子猫を返してほしければ写真を用意するんだな!!

ちびまるフォイ

身代写真の意味

「お母さーーん。私のケータイ知らなーーい?」


「知らないわよ。猫のミーがどっかにやったんんじゃない。

 それにケータイなら今もってるじゃない」


「ちーがーうーの。これはミーたんの撮影用だもん」


「だったら、それで鳴らせばいいじゃない」



「……あ」


人は追い詰められていると、とんだ失敗をやらかす。

私はケータイを鳴らしてソファの溝からケータイを救出した。


翌日、救出したてのケータイを持って学校へ登校。


「えーーと、今日も佐藤は休みか。よし授業始めるぞ」


いつものように出席がとられ、授業がはじまるはずだった。

私は自分の机の中に覚えのない紙が入っているのに気付いた。



アナタノ ネコハ アズカリマシタ。

カエシテ ホシケレバ レンラクセヨ。


ダレカニ モラセバ ネコノ イノチハ ナイ。



「ミーちゃん!?」


思わず立ち上がってしまい教室中の注目を集めてしまう。


「どうした? 急に立ち上がって」


「いえ、なにも……」


休み時間、トイレに入って紙に書かれていた連絡先にコメントを送る。




イマカラ サンマイ ノ シャシンヲ スマホニ ホゾンシロ。

1:2階 女子トイレ個室 奥から2番目



「なによこれ!? なにが目的なの!?」


コメントしても返事は来ない。完全な一方通行。

でも、相手が猫の命をにぎっている以上、逆らうことはできない。


「ここね……」


学校の女子トイレの写真を撮ってスマホに保存した。

いわくつきでもなければ、特別な場所でもなんでもない。


保存した写真を証拠として相手に連絡した。



ツギノシャシンヲ サツエイシロ

2:体育館裏 用具小屋



「いったいなんなのよ……」


人気の少ない用具小屋に行って写真を取る。

今度は撮った写真を連絡する前に、犯人にコメントを出した。



>どういうつもり? なにが目的なの?

 私に写真を撮らせてなにをさせたいの!?



>マダ オモイダセナイ?



「思い出すってなにを……?」


何度もこの場所に来たことはあるけど思い入れなんてない。

考えていると3つ目の指定が出た。



コレデ サイゴ

3:○○町○○番地△丁目 2階 窓



「なんなのよ……」


最後だけ急に具体的な住所を指定してきたのがわからない。

今度は思い出すもなにも始めてウ来る場所だった。


閑静な住宅街の一軒家が建っていた。



>撮ったわ。これで文句ないでしょ。ミーを返して!



>デンワ スル。デナケレバ コロス。



しばらく待っても電話は来なかった。

いてもたってもいられなくなり、メッセージ主へこちらから電話した。


「ちょっと! 早くミーを返してよ!」


「それはあなたしだい。あなたがあたしを思い出せば返してあげる」


聞き覚えのある女の声……いったい誰。


「何が目的なの!?」


「…………」


必死に声を思い出そうとしているとき、今朝の先生の言葉を思い出した。



"えーーと、今日も佐藤は休みか。よし授業始めるぞ"



「まさか……佐藤さん……?」



「やっと思い出したのね。そう、あんたたちにいじめられた佐藤よ」


「いじめって、私そんなことしてない!」


「してたわ!!! 新学期がはじまって席が隣であたしに話しかけた。

 だからあなたはあたしの友達なのに、あたしがいじめられてるのを見て見ぬふりしてた!!」


「え……?」


「とぼけてもムダだから。撮って来た写真を見て思い出すでしょう?

 1枚目のトイレはあたしが女子グループに水をかけられた個室。

 でもあなたは助けなかった」


「知らなかったのよ!」


「2枚目の体育裏はあたしがボールを何度もぶつけられた場所。

 あなたは通りかかったのに、無視して通り過ぎた」


「私、視力悪いの知ってるでしょ!?」


「3枚目は……」


「3枚目は本当に知らない!! 私、こんな家知らないもの!」


「でしょうね。ここはあたしの家だもん」


「え……?」


電話越しに、佐藤さんがなにかごそごそ準備しているのが聞こえる。

まさかミーを……。


「佐藤さん、なにをするつもり!? ミーは助けて!!

 その子にはなんの罪もないじゃない!」


「ふふふ、あなたって本当にバカね。

 あなたの猫なんてずっと家にいるわよ。

 一度も本当に誘拐されたかどうか確かめないなんて」


「あっ……」


人は追い詰められると、とんだ失敗をやらかす。

私はまんまと踊らされていた。


「あたしはね、今からあなたが撮影した2階の窓の近くで自殺するわ」


「はぁ!?」


「あたしの友達なのに、あたしを助けようともしない。

 それはいじめよりもずっと辛い事なのよ。それをわからせてあげる」


「私に復讐したいならもう十分じゃない! どうして佐藤さんが死ぬのよ!」


「すべての罪をあなたに押し付けることであたしの復讐は完成する。

 いじめの現場を撮影したあなたのスマホがその証拠になる」


「そんな……」



「あなたのスマホはもうハッキング済み。

 スマホを遠隔操作して、すべてのSNSで拡散してあげるわ。

 あたしが死んだ後に、いじめっ子が記念写真を投稿したって叩かれ続けられるのよ!!」



「お願い……もう許して……」



「いやよ!! あなたのせいであたしがどれだけ傷ついたか!!

 この心の痛みをあなたにも味わせてやる!!!」


「お願い……お願いだから……」



電話口から佐藤さんの狂気じみた笑い声が聞こえる。


「さぁ、あんたのスマホに保存されている画像を拡散してやる!!

 消えることない汚点があんたの人生に刻まれるのよ!!

 あははははははははは!!! 送信!!!」





その瞬間、佐藤さんがハッキングしていたもう1つのスマホから

大量の子猫ミーちゃんの画像がSNSへと放出された。




「佐藤さん……」


「何も言わないで……一番恥ずかしいのあたしだから……」


翌日佐藤さんは普通に学校に来ていた。

人は追い詰められると、とんだ失敗をやらかすものだと思った。

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