第135話
チャーリーが音信不通になり、待機していた二部隊の内、エコーが母屋に突入した。
数は他の隊と同様に六人。離れ屋に向かったデルタ、母屋の東西からそれぞれ攻めたベータ、チャーリーと別ルートを取るため、南から雨戸を破って侵入、廊下を進んだ。
すでに一部隊がやられたため、慎重に進む――
――突入より数分後。
エコーは身動きが取れなくなっていた。
まず、先頭を担当していたエコー3が、突如床下に消えた。
床に開いた穴を覗けば、無数の竹槍で串刺しにされたエコー3の姿があった。
残りの五人は反転しようとしたが、今度は来た道の床が抜けた。幸い、落ち掛けたエコー5をエコー6が掴んで事なきを得た。
前後ともに落とし穴に塞がれた形となり、限られた範囲を警戒しながら右往左往しつつ、リーダー格が指揮車と連絡を取る。
その様子を、壁の中にある隠し通路から覗き窓で見ていた
一緒にいた侍女に指示を出し、壁の仕掛けを作動させた。
美妃が背を付けていた壁が動く。
回転する壁から廊下に出た美妃は、弦の残りを引き、矢を放った。
先頭の隊員を矢が貫く。
二人目が短機関銃を向けるが、その時には美妃が二本目を弦につがえて伏せた。頭上を弾丸が通過するのを感じながら、発砲炎目掛けて射る。
短機関銃を撃っていた隊員の首に、深々と矢が突き立った。
後方を警戒していた敵が美妃に狙いを付ける前に、彼女は再度回転扉で壁の中へ消えた。
「気を付けろ! 壁の中に通路が――」
リーダー格が叫ぶ声が壁越しに聞こえる。
美妃は弓を侍女に渡し、代わりに刀を受け取った。刀身が三尺(九〇センチ)近い太刀だ。美妃はすぐには抜かず、鞘を左手で握って保持したまま、男達のちょうど真横の位置まで来る。
壁の一部が外れると同時に、左親指が鍔を弾いた。板の開いた空間から、男達の前に躍り出る。
右手で柄を握ると、勢いよく刃を鞘走らせた。
等間隔で並んでいた、二人をなぞるように切っ先が一閃される。振り切った瞬間、二人の首からほぼ同時に血飛沫が舞った。
最後に残ったリーダー格が銃口を上げる。
しかし、その時には、美妃の太刀が、片手一本で振るわれていた。狭い通路で刃をぶつけぬように、頭上には上げずに眼前に柄を握った右手を持ってくる。
最小限の動きで切っ先が振り下ろされた。
まず、男のかぶっていた暗視装置が真っ二つに切れて床に落ちた。
一拍遅れ、両断した眉間から鮮血が噴き出す。
美妃は血振りをして刀を鞘に納めた。
辺りに、男達の流した血のにおいが籠もる。
美紀が壁の通路に戻った際に、侍女以外の気配がした。
「先生」
「こちらは六人仕留めた。そっちは?」
「こちらも六人仕留めました」
「なら、計十八人か」
大部隊だな、と太刀掛が呟く。
「指揮を執るための本隊がまだいると思うが……」
そこへ、新たに侍女が駆けつける。
「太刀掛様、奥様。道場側より十二人、向かっています」
「一気に出てきたな」
侍女の報告に二人は少し考え、
「道場に誘い込んで――」
「一網打尽にしましょう」
と、次の方針を結論づけた。
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