第27話 結界解除・3
結界を構成する光の精霊達は、突然の侵入者に驚き戸惑っていた。
未だかつて、バリアに魔力を流し込んで中和を試みる者などいなかったはずだ。ヴァイス自身もこんな方法を試したのはこれが初めてであり、成功する自信などなかった。だが、今はどんな方法でも試してみるほかはない。
ヴァイスは精霊達に向かって思考で語り掛けた。
(――私達は、あなた方を傷つけるつもりはありません。なぜ私達を拒むのですか?)
精霊は、ヴァイスの問いかけに答えてはくれない。ただぼんやりと拒否の感情だけが向こうから伝わってきた。
(あなた方の主と、話がしたい。
精霊たちの気配からは、迷いが感じ取れた。
(あなた方の主は、きっと悪い人ではない……けれど誤解されている。私はその誤解を解きたいのです)
ヴァイスと精霊は、明確な言葉で会話をしている訳ではない。精霊はただ、彼の思考を読み取っているだけだ。
ヴァイスが発した言葉の意味を精霊達が理解しているかはわからない。ただヴァイスは、幻覚の森とこの結界に触れた印象から、その主と直接的な対話を望んでいた。
集中を維持したまま、じっと精霊の答えを待つ。
もしもヴァイス自身の魔力か集中力のどちらかが途切れれば、いわば「通訳者」を失ったこの対話自体が終わってしまう。そして結界の主が再び対話に答えてくれるかはわからない。だからこそ、このまま集中を解く訳にはいかなかった。
しかし時間が経てば経つほど魔力と体力の消耗は激しくなっていく。
先ほどよりも頭の痛みが増してきて、頭が割れそうに痛い。
必死にその痛みに耐えていたヴァイスだが、このまま限界を超える魔力を流し続ければ、その過剰な魔力に耐えきれずに体が内側から焼け落ちてしまうかもしれない。脳裏にぼろぼろに焼け落ちた木製の魔導杖の
*
じわじわと、肉体の限界が近づいていた。
だがヴァイスは諦めなかった。彼の肩には今や父と兄、国王、そして王都の民の命運が掛かっているのだ。ここで退くわけにはいかない。
それに何より、ヴァイスがこの城の主、"魔王"と呼ばれる存在と直接会って話をしたいと思うのには理由があった。王都の民と"魔王"との間には、何か大きな誤解がある――。森の幻術と結界に触れたヴァイスは、直感でそう感じていた。
ヴァイスにとって永遠とも思われる沈黙の時間が流れたとき――
ついにその
結界の内側から、精霊とは異なる声が頭に響く。その声は結界を通してヴァイスの脳内に直接語り掛けてきているようだった。
『――エルフの若者よ、入れ。ただし、「王都の者」を城の中に入れてはいけない』
その声が響くと同時に、目の前にある見えない壁が消えたのがわかった。
*
「――っ!」
「うわぁ、ヴァイス大丈夫?!」
突然目の前の支えがなくなって、バランスを失ったヴァイスは地面に膝をついていた。後ろのノエルがそれまでの集中を解き、心配した顏で覗き込んでいる。
「結界が……消えた……」
後ろで兄ブラウと父ゴルトが
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◆冒険図鑑 No.27: 攻撃系魔導師
ヴァイスの父ゴルトや兄ブラウのように軍隊の中で攻撃に特化した魔導師には、魔導術発動時の瞬発力が求められる。強力な魔導術をより短時間で発動する必要があるのである。
ゆえに、いかに省略した
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