第9話 平治の乱の後の20年くらい
平治の乱の後、その中心人物だった父上の息子は、ほとんど清盛様に突き出されました。四男の義門兄ちゃんは生死不明ということは突き出されていません。誰かに守ってもらってたらいいなあ。
清盛様に突き出された兄弟のうち、悪源太兄ちゃん以外は処刑されなかったようです。嫡男の兄上が伊豆、五男希義兄ちゃんが土佐、範頼兄ちゃんが
当時(平治の乱が終わり、平家の世になった頃)、
さらに、一族で高い位に着いていたので給料をもらい、税金払いませんという生活をしてたそうです(だからあんなに態度がでかかったのか)。
その上、宋と貿易をして財産を貯めまくっていました。宋は中国の王朝なので、船を使っていました。平家はこの時に船の技術を手に入れています。
源氏にはそういうノウハウがなかったので、海戦で苦戦します。
海など見たことないのに海の総大将にされたボクって、やっぱり源氏からいじめられてないか?
「苦手だからってボクに押し付けたんだよね。『源氏の総大将はあなたなのですから、あなたがやるのが当然です』って言ってさ。ボクは山育ちなんだよ。海なんて瀬戸内で初めて見たんだよ。なんとかしちゃったけどさ、ボクの仲間が」
えっと、国としての収入がほとんど平家に入ってしまっていたので、朝廷は橋や道を直すこともできません。だから、お金持ちの平家にお願いして直してもらっていたので、朝廷も平家の言いなりだったそうです。
二十年くらいでこれができてしまったようです。
それで、清盛様は娘の徳子さんを高倉天皇にお輿入れさせて、生まれた子を安徳天皇として即位させます。しかも、一番エライ後白河法皇様を幽閉したそうです……。
この辺りが『平家にあらずんば人にあらず』の理由のようです。
「平家は武士なのに、平安貴族の藤原氏と同じことをしちゃったんだよ」と小学校の先生は言っていました。この説明、とてもわかりやすかったです。
「源氏は武士として、新しい物を作った」
それが将軍様です(なんか違う物に聞こえます。征夷大将軍です)。源氏はそれまでの朝廷とは違うヒエラルキーを作りました。
それまでのシステムを踏襲して最高位まで上り詰めたのが平清盛。でも源頼朝は鎌倉に天皇中心ではない武家中心の世界を作り、政治の中心を変えてしまった。
当時からすれば、武士が太政大臣になれるなんて異例中の異例の大快挙です。でも源氏はそっれをひっくり返してしまったと習いました。
***
平治の乱が終わって、20年とちょっと。
その間のボクの気持ちをちょこっとだけ。
パパの9人の息子のうち、生き残ったというか生かされた6人と、もしかしてどこかにいたかもしれない1人。源氏の棟梁の子として、平家への恨みがじわじわと蓄積していきます。
なのかな? 別にパパの子だということは、けっこうどうでもよかったかもしれません。強く「パパの仇を討つぞ!」と思っていたわけではないです。ノリでは言ってたかもしれないけど。
清盛様が父親じゃないの? でショックを受け、一条長成様を義理の父親に持っていて「弟、長成様の血が入ってていいなあ」みたいな感じでした。ボクだけ長成様の血が入ってないからひとりで平泉なんだとも思いましたが、平泉では秀衡さまが父親のように接してくださって、ぬくぬく暮らしていました。ビバ、金の産出地でした。
20年も経つと平治の乱とか保元の乱とかどうでもよくなっています。
だから兄上はボクたちとは少し違って、平家の人たちを厳しく処刑していたのかなとも思います。命くらいは助けてあげてもいいんじゃないかな? とボクが思っても、兄上は違っていました。父上を知っているかいなかが、大きな違いだったのかなと。
ボクが受けた平家の人たちからの仕打ちだと「殺さなくてもいいんじゃない?」というレベルだったのかもしれません。
でも平家の人たちは大嫌いでした。
パパのことがなかったとしてもめっちゃムカつく人たちです。
「いい加減にしろよ。何? その偉そうな態度!」
という人が多かったです。
もちろん、違う人もいました。
平家方でも優しい人はいます。
でも、なぜかそういう人は目立たない。
『善いことを表立ってするのははしたない』と考えていたような気がします。よいことは、地味に目立たなくするのが品のある者がすることです。みたいな。
でも悪いことはやけに目立ちました。歩いているだけで無謀な態度をする平家方が嫌でも目立ちます。そして、そういう噂がまことしやかに流れてきたりします。
ボクの場合、噂と実際に自分が受けた仕打ちです。平家の人たちの悪い噂を聞くと
「やりそうだよね。ボクもひどい目にあったよ」と言って、自分の体験談を話すと思います。
本当に意地悪だったんです。
カチンとすることを言われ、こっちが言い返すと「なんだ生意気!」みたいな小学生の争いみたいな感じですけど。それがけっこうエスカレートする感じで、京の都にいられなくなりました。
もしかすると母上が、『この子は京の都に置いといたら命がいくつあっても足りない』と思って平泉に送ってくれたのかもしれません。ママ、ありがとう。
大事な息子を遠く離れた平泉に預けるなんて、辛かったんじゃないの? そうでもない? いなくなってせいせいしたとか思わないよね、ママ。ねえ、違うって言って。
それは冗談ですけど。
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