第2話 恋心と羞恥心

とある講義で彼は俺に話しかけてくる。小柄で美形ではないが愛嬌溢れる顔。

彼の名前は結城 玲(ゆうき れい)。どうやら俺に気があるらしい。俺は恋愛感情は持ち合わせたことがない。あるのは美に対する欲求のみ。そして愛嬌ある彼の顔が歪む姿を想像した。羞恥と苦痛に満ちた姿。そしてそれを通り越した先にある淫らな表情。俺はそこに美を感じる。自制心が崩壊し快楽に支配されていく美を。

「西村さんってどんなことに興味があるんですか?」

「そうだな、綺麗なものが好きかな」

「やっぱりアイドル系の可愛い女の子ですか?」

彼はそう言って明るい表情を浮かべる。しかしその中に微かに醸し出す負の感情を俺は見逃がさなかった。結城は決して美形ではない事を自覚している。故に彼は明るく振舞い楽しいを演出するタイプだ。


(微かに醸しだす嫉妬の感情。なかなか素敵だ)


俺は全ての感情に美はあると考えている。狂気に満ち溢れた美、歓喜の中にある美。数えればキリがない。もし彼の仮面を破壊しその中にある違った感情を引き出せばどんなに美しい事だろう。俺は不意にそう考えていた。


ある日の事、彼は俺に言った。

「僕は格好良くないし特別何かがあるわけでもありません。それでも…西村さんが好きです」

「俺のどこに好意を持つ?」

「格好良いしクールで、仕草が優雅なところが」


(つまり俺の外見を見ているのか。それでは中身を見せればどういう反応に変わる?)


俺は彼が失望する姿を思い浮かべる。失望感に歪んだ表情。負の感情にある美を考えた。


(失望に歪む顔が見てみたい)


「それは思い違いだな。それから俺はホモではない」

彼は失恋したと思ったのか悲しそうな顔に変わる。同時にやはり男同士ではという顔。

「話は変わるがスカートを履かないのか?」

「え?持っていないから」

「それでは貸してやるよ」

彼が恥ずかしそうな顔をする。同時に怪訝な顔。これから何をされるのかという表情だ

「そうだな。君にも美しいところはあると思うぞ」

その言葉で彼の表情は歓びと期待に満ちたものになる。

「それでは…」

「付き合うかどうかは解らないな」

「何でもします。だから…付き合ってください」

「そんな事を言って良いのか?体目当てかもしれないぞ?」

「それでも構いません」

そう言うと彼は俺にしがみ付く。俺は優しく彼の頭を撫でた。

彼は勘違いをしたようだ。俺の顔を見つめやがて瞳を閉じる。そしてしばらくその姿で居た。しかし俺はそんな彼の姿を見つめているだけ。彼はムキになったのか強引に俺の唇を奪った。

「恥をかかせないで」

彼は抗議する目付きで言い放つ。

「そうか?もっと恥ずかしければどうなる事やら」

「そんな…体ですか?」

「それでも構わないと言っていなかったか?」

彼は黙る。そんな彼を俺はトイレに連れ込み女性服に着替えさせる。少し丈が短いスカートに。そして化粧を施し下着を脱がした。

「少し校内を歩かないか?」

その言葉に彼の顔は悲痛に歪む。

「こんなの変態じゃないですか」

「それを君が望んだように思えてね」

俺は彼の鞄に脱がした下着と服を入れる。そして俺は彼を午後の構内で連れ回した。


「西村さん…こんなのって」

彼は今にも泣きだしそうな顔だ。羞恥心と苦痛に顔を紅潮させる姿。

「そうか?それにしては逃げないんだな」

「それは…」

「こういうのが好きだろ?」

「そんな事は…僕は変態でも露出狂でもない」

「それでも見られるかもしれない羞恥に欲情している」

彼は押し黙る。少し短いスカートに下着を着用せず校内を歩かせる姿はまさしく羞恥と屈辱の美に溢れている。それはやがて淫らな表情へ変わる。そんな彼に俺は優しく唇を重ねた。

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