きつねと同心

山吹弓美

きつねと同心

「辰馬坊、相変わらず無茶をするんだから」


 宵闇の中からふわりと現れて、かずらはうっすらと笑う。吊り気味の目が細められて、まるで。


「悪かったな。どうせ俺は人だしよ」

「人同士ならいいんだよ。相手はあたしらとおんなじ、あやかしじゃないかえ」


 まるで、じゃなかった。そもそもかずらは、狐なんだから。


「坊に傷をつけるあやかしはねえ、あたしがほっとかないよ。魂も残さず散らせてあげようね」


 その狐が、どうして俺なんぞにこうもひいきしたがるのか。


「化け同心、かずら。お役目によりその方ら、成敗いたす」

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きつねと同心 山吹弓美 @mayferia

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