/4 faint.
賞金稼ぎとして以上にFPライダーとして将来を有望視される<七人の小人>は、エルとマリアージュ=ディルマが引き取って育てている孤児たちだ。この時代においてさして珍しくもない。その幼さの中に確かに窺える走空の才知はふたりが見出したのか、それとも偶然を七つ連続で引き当てたのか定かではない。
<四子>ファーリンと<五子>ソルディは同い年で、あの森の奥の隠れ家にやって来た時期も近く、七人の中でもことさら仲が良いきょうだいのような二人だった。
二人は駆動すれば『動く密室』と化すエレベータの『R』……屋上行きのボタンを押すエルを見ながら、同じ感想を二つの口に分けて言った。
「エルってさ」「ブッ飛んでるよね」
「そうか?」
表情は無いまま揺らした黒髪。どうやら自覚のないらしい父親代わりの青年に対し、今度はエレベータが二人の気分を代弁して閉口する。
――重量オーバーには程遠く。状況を考えれば当たり前だが、屋上へ辿り着くまでに各階で停止することを義務付けられた
/
「
押し込み強盗のような突入から数分。エルがエレベータのボタンを押した頃合で、階段を昇った先に立ち塞がる隔壁を<末子>シルヴィの仕掛けた爆弾が破壊。口元を手で覆いながらマリアージュ=ディルマはそんな感想を口にした。
<
ぱしん、ぱしん、と二回。リズミカルに鳴り響く音。
「い゛ッ」
「あ゛ッ!?」
二人の少年はたったそれだけで動きを封殺された。ふぅ、と退屈そうな溜息を一回、渦中に行うだけの余裕さえ生まれている。その後でもうワンセット。
「……【二番】があの方たちの椅子になってから、ですものね。新参の賞金首の持つ武装なんて、高が知れているのだもの」
胎児のように
――素振りのソレに、三度目を想起させられた二人の賞金首は、そこで心を折られた。
【大強盗】OZが起こした最初の『事件』。それにより席を奪われた【鉄と火薬の魔女】の、表舞台からの撤退は人々の認識よりも遥かに影響を与えている。
かつては発注さえあれば『地球の裏側』にだってあらゆる武器を届けた死の商人の事実上の引退で、一番の打撃を受けた勢力はどれか――言うまでも無く、世の犯罪者たちである。
妙な言い方だが、彼らは犯罪行為に利用するための武装を、【魔女】のサービス無しで都合しなければならなくなった。それをマリアージュ=ディルマは楽だと言い。
また、そんな物騒な物に頼らなくてもヒトは止められる、と証明するかのような彼女自身の武装だった。
――西暦の最先端、二千年台にあってなお、人類は根本的なソレに抗えない。生態系の頂点に立つ霊長であってなお、人類もまた『動物』であると文字通り痛感させる武装。
彼女の持つ馬上鞭に、直接的な殺傷能力は無い。ただ、これで打たれると痛い。ものすごく痛いのだ。
……一度でも
そうして鮮やかに無力化した賞金首を追いついた<小人>が拘束する。
その奥で、エレベータが停止し、ドアが開かれた。
/
屋上行きのエレベータが二階で停止する。ドアが開くと同時に、銃弾の雨が出迎えた。当然だ、一階は制圧されているのだから味方が現れるはずがない。
銃声の中で金属音だけが乱反射する。異常はすぐに見て取れた。
「……な、」
壁にしこたま銃痕を刻まれたエレベータは無人だった。
やられた、と思った時にはもう遅い。後方から転がってくるボールが煙を吹き始める。催涙弾に咳き込む中、今度は<朱雪姫>に先んじて駆け込んだ二人……<三子>ミカエルと<六子>ラインは両手にしっかり握った拳銃でタン、タン、タンと撃ち抜いた。
振り向き様に
「敵影ないよぉ~。二階制圧かなぁ~」
「では次へ。それにしても……あらあら。お兄様も人が悪いですわね」
無人のエレベータ。兄の立案に付き合うファーリンとソルディに同情するように、マリアージュ=ディルマはそっと苦笑した。
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