第5話エロいクラビングナイト、その2

「みんな聴いてくれ、紹介しよう、森のヒグマやキタキツネも踊らせるテクノの女王……理央りお。彼女はあと数日もすればこの街を去り、東京へ旅立つ。ラストナイトの今夜、理央の音楽に身をゆだねよう、理央の音楽と同化しよう、理央と俺たちは世界一だ……みんな、楽しんでくれ」

 壁面へきめん改造かいぞうして作られたDJブースで準備している理央のとなりには珍しくMCをするひげづらクラブのオーナーが立っている。ホールの客たちが歓声をあげる。


 暗闇に、コンピューター制御せいぎょされたいくつものLEDスポットライトが一斉いっせいに今夜の主役を探し始めた。一方赤いライトにらされたDJブースではヘッドホンを首に引っかけた理央が卓上たくじょうの機材をいじっている。

 どこからともなく静かに、そしてやさしく、ピアノのメロディーが聞こえてきた。誰かにそっと背中をキスされているようだ。やがてそこにエレクトリックな音が加わっていく。

 アンプから野太のぶとい声で10からのカウントダウンが始まった。

 僕は内臓をふるわせる重低音じゅうていおんに身をまかせステージ上の理央を見つめていた。彼女は小気味こぎみよく右腕でリズムをとっている。そしてヘッドホンを少し耳からずらして装着そうちゃくした。最新のDJ機器を操作そうさして音楽をあやつる理央はSF映画に出てくる宇宙船のパイロットのようだった。

 そしてカウントダウンする男の声が「ゼロ」と判決はんけつくだした。

 それと同時にちのビートが……ちのビートがクラブ全体をらす。理央を見やるとすべての音をコントロールしながら恍惚こうこつとした表情で天井てんじょうあおいでいる。テクノミュージックと同化する理央。快楽の表情を浮かべる理央。


 その時突然僕はひらめいてしまった。今、僕が聴いている音楽は理央のSEXなのではないか。理央がプレイしているテクノミュージックは彼女がしてほしいSEXを象徴しょうちょうしているのではないか。オープニングのピアノのように愛の行為は始まった。ベッドの中でやさしく全裸の理央を抱きしめ、足から徐々にキスをしながら太ももをなめ上げていく。そして最初は大事な部分をスルーして腹部を愛撫あいぶする。右手で理央の乳房ちぶさ乳首ちくびをいたずらしながらくちびるは脇腹わきばらから胸へ。再度、今度は乳房と乳首をしたで遊ぶ。やがて理央と激しいディープキスをかわわす。唾液だえきで顔がよごれる。

 理央の大事な部分にキスする頃には彼女のあそこは熱くそしてれていて、せつない吐息といきが聞こえる。

 テクノミュージックのちビートは明らかに性行為せいこういのピストン運動を表している。しかし僕は動かなかった。熱くかたくなったペニスを理央の肉体の中に挿入そうにゅうしたまままったく動かずに抱きしめあって理央と激しいキスをした。理央の中心でペニスが脈うつ。理央が脈打っているのもわかる。

「頭がおかしくなる」と耳もとで理央が言ったような気がした。そこで僕はわれに返った。

 ステージのDJブースを見ると理央はノリノリでテクノミュージックをプレイをしていた。飛んだりねたり。ビートに合わせ軽くダンスしている。客たちも飛んだりねたり踊っている。

 最終的に音楽はぶっきらぼうに終わった。まるで相手の男が突然射精をしててるように。そうして客の歓声。


 ……理央はこんなSEXをするのか。

 僕は理央のとんでもない秘密を知ってしまった。


 

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