第5話周城

何度も交渉して、ここが大事。結構有名なところなのだろう

客が多い。係りの段小姐は早く交渉を決めようとする。


「いいよ、そっちのお客さんかまってて」

手が空いたら次から次へと暖簾を広げる。

「いいよいいよ自分でチェックするから」


「また明日も来るから」と言って、

まずは10枚で400元まで値切って買う。


1枚40元=600円。これが3000円で売れればよし。

まあ最初はこんなもんだろう。肩の荷が下りたがお金がなくなった。

明日換金して再チャレンジだ。


古城に戻り一休みして夜店に向かう。同じような暖簾があった。

最初は100元。ついには33元まで下がって買った。

これをもって明日周城まで掛け合いに行くことにする。


三友客桟よる9時。女性が二人入ってきた。間違いなくこの

ドミトリーは共同なのだ。一泊20元(300円)だものね!


その一人がトイレットペーパー持ってませんかと言ってきた。

若い四川省の女ひとだった。


20100823(月)くもり


6時起床。2000kmも離れているのに北京時間だから

朝7時に夜が明けて夜は8時まで明るい。


中国銀行が開くのは9時のはずだから散歩に出る。

路地裏で庶民が米線かおかゆを列を作って食べている。

なかなか入りにくい。


9時。換金はスムーズだった。きくやで卵焼き定食をたべて

周城へ向かう。そっと染物工場の中に入って写真を撮り続けていると、


段小姐がやってきた。結構客が多い。また10枚買うというと

すぐに決めようとする。夜店の暖簾を広げて、


「昨日の夜30元で買った。同じものだ」

「いやいや藍の葉が違う」

と言って段小姐は私を庭の隅に連れて行く。


野生の藍の葉っぱを掴み手にとって見せながら、

「大理と周城では藍の葉が違う」

『うそつけ!』


「10枚ほしいが250元しかない」

「8枚!」

「8枚じゃ240元じゃないか?9枚!」

「・・・」

「来年もっと買う」


ということでついに1枚30元になった。

領収証に段小姐のサインをもらった。


今後はこれがものを言う。

こういうことが一番大事で最高に楽しいひと時だ。


時間を掛けて荷造りをする。リュックに目一杯つめる。

隅々までピチピチにつめて30kgはありそう。


気合を掛けて背負う。街道にはミニバスが走っている。

手を上げると止まってくれる田舎のバスだ。


懐かしい昔の日本がここにはある。夕方菊屋で

チキンチャーハンを食べて大理古城の町並みを散策する。


立ち止まって眺めているといろいろと庶民の生活が見えてくる。

あめを焼いているプレートは大理石だとか、


あれがひまわりの種なのだとか。子供たちはいつも元気に

水路で水浸しで遊んでるとか。これはゴミ箱なのだとか。


私は今までひたすら走り続けてきて立ち止まることがなかったように思う。

立ち止まることに恐怖を感じていたのだ。そしていま、


胡蝶泉に誘われて周城までやって来た。ついに藍染と草木染めを見つけた。

これが売れれば毎年来れる。しかしやってみなければわからない。


夜久しぶりに日本人と語る。チベット好きの青年医師と世界を駆け巡る

中年婦人。頑張れ熟年!その人が言った一言が気になる。


「染めの難点は日焼けと色落ちでしょ。ほんとに売れるんですか?」


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