第30話 グリフィンとの戦い・2
(攻撃が、効かない……!)
魔王の城で対峙するグリフィンは、こちらを威嚇するように睨みつけてくる。
その体からは紫紺の煙が立ち上り、物理攻撃も魔導攻撃も瞬時に回復してしまう。その事実に気付いたヴァイス達は焦っていた。
*
ヴァイスは冷静になろうと努めながら、必死に頭を回転させた。
(攻撃が効かないのは、強力な
カッツェやノエル、レイアが攻撃した際、グリフィンの体には一時的に傷がついた。もし魔導障壁で攻撃を弾いたり軽減させているのならば、そもそも傷は付かないはずだ。傷が勝手に癒えていくのもおかしい。ということは、魔導障壁の線は外される。
では白魔導による自動回復はどうだ――? ヴァイスはそれも否定した。白魔導による自動回復であれば、傷口は白く光を放ち、攻撃された者自身の自己治癒力を高める形で回復されるはずだ。怪物の体からは紫紺の煙が立ち上っていて、まるでその煙が傷を埋めるように修復していた。一般的な白魔導の術とは異なる現象だ。
バベルの塔で対峙した魔物のように、瘴気によって傷が回復しているのかとも一瞬考えたが、この城の中には瘴気は漂っていない。回復するからにはどこかからエネルギーを得ているはずなのだが、その源が見つからなかった。
*
(もしくは……)
もしもグリフィンが通常の生物ではないとしたら?
思考を切り替え、怪物が現れたときのことを思い出す。グリフィンは、何も無い空間に煙が集まって実体化した。空間に物体を出現させる手段は、主に二つある。――召喚術、もしくは幻術。
召喚術は、呪文によって異次元空間から霊的存在を呼び出して実体化させる術だ。しかし呼び出すのに通常は魔方陣を描く必要があり、呼び出された者は魔方陣の見える範囲から動くことはできない。グリフィンが現れた場所に魔方陣は描かれていない。これも違う。
幻術は、惑わしの森のようにあたかも本物のような像を映し出すことができる。しかし幻術で現れた怪物であれば、触れることはできないはずだった。グリフィンがバランスを崩して倒れたり、レイアが背中に乗り上がったことを考えれば、怪物は実体を持っていて幻ではないと言える。
*
最後にヴァイスは、王が語っていた王宮の侵入者の話を思い出した。
王宮の侵入者は、依代人形を遠隔で操っていたと言っていた――それだ! 依代人形を使った
(なるほど、傀儡操り……ですか)
仕掛けはわかった。ではその
傀儡兵は依代となる物体を破壊するか、術者本人――この場合はこの城の主――を倒すまでその動きを止めない。術者の居場所がわからない以上、依代を探して壊さなければならない。
=========================
◆冒険図鑑 No.30: 傀儡操り
操り人形のように物体を遠隔で操ったり、魔方陣等で人形に命令を埋め込んで自立稼働させる術を「傀儡操り」と呼ぶ。
実行するには高度な魔導の知識と技術が必要なため、現在ではほとんど扱う者もいない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます