第12話 一の谷の戦いに至るまで

 義仲くんを討ち、それから範頼兄ちゃんとボクは、平家も倒しに行きます。

 そういう指令が来ていたので。

 兄上が後白河法皇様に言われたようです。


 平家が都落ちするとき、高倉天皇の奥さんだった徳子とくこさんとそのお子さんの安徳あんとく天皇を連れて行きました。清盛様の娘と孫だから、平家の人でもありますが、ありえません。信じられない感じです。天皇を連れて行っちゃったんです。


 だから、まだ幼いとはいえ天皇である安徳天皇を保護し、天皇である証の『三種の神器』(八咫やたのかがみ八尺瓊やさかにの勾玉まがたまあめの叢雲むらくものつるぎ草薙くさなぎのつるぎ))を奪還するようにと言われました。


 これは一大事です。とんでもないことです。

 神戸が首都になってしまったようなものです。


 三種の神器は令和になってすぐ、天皇陛下が継承した物です。ゲームなどにもちょこちょこと顔を出す、伝説のアイテム。その伝説のアイテムが実在していることが驚きです。


 現在も箱に入っていて、それを直接見た人がいないというのがまたファンタジーです。ちょっとだけですが、その伝説のアイテムに関わってました。三種の神器は歴史と現実のつながりを実感できるアイテムです(アイテム言うな。不届き者めが)。


 ボクも見ていません。見つかったはずの八咫鏡と八尺瓊勾玉は見せてもらえなかったし、天叢雲剣は見つかりませんでした。天叢雲剣(草薙の剣)は別の場所に保管していたそうです。


 それを聞いた時「はぁ?!」と思いました。

 驚愕です。あれだけ探してなかったのに……。という気持ちでした。


 天叢雲剣は探しても探しても見つからなくて、でも八咫鏡と八尺瓊勾玉が見つかったと知らせを受けました。絶対に見て触っている人がいるはずなんだけど、ボクには知らせだけが届いて、実物はしっかりと入れ物にしまわれていて見てません。


「開けて見せてよ~。ちょこっとだけ、ねっねっ」

と言ったのに、見せてくれたのは空の剣の箱の中だけ。


「見たいよ~、あるんでしょ? 三種の神器ぃ~」と言ったら

「厳重に封印しました。開けたらまた封印するの、大変なんです!」と、見せてもらえませんでした。


 怖かったです。

「はい……」と言うしかなかったです。


 煙に巻かれるように、八咫鏡と八尺瓊勾玉は京に持って行かれました。ある意味なんかすごかった。


 話を戻します。




***




 平家は摂津(現在の大阪と神戸の間)の福原に城郭を構えました。福原は前が海、後ろが険しい山の東西に伸びた場所です。東に生田の森、西に一ノ谷がありました。


 ここで一ノ谷の戦いがありました。


 清盛様は、この時すでに亡くなっていたそうです。清盛様と戦わなくて済んだのは、ボクにとってよかったのかもしれません。


 清盛様は義仲くんが京に入る前に亡くなっていたそうです。

 肺炎のような病気だったようですが、『平家物語』にはとんでもない症状が書いてありました。


 かなりの高熱が出たようです。

 水風呂に入れてもたちまちお湯になって冷やすことができなかったそうです。


 清盛様に少しずつ水をかけると、ジューという音を立て、水玉が飛び散ったそうです。それでも根気よく水をかけ続けると、いったん水玉になった水が炎となって燃え上がり、黒煙が室内にあふれ、熱くて近くに寄れなかったとか。


 ……水が燃えるって油でもかけたの? エタノールの気化熱で冷やそうとして燃えたとか? でも、エタノールだと黒煙にはならないよね? 水じゃない物をかけてるよね? ちゃんとしたお医者さん呼んだわけ? 高熱をデフォルメしてるのかもしれないけど、やりすぎでしょ? 熱が上がったからと言って生物からこんな高熱出ないよ。発熱じゃなくて、燃やしてないか?


 それはともかく、清盛様は熱の病で亡くなられたようです。



 それで、平家は福原で清盛様の法要をしていたそうです。後白河法皇は、清盛様の法要をしていた平家に、和平を勧告する使者を送ったそうです。


 ……………………

 ……………………


 そこを攻めたのですね? ボクたち源氏は……。

 やけに浮足立ってるとは思いましたが……。


 ボクとしては、法要に参列したかったです。元義理の息子だし、お世話になっていたので。まだこの時なら「遮那王(幼名)です。お久しぶりです」と言えば、参列させてもらえたかもしれません。


 源氏として戦っているなんて、思われていなかったと思います。

 やっぱ無理か。平泉に行く前にやらかしてるし。


 まだこの時は「義経? 誰?」という感じだったはずです。

 平家とは戦ってなかったし。


 後白河法皇は、平家には和平の命を下し、源氏には平家追討を命じていたそうです。安定の法皇様なんですけど。


 でも、それを批難することは、ボクにはできません。



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