第四語り手:朝比奈みくる

「あ、あのう…遅れてすみません」


「あ、みくるちゃん!ちょうど良い所にきたわっ」


「え、あっわ!」


 私は涼宮さんに腕を引かれそのまま部室の中心部までたどり着きました。

 そしてそこで信じられない光景を目の当たりにするのです。


「ひえ、えええ……」


 そこには鬼のような陰陽師のような老婆のような見たこともない化物がいました。何なのかはわかりません。

 怖いって気持ちが先にきちゃったからそれ以上見たくなかったんです。


 あたしは堪え切れなくなってその場に倒れてしまい、


「みくるちゃん、あなた大丈夫?」という涼宮さんの声を最後に、あたしの意識はなくなってしまいました。


――――


「あれ? あたし」


「あ、お目覚めのようですね」


「朝比奈さん大丈夫ですか?」


 目を覚ました時、あたしは部室の入口付近で壁によたれかかって寝ていたみたいです。


「はい、大丈夫みたいです」


 起き上がろうとした時、


「あ」


 あたしは自分の身体にカーディガンが二枚かけられていたことに気付きました。身体が全然寒くないので、風邪を引く心配もなさそうです。


「このカーディガン、涼宮さんと長門さんのものでしょうか」


「そうよ!あたしはいいから有希に感謝してあげて?」


「あ、はい。ありがとうございます長門さん。これ、返しますね」


「そう」


 カーディガンを受け取っても、長門さんはずっとあたしのことを見ていて、あたしはちょっと怖くなってしまいました。


「あの、えっと」


「どうしたんだ、長門」


 長門さんはキョンくんの方を見ずに、あたしの方をじっと見つめて言います。


「朝比奈みくるが意識を失った要因の大部分は、私の不手際によるもの」


 言い切ると、長門さんは今度はキョンくんのことをじっと見つめました。


 キョンくんは理解ある飼い主みたいに長門さんを見つめ、


「もしかして、謝りたいのか長門?」


 その質問に長門さんは何も答えませんでした。


 そのまま長門さんは手元の本へと視線を戻しちゃったけど、たぶん、ううん。キョン君の予想は当たってたんだと思います。


「ふふ」


 長門さんのことはやっぱり苦手だけれど、たまにはこういう日があるのもいいのかな。


 その後あたしは、いつもは涼宮さんが最初なんだけど、今日一番最初のお茶は、長門さんに入れました。



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