第2話 武器。

「アリス、帰投しました。」

アリスは転移室から少し行った所にある部屋に入り、そう言った。


「おぉ、お帰り。それで?」

部屋の奥には40代後半ほどの男性が座って、書類に何かを書いていた。

「はい。感染体を一討伐。犬に憑依していたので真っ二つに。」

「ふむふむ…何とも後処理が大変そうなやり方を…それでそっちの方は?うちの部隊解散のお知らせ?」

半分冗談まじりで男性はそう聞いた。

「こちらの方は感染体に食われそうになっていたので助けました。何となく素質がある気がしたので連れてきました。」

さらっとえげつない事を言う。

「戦力が増えるのはありがたい。それじゃ、君の会社に退職届出を出しておいてあげるよ。」

何故会社員だと知っているのか。

まぁ好都合だ。あんな何をしても指摘しか喰らわない所よりこっちの方が楽しそうだ。

「それじゃ、装備支給にでも行こうか。それで君、名前は?」

そう言えば名乗っていなかった。

「角楼 レイです」

「レイ…でいっか。呼び方は考えておくよ。僕は滝蔵 火照。滝蔵局長でいいよ。」

そう言うと局長は椅子からたって部屋から出ていった。

「ほら。行きましょう」

アリスに先導され、俺もついていく。

「私は一旦武器を修理しに行ってくるわ。」

そう言ってアリスは通路の奥の方へと行った。


局長が入って行った部屋の中には銃や剣、杖のような物が大量に転がっていた。

「片付いてないなぁ…整備班は何をしてるんだか。」

そういいながら局長はこちらを向いた。

「それじゃあ…この中から好きな武器を持って行ってくれたまえ。どれだけでも構わないよ」

そう言われ、俺は部屋中の武器を見た。

短剣に長剣。ハンマーや杖、ライフルだってある。

その1つ1つには何かの印が描かれている。

俺はパッと見て、これだと思った武器を何となく手に取った。

「その3つでいいのかい?」

俺は大剣と刀、ハンドガンを手に取り、局長の方を向いて頷いた。

「よし。分かった。そいつらの銘は勝手に付けてもらって構わん…が一応神名を教えておこうか。」

神名…と言うのは確か聖なる武器の真の名前だといつか聞いた。

「大剣が…ガラティン。刀が加州清光。ハンドガンが…FP-45…かな?恐らく」

何世代も前のハンドガンについて気になることがあった。

「これって…どこにマガジンを入れるんですか?」

不思議そうにこちらを見つめた後、納得したように答えた。

「その銃は本来なら使い捨てなんだよね。だけど技術班に改造して貰って威力、精度、射程を大幅にあげて貰ったの。結構強い。」

使い捨ての銃ができた経緯を聞きたいところだが…相当昔の代物だ。分からないだろう。

「ガラティンはアーサー王伝説の円卓の騎士の1人ガヴェイン卿が愛用していた武器。加州清光は遠い昔の新撰組の沖田総司が愛用した刀。FP-45は…革命とかで敵の兵士から装備を奪う為の言わばゲリラ装備だな。」

聞きたかった事の一歩先まで教えてくれた。

「それで…君の配属だが…」

急に話が変わる。

「アリスと同じ、D-3地区の治安維持を頼んだよ。この後に移動して貰うから必要なものを補給班から貰っておいてくれ。」

そう言ってアリスをが来ると局長は部屋を出た。


「…あなた結構重そうな装備を持ってるわね。大丈夫なの?」

実際そこそこ重い。

幸い最近まで会社で荷物持ち状態だったからそれなりの重い物なら持てる。

「あぁ。若干重いけども。」

そう言って大剣を背中へ、刀を左腰へ、ハンドガンを右腰に付けた。

「そういえば…武器に銘は付けたの?」

すっかり忘れていた。

「忘れてました…せっかくですし今付けます。」

とは言ったもののどうするか…思いつきに頼ろう。

「大剣を…トゥームウルフ。刀を狼龍孤影ろうりゅうこえい。ハンドガンを…デスイーター…」

アリスは口をあんぐり開けた。

「…いつそんな名前を…?」

思いつきとは言えず、固まっていた。


そしてアリスの案内の元、輸送車に乗せられた。

そしてエンジン音を鳴らし、出発した。

前後に護送車が合計二台。誰が乗っているかはわからない。

黒く、高そうで固そうな車だ。

車から無線が聞こえる。

「こちらa1 上空に飛行型と思われる感染体を確認。どうする?オーバー」

どうやらこちらを追跡しているようだ。

するとアリスは無線に声を出した。

「こちらアリス。感染体との接触は後ほど行う。そちらは監視を続けて。アウト」

そう言って無線を切った。

「えっと…そうしたの?」

一応聞いてみた。答えは察せているが。

「飛行型感染体が数体こっちを追跡してきてる。一旦基地周辺まで誘導する。」

そして三台はややスピードを上げた。

「基地周辺に誘導する。それまでに戦闘準備をしておいて。」

そう言われ、俺はデスイーターに弾を込めた。

「こちらアリス。飛行型感染体に追跡されてる。対空戦闘用意をして待機して。オーバー」

「こちらD3基地。了解。くれぐれも民間には被害を出さないで下さい。アウト。」

アリスは基地とやらと無線を取り終わると再びハンドルを握った。




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感染拡大/ブラックハンター 天辰レイ @Emina2580

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