/3 Bad Apple.
【翼】が標的とする賞金首たちは、
全
地上四階。
――『開幕の挨拶』を終えた舞台女優の首が、見下ろしているこちら側にくるりと向けられた。無論偶然だ。視線に気付く、だなんてオカルトは実証されてなどいない。
それでも。目が合った、と認識した後で微笑む絶世の美貌に……恋などでは断じて無く。純粋な
さて。襲撃が目前に迫った場合の組織の行動は大まかに四つに分けられる。
逃走するか、降参するか、立て篭もるか、打って出るか、だ。
【赤】く色めき立つ、街行く足を止めた人々の声の中にあって。ソレはいっそ奥ゆかしいまでの些細な音でビルから放られ地面に落ちた。
「あら?」
サムズアップの手に似た――あるいは拳大のパイナップルを思わせるソレは、気まぐれにすり寄って来る猫のような軌道で地面を転がり、マリアージュ=ディルマの足元で炸裂する。
一度限りの存在証明。歓声を打ち消す大音量。至近で手榴弾の爆発に見舞われたマリアージュ=ディルマは、
「……
刹那の間に爆風を吹き飛ばし遮った銀の十字架に向けて、うっとりしながら。
歓声が悲鳴に変わる。彼女らを取り巻いた半円周が一気に遠ざかる。
そんな中で、<
「だって、こんな相手はほんとうに久しぶりで。ねえエル……命がけの予感がしますわね?」
/――こんなふうに。
「……
「はい、それは勿論」
踏み出す。そのタイミングに合わせてビルのドアが内側から開いた。
小さなエントランスの中央に位置する受付には誰も立っていない。代わりに開かれたドアの両側面から銃口が一つずつ覗いている。次の瞬間にはマシンガンが放たれるだろうその絶妙なタイミング。
「ドルチェ、レアルナ」
たん、たん。
響いた銃声は二つ。
『clear』
『エイム
マリアとエルの背後……事態を遠巻きに見守る民衆のさらに奥。その頭の数々を縫い、道路を挟んだ向かい側から針に糸を通す精密さで放たれた<長子>と<二子>の狙撃が覇道に滴る露を払う。
静寂。それを破るのもやはり、彼女の一声だった。
「では<クリムゾンスノウ>…………突・撃♡」
風が生まれる。快音を響かせて、光の粉が五本の線となって次々にビルへと飲み込まれていった。
『エントランス制圧完了』『敵影無し』『エレベーター稼動してるよぉ~』『階段前ふさがれてる』『だいはっけん』『シルヴィ詳細』『どろしーがひょうし』『詳しく』『あっほんとだ~すご~い!』『“ライドザスカイ”!?』『絶版のアレ!?』
『仕事優先。ソレ没収な』
『『『『『レアルナ横暴ー!』』』』』
『HurryUp!』
『『『『『はぁーい!』』』』』
「ドルチェ、レアルナは引き続き監視を」
『ok,L』
「ミカエル、ライン、シルヴィは階段の障壁を排除後、マリアと上を」
「了解」「エルは~?」「ばくはならまかせて」
「私はエレベータを使おう。ファーリンとソルディ、来れるか?」
「「密閉やばくない?」」
「そこは私に考えがある。……往こうか」
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