3 屋島の戦い

第30話 『扇の的』を読む前に

 ボクが平家と戦った大きな戦いは、一ノ谷の戦い・屋島の戦い・壇ノ浦の戦いです。だから、知っていることを含めてお話できるのは、この辺りです。あとは聞いたことを思い出したり、調べたりしないといけません。


 一の谷の戦いは『敦盛の最期』

 屋島の戦いが『扇の的』

 壇ノ浦の戦いは『先帝入水』


 古文の文章が手に入っているのがこの3話で、古典の文学全集などで補足して、あとはボクが覚えてることをちょこちょこと入れて解説する予定です。


『敦盛』が終ったので『扇の的』をざっと読んでみました。

 自分が出ていると、解説しやすいです。


 敦盛の最期はほとんど直実さんだし。

 扇の的は那須なす与一よいちさんだけど。


 ボクが習ったのは『扇の的』でした。

 その時はピンと来なくて成績は悪かったです。


 それに、自分が出てることに全く気付かなかったです。

 今読んで『これ、ボク出てるじゃん』と驚いた。敦盛の最期にもいましたけど、それは高校の教科書の方にちらっといただけだし。


 いかに授業をちゃんと聞いていなかったというか……。

 まるで、記憶にフタをするかのようにわからなかったです……。


 カリキュラムに問題があるんじゃないのか? と、他人ひとのせいにしてみる……。敦盛の最期と同様に扇の的に覚えが(あまり)ない……。800年前にできた娯楽用の物語だし……。平家物語は平家の供養のためでもあったそうです(ネット調べ)。どう考えてもそうだろ?


 だから『耳なし芳一ほういち』みたいな話があるわけです。あのお話では、平家の怨霊が芳一に平曲の『先帝入水』を好んで語らせ、皆で大号泣をします。この世で最も怖いホラーです。ボクにとっては悪夢のような怪談です。『三枚のお札』も怖かったけど

 今、思うとこんなに怖い怪談はありません。


 お寺に身を寄せていた芳一が、平家の怨霊に平曲を聴かせ、怨霊が涙を流して喜び、芳一を仲間にしようとしました。それで体中にお経を書いて逃れようとしましたが、耳にお経を書くのを忘れました。迎えに来た怨霊は耳だけ持って行きました。助かった芳一は、それをネタにしてお金を稼いだハッピーエンド(?)です。


 みんなで楽しんで怨霊を供養するという流れが見えます。





 また話がズレました。


 屋島の戦いは、ちょっとキツかったんです。

 記憶から消してしまいたいくらい。


 でも、忘れちゃいけないです。

 大事な友人との思い出まで、ないものにしたらいけないよ。


 屋島の戦いは、辛い思い出しかないです。

 思い出すだけで、涙出てくるし。


 人は、忘れたいと思うことは記憶から消せます。見ないように、思い出さないように。あたかもなかったかのように。屋島の戦いはボクにとってそういう戦いでした。と、言い訳してみる。


 屋島の戦いはけっこうヤバい戦いで、何度かヒヤっとしました。改めて調べてみると、けっこう綱渡りな戦いではなかったのかと思いました。圧倒的に平家側の数が多かったし。もしかすると、源氏が負ける可能性が最も高かったのかもしれません。


 でも、ボクとゆかいな仲間たちなら、屁でもない数の差です。

 源氏は負けなかったし、ボクも死ななかった。被害もほとんどありません。


 ただ、心情的には、大打撃を受けた戦いです。

 佐藤嗣信つぐのぶが、討ち死にした戦です。


 一騎当千の仲間のひとりです。

 仲間が死なない作戦は、いくらでも考えられたはずなのに、それができませんでした。1000対80で、味方がまったく被害を受けないのは、それまでが幸運だったのかもしれません。


 嗣信は、ボクをかばって亡くなりました。

 とても強くて、とても頼りになる仲間でした。


 扇の的の前後の話を読んで、忘れていたことを思い出しました。


 自分を守るために、忘れることは悪くないです。

 でも、いつまでも忘れたままでは、ダメじゃないかのかな? と、思ってみる。



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