第50話 驚きの事実
楽蔵先生と俺と瑞菜でお酒を楽しみながら色々なことを話した。
死んだように生きていた頃の瑞菜からの感想は結構心に来た。
死んだ魚のような目でロボットみたいに毎日同じ時間に同じ行動をし続けていたらしい……
「あまりに強いショックの連続が琉夜くんの心をズタズタにしてしまったのじゃろう……あの頃はカウンセラーさんからの報告を聞く度に胸が締め付けられる思いじゃった……」
「あの頃は深い水の中で沈んでいるような感じです……思い出そうとしても、よく思い出せないですね……」
「無理に思い出さなくていいんじゃ、今が何よりも大事なんじゃぞ」
「はい。今は瑞菜もいてくれます。俺を必要としてくれる先生も、スタッフも……仲間がいますから……」
リフクエが見え隠れしてしまうのがちょっと恥ずかしいけど、あのゲームのおかげで俺は変われた。
「仲間、なかなか言う台詞じゃないが、いいものじゃな。
ワシも最近趣味を見つけてな、それがなかなかに楽しくてな~。
今日も明日の学会で弟子の発表がなければの~。
まぁ、おかげで二人に会えたわけだから、あやつには礼を言わねばのぉ」
「楽蔵先生の趣味って言うと釣りでしたっけ?」
「最近はもっぱらリライブファンタジークエストじゃ!
知っとるか? いやー最近のゲームは凄いのぉ!」
「え?」
「え?」
「ん? どうしたんじゃ? 知らんのか?
いいぞあれは、是非二人もやるといい!」
「いや、やっております。瑞菜も……」
「……まさかのぉ……リュウヤとミーナ?」
「な!? ラック!?」
「おかしいでしょ! すごすぎない? まさかケアも近くにいるの!?」
「い、いや、そのケアってのが弟子じゃ。なんと……まさか……
ハッハハハハハァー!! 笑うしかないの!」
「ホントに、ありえますかねこんな偶然!」
まさかの事実の発覚だった……
そこからは火がついたように皆飲んで食ってバカ話をして、楽しい時間を過ごした。あんなに笑って面白おかしく楽しい時間を過ごしたことは初めてだった。
「いやー、すまんの、こんな時間まで……」
ふらつく楽蔵先生を支えながら先生の部屋まで送り届けた。
「楽しかったねー」
瑞菜もご機嫌だ。
「そうだね、あんなに笑ったのは初めてかも……」
「私、楽しそうな琉夜を見るのは本当に幸せなんだー」
「瑞菜のお陰で俺はいつも幸せだよ」
「んふふふふ……」
瑞菜の柔らかな膨らみが腕に押し当てられる。
浴衣効果も合わさって、効果は抜群だ。
「瑞菜……お風呂一緒に入る?」
「……いーよ」
少し早足で部屋に急ぐ。
[飲酒後の入浴は甚大な健康被害を起こすことがあります。
決して行わないように注意してください]
先に軽く汗を流して湯船に入る。
目の前に広がるのは満天の星空と、真っ暗な山。
そして谷あいの控えめな街の光だ。
露天風呂の照明も間接的な照明で全体としての雰囲気を壊さないように配慮されている。幻想的な優しい光がロマンティックな空間を演出してくれる。
「おまたせー……」
バスタオル一枚で自分の体を隠す瑞菜が入ってくる。
隠すことによってその見事なスタイル、ボディーラインは強調され、より魅力的に映している。
「ちょっと恥ずかしいねやっぱり……」
軽く湯をかけバスタオルが身体に張り付けば、もう俺の中の欲望が氾濫を起こしそうになる。
「もう、見過ぎだよ……」
湯船に入ってくる瑞菜に手を貸す。
「いや、綺麗すぎて……」
「嬉しいけど、やっぱり恥ずかしーよーあんまり見ないでー……」
それは、無理な相談だ。そのまま瑞菜を近くに引き寄せる。
「うわー、凄い綺麗だねー……空がこんなに明るい……
向こうではお目にかかれ無いねー」
「瑞菜は地元こっちなんだっけ?」
「小さい頃にあっちに出ちゃってるから、こっちはお父さんとお母さんの墓参りの時だけだね。あの、街灯も少しさびしい街が、一応の故郷になるよ」
「素敵なところだね……」
「何もないとこだけど、何もないのがいいってのは、今ならわかるかな。
でもそれも、遠くに住んでるからかもね」
「俺はここに来てたくさんの素晴らしい物に出会ったよ、食事とかお酒とか」
「食べるものばっかり」
「でも、ここがなければ瑞菜も生まれてないから、俺は感謝しか無い!」
「なーにそれ……」
瑞菜が俺の肩に寄りかかってくる。
タオル越しに触れる瑞菜の柔らかい身体が、俺の芯に火をともしていく。
「瑞菜……愛してるよ……」
「……私も……」
貸し切りの露天風呂は、とてもいいものだ。
それはもう、素晴らしいものだ。
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