最終語り手:長門有希
私以外の人物が文芸部室へ辿り着くまでの時間は現時刻から約十五分後と予測されるが、月に一、二度例外としてこの時刻より先行してやってくることがある。
その多くは三つに分岐する。
涼宮ハルヒがバニーガールの衣装を持ち歩くパターン、涼宮ハルヒと朝比奈みくるが同時に現れるパターン、古泉一樹が閉鎖空間発生の為早急に帰宅する際に一声かけに来るパターンである。
だが今回はそのいずれにも該当しない彼女がきた。
「やっほー、やってきたにょろよーん、あれ?有希っ子だけっさ」
この時代の朝比奈みくるの友人、古泉一樹の言葉を借りると鶴屋家次期当主令嬢。
私は回答の為、頷く。
こくり、と。
「そっかーならしゃーなしね。あ、そうだ!」
彼女は涼宮ハルヒと同様に表情が様々に変化する存在だが、今回のように視線を虚ろに口角を上げる動作は『不適』という言葉が適切。
「ところで有希っ子、これ。なにか解るにょろ?」
彼女が持ち出したのはインディアン、または山姥、または鬼と呼ばれる架空の生物を模倣したと予測される仮面。
地球人類の僅かな民族はそのような仮面を着けるが、涼宮ハルヒや朝比奈みくると同様、彼女は日本人と呼ばれる類に属する種の為、そのような仮面を持っている理由が見当たらない。
私は回答の為、頷く。
「じゃーこ・れ・を!ハルにゃんたちが来るまでずっと着けてみるってのはどうだい?」
私は仮面を装着される。
「よしこれでいいっさね。じゃーねー有希っ子ー」
彼女は涼宮ハルヒと同様に時折周りを自身の願望が望んだように巻き込む性質を持っているが、間違ったことは言わないと彼から聞いている。
イレギュラー因子が複数混じっているが、今回の対処法として最適だと思われるものを選択。
私は彼女の言う通りに行動することにした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
これが真実。
「そう……だったのか長門」
朝比奈みくるが倒れた際に、私が語った話。
「さすがは鶴屋さんね!面白いこと考えるわっ」
そう口にした涼宮ハルヒを除く人物は溜息をついていた。
涼宮ハルヒの夢仮面 結崎ミリ @yuizakimiri
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