく。俺は微笑みながら彼女を見つめる。それに癇癪を起した彼女は何ども俺を殴りつける。その姿が何とも言えぬ魅力を覚える。

「無様なあなたが一番素敵だ」

俺は殴られながら微笑んだ。

「なんで…そんな顔をするの…」

俺は何も言わない。ただ彼女を見つめるだけ。

「私は…もう何もないのよ。貴方のせいで」

そして彼女は俺の唇を奪う。周りは冷やかに見ている。

「これが貴女の本当の姿ですか?寂しがり屋で虚構の姿で見栄を張る。しかし本当は誰よりも弱くて脆い」

彼女は押し黙る。

「素敵ですよ。そんな貴女が」

俺は再び微笑みを向ける。


(どこまでも脆く直ぐに壊れる。虚飾の姿を壊せばすぐに弱さを見せる。美しい。儚いものであるからこその美。なんて素敵なんだ)


その晩、俺は彼女に抱かれた。どこまでも汚される。


翌日から彼女は壊れていく。俺は彼女をどこまでも壊した。時に俺と小枝との絡み合う姿を見せつける。その度に彼女の瞳から光は失われていく。


(どこまでも壊れていく…美しい。破滅へ向かう美。甘美である程に中毒性がある)


俺はひたすら彼女を壊した。決して暴力を振るわない。孤立をさせる。そして彼女は虚飾の姿を奪われどこまでも弱く依存する姿を見せるようになる。

結城と絡む姿も見せた。彼女は何処までも悲しみに満ちた表情を浮かべる。破滅に向かう美を見せてくれる。何よりも淀みどこまでも狂気に染まっていく。俺はそれをただ見つめていた。


ある日の事だった。俺は夏目涼子に呼び出される。

「何?」

俺は素っ気なく聞く。すると彼女は俺を抱きしめた。同時に腹部に熱い感触が伝わる。

「貴方が悪いのよ」

光を失った彼女は俺に狂気の笑みを浮かべている。俺の腹部から生暖かいものが滴る。その姿を近くの鏡で見てみる。


(呆然とした男から滴る鮮血。美しい、なんて美しいんだ)


俺は満面の笑みを浮かべる。そして彼女に口付けを交わした。

「今の俺達は世界で一番惨めで無様で美しいな。ありがとう。こんな美しい光景をくれて」



俺の意識は遠のいていく。彼女は大声で涙を流しながら笑い続けた。

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狂気のエロスに誘われ 松林 性戯 @miyukimatubayashi

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