第44話
「さて、
レイモンドが
「今、
そこに書かれていたのは、先程のヤクザ達の事務所の住所だ。
「しかし、喜三枝さんも鬼ですね……金払っておいて、結果として潰すんですか?」
「ヤクザにあんな大金渡ったところで、碌な使われ方をされないでしょう? それに、
「ある意味下手なヤクザより怖ぇや」
レイモンドが肩をすくめる。
「まぁ、さっき暴れ足りない分やらせてもらうわぁ」
駿河はやる気満々のようだ。
「武器は?」
「車の中に入ってるわ。拳銃なら、全員分あるはずよ」
「用意いいですね」
あれこれ言いながら、MDSIの面々は準備をし始める。
「で、どういうつもりなんです、美妃さん?」
「なんのことでしょう?」
盛り上がっている彼らから少し離れたところで、勇海は美妃に問う。
「とぼけないでくださいよ。貴女なら知っているはずだ。マコトと……あの渥美瞳って娘との関係をな」
美妃が完全に口を紡ぐのを確認し、さらに続ける。
「皮肉なもんだな……自分を助けてくれた人間が、まさか自分の恋人を殺したとは、彼女は夢にも思うまい……一体、いつの間に出会ったんだ?」
「私の訓練受ける前だそうよ。彼が婚約者の墓参りに行った際に、同じ墓地で彼女の恋人は眠っていた。彼女は『
「そして、『
勇海は真智明をMDSIにスカウトするにあたって、生まれからこれまでの経歴を調べていた。
当然、彼が死刑になる切掛けとなった事件も。
死亡した
「彼女を会社に入れるのは、まだ分かる……だが、マコトの連絡先を教えたのはどういうことです?」
「どういうことと言われましても……彼なら彼女と面識あるのですから、連絡の敷居も低いでしょう?」
一瞬、本気で言っているのか、と勇海は美妃の正気を疑った。
彼女と関われば関わるほど、明智の精神は罪悪感に責められる。根が真面目なだけに、その消耗は激しいものになるに決まっていた。
「だが、あいつは……」
「彼は『明智真』よ」
勇海は絶句する。
「渥美さんの恋人を殺したのは、この前死刑になった『真智明』ではなかったかしら?」
「あ、あんたは……」
勇海の声が震える。
あくまでも、明智と真智は別人であると言い張るつもりか。確かに、データ上はそうだ。しかし、その心は別人に為り切れるわけがない。
「こんなことで追い詰められているようでは、この先思いやられるだけですよ?」
反論を必死で考える勇海に、美妃が止めを刺す。その眼は冷め切っていて、まるで家畜を見ているようだ。
その様に、勇海は戦慄を覚える。
「おい、ユーミぃ、行くぞ!」
「あ、あぁ……」
レイモンドに呼ばれ、勇海は車に乗り込む。
車が出る前に見た美妃は、すでに関心を失っていたようだった。
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