2章 平家物語

1 一の谷の戦い

第13話 一ノ谷の戦い

 ようやく『平家物語』です。

 「『平家物語』を加害者が解説してみた」は、ボクが中2の国語の教科書を見た時に載っていた『敦盛の最期』に愕然としたので解説することにしました。


 だから、かなりの部分を端折はしょってます。

 平家物語は平家が中心の話で、平治の乱が終わって平家がどんどん栄えた後、なんかきな臭い感じになってきたという感じの頃からの話から平家滅亡の壇ノ浦の戦いが描かれています(1179年ごろから1185年くらいですか? 諸説あり。どこにもサクッと書いてない)。


 仏教の教えを組み込みつつの、人々が楽しみにしていた娯楽作品です。

 歴史的事実を元にしたフィクションです。


 でも一の谷の戦いはボクも参加してるので、『敦盛の最期』に行く前に、その時のことを少しだけ話します。ボクが見ていない部分もあるので、調べて加えながらですけど。


 違ってたらゴメンね。




***




 一ノ谷の戦いの時、平家は福原にいました。福原は平家が虎視眈々と京の都に戻ろうと画策している場所でした。義仲くんに京の都から追い出された平家は九州の大宰府まで後退していました(京の都に戻ってくることを目標としていたなら)。


 大宰府は菅原道真公を祀った天満宮が有名です。学問の神様として受験生から大人気。菅原道真公は崇徳院様と日本三大怨霊に数えられるお方です。すごいでしょ。三大怨霊。三人目は平将門様です。


 九州まで退いていた平家ですが、ボクらと義仲くんが争っている間に京の都に近い福原(現在の神戸)まで戻っていました。だから親戚同士で争うなってボクは言いたいです。


 義仲くんをボクらが討ちに行ったのは、後白河法皇様と義仲くんの折り合いが悪くなったのが原因のようです。後白河法皇様、義仲くんにも幽閉されているようです。敵に回しちゃダメな人っているんだから。ボクは幽閉してないけどね、たぶん。「法皇様、助けてくださいっ!」ってやって助けてもらえなかっただけ。

 それは置いといて。


 福原は清盛様がここを首都にしようとしていました。清盛様がここに引きこもって宋貿易をしていたそうです。平家にはなじみのある場所です。一の谷の戦いの時、平家はここで戦の準備をしていたそうです。ただ、法事をするつもりでいたということもあったようです。それは置いておいて。


 福原の城郭に平家がいて、範頼兄ちゃんの主力部隊が東側にある生田の森から攻め、ボクらの遊撃ゆうげき部隊(別動隊)が西側の一ノ谷から攻めようとしていました。


 平家は10万くらいが城郭の中にいます。源氏は6万6千くらい。

 だから数が少ない源氏は少しでも有利になるように、東と西で挟み撃ちにしようという作戦です。範頼兄ちゃんが5万6千騎を率いてボクは1万騎を率いて京の都を出たそうです。


 ホントにこれ、有利になる?

 ただでさえ少ないのに、さらに減らすって大丈夫?


 ……誰がこんな作戦を立てたんだ?

「楽に勝とう!」がボクらの信条です。


 簡単に「行って戦ってこい」って言うけどさ、戦うと死人が出るんだよ。だからできるだけ下準備をしてできるだけ有利にしてできるだけ死者を減らしたいんです。


 しかし、楽ではありませんでした。

 山道がきつかったです。


 しかもなんか途中で戦ってるし。

 でも広いところでワーッと大軍勢で戦うのは苦手だけど、細い道をちまちま戦うのは得意です。ボクの仲間が強いので。それがけっこう大きな戦いで勝ちました。ボクの仲間は強いので。


 さらに京の都から連れていた1万を分け、土肥次郎実平さんに7000騎を渡して一ノ谷の西の木戸口に行ってもらいます。それで西を目指して進んで、残った3000騎くらいを安田やすだ義定よしさだに渡して夢野口に行ってもらい、ボクは70騎を連れて鵯越ひよどりごえをすることになりました。70騎くらいが指示が通るちょうどいい人数じゃない?


 鵯越はよく浮世絵になる部分です。逆落さかおとしという崖から馬で降りるヤツです。ただし、鵯越は崖ではないそうです。だから、崖から降りたのなら一の谷の近くにある鉄拐山てっかいさんではないかとネットに書いてありました。


 写真を見ましたが、こっちですね。

 こんな感じの場所を降りました。


 場所はともかく、『逆落し』はやりました。

 道案内の鷲尾わしおの三郎さぶろう義久よしひさを味方に引っ張り込み、崖の上を目指しました。降るより、登る方が辛いかもしれない逆落し。それくらい辛かったです。


 侮っていた逆落し。

 登るの大変だっただけあって、すごいです。


 なんでここを馬で降りようとかって思うわけ? 意味わかんないよ。バイクとか自転車とかで崖を下るようなものでしょ? 向いてないと思うんだけど。


 緑の草の向こうに見える、海。

 綺麗な青でした。南国チックな白っぽい海岸も良い感じです。


 とても素晴らしい景色が広がっていました。


―― ここで海、観ていていい?

 どちらかといえば、そんな気分でした。


 でも、そんなことをしていたら、範頼兄ちゃんが困ります。

 崖の下では源平が戦っているからです。


「はじまってるね」

「そうですね」

 武士たちの戦う声や音が聞こえてきます。


「なんで?」

 思わず仲間の顔を見ました。


「ここまで来るのに時間がかかりましたからね」

 お前が悪いとまでは言われませんでしたが、疲れたような顔で言われました。


 そんな簡単に来られるわけありません。

 もっと前もって出て来るとか、道案内を直前じゃなくてもっと前に探してくるとか、準備を整える必要があったと思います。


 お前らに手柄など立てさせてなるものかとばかりに、めちゃめちゃ遠回りさせられて、へとへとになって着いたと思ったら下はなんか大変な感じになってました。


 ボクはその様子を見て、ここまで来るのは大変だったけど、これからここを降りてアレ(下で戦っている人たち)に加わらないといけないのか……。と思いました。


 こういうのって、待ち伏せして敵が来たらワーッと行くって感じじゃないの? それがからめ手なんじゃないの?


 ボクは70騎の精鋭を連れて、怖ろしい逆落しをすることになりました。

 これが降りれなくてもほとんどの部隊が下に居ます。


 降りなくてもいいんじゃないの?

 だってたったの70騎だもの。




※ Wikipedia「一の谷の戦い」,神戸市文書館「福原遷都」

  を参考にしました。

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