番外編 聖夜の日には


「はぁ・・・」


と私は書類を手にため息をつく


「どうした院瞳 お前らしくないな」


と会長にまで言われてしまった


「いえ なんでもありませんよ」


と作り笑顔で私は答える

生徒会室 副会長としての仕事をしている最中だった私 院瞳 亜莉栖


「しかし 亜莉栖ちゃんは仕事早いねー」


と隣にいる書記の人に言われた


「副会長になったからにはこれくらいのことはしないと・・・」


「これだったら俺が卒業しても安心だな!」


「むしろ 会長がいなくなったほうが仕事やりやすいんじゃ・・・」


と会計の人がいう


「なんだよそれ!!」


と会長の声が響き そのあとみんなで笑っていた

12月22日

明日は休みで明後日にはもうクリスマスイブだった

この時期は毎年毎年嫌になる

燈夏祈ちゃんにカナシミをあげて両親のカナシミは消えたとしても

そして両親が優しくなったとしても 私の誕生日・・・12月25日には一緒にいてくれない

毎年そうだったのだ 急に変わるはずがない


「そういえばもう明後日にはクリスマスイブですねー」


と書記の人が言った


「あーあー 今年も独りぼっちー」


「院瞳はクリスマスの予定はあるのかー?」


「え・・・はい 家族と一緒に過ごす予定です」


「あー 家族で仲いい人はいいはねー 一人暮らしなもんだからあたしはやっぱり一人・・・」


「家族との交流もいいが 友達との交流も深めろよー」


友達・・・・か

私は 自分の仕事を終えると生徒会室を出た

明日から休みだ

友達・・・・私の親友と言えば みなづ・・・局薬 みなづ

中学3年生からの転校生だった

私と加不思くんと報道くんは中学からのクラスメイトだったけれど みなづは3年生からの友達

帰り道が同じで一緒に帰ってると なんだか楽しくて・・・それからもう親友まで言える仲になっていた

みなづと一緒にクリスマスを・・・・

悪くはないけれど みなづもみなづで用事があるはずだ

邪魔は出来ない 


「あ・・・・亜莉栖ちゃん!」


と私は玄関まで行くとみなづがいた


「みなづ・・・?どうしたの?」


「委員会の仕事で遅くなっちゃって・・・最近一緒に帰ってなかったし亜莉栖ちゃんのこと待ってたの!」


「・・・そうなのね それじゃあ 一緒に帰りましょう」


と私たちは靴を履き替え 家に向かった


「明日から 休みなんだね・・・ねぇ 亜莉栖ちゃん」


「どうしたの?みなづ」


「クリスマスの日って用事ある?」


「え・・・?」


クリスマスに? ・・・・知らないはずだみなづには

私の誕生日を 行った覚えはないし 中学生の卒業文集の誕生日欄ではあえて何も書かなかったから・・・


「何もないわ それがどうかした?」


「ううん!・・・それだけ確認したかったの」


と言うとみなづは黙り込む

クリスマス・・・クリスマス・・・ね・・・


~12月25日~


とうとうこの日が来てしまった

クリスマスか・・・ 毎年毎年一人で送っているのよね

だから特別に感じたことはなかったわ


ケータイから着信が入る みなづから・・・


『亜莉栖ちゃんへ  今日 16:00に燈夏祈ちゃんのいる塔まで来てください みなづより』


あの子・・・手紙じゃないんだから よりとかへは付けなくていいのに・・・

まぁ それがあの子のいいところなんだけれどね

16:00ね・・・まだまだ時間はあるけれど・・・

どこかで暇つぶしでもしよっかな・・・


「お? 院瞳じゃねーか」


「おぉ! やっほー院瞳さーん!」


と二人の声がした

加不思 鏡太君と

報道 樹斗君だった


「あら 二人並んで・・・どうかしたの? 加不思くんなら燈夏祈ちゃんとラブラブしてればいいんじゃないの?」


「うるせぇ・・・ 院瞳こそだ こんなところで何してんだ?」


「ちょっとした暇つぶしよ」


と私は言う 


「俺らはちょっとした買い物だなー」


「そうだな」


「買い物ねぇ・・・ それにしては大荷物ね」


私は 二人の手に持っている袋を見た


「ん? あぁ 俺んとこの明日からの食料も入ってるからな」


「こいつおかしいんぜー 別にこいつ作るわけじゃねーのにばんばん決めてくしよー」


「俺は記憶力いいからな 足りないものは全部分かっているつもりだ」


「それでもつもりなのね」


と私は笑う みなづと話しているとき同様に この二人の会話は面白い


「おい 鏡太 これじゃ 少し遅れるんじゃねーか? 急がねぇと!」


「っと そうだな またな 院瞳」


と二人は小走りでどこかにいった

どこかでパーティーでもするのかしら?


「あ・・・れ・・・?」


涙がでた

なんでだろう なんでなんだろう 

私は目からこぼれ落ちる涙を必死に拭きながら

16:00の時間をまった


~舞雪塔 前~


今丁度 16:00かしら

携帯の時間もそうだし ちょっきりね

私はドアを開けた瞬間だった


「ハッピーバースディ!!」


と目の前には 加不思君 報道くん 燈夏祈ちゃん みなづがいた


「な・・・んで・・・」


「なんでって・・・」


「ふふー!カナシミをもらった人のことを知らないことはないんだよー!」


と雪里 燈夏祈ちゃんがそういった


「ひげきねぇが俺にそう教えてくれてな それから樹斗 局薬に広めたんだよ サプライズパーティーだな」


「・・・ということは あのときのは全部演技?」


「そうだなー 騙されてた?」


「えぇ すっかり騙されたわ」


と私は言う


「びっくりさせてごめんね 亜莉栖ちゃん」


「いいえ とっても嬉しいわ ありがとうみなづ」


「さーてと! パーティーだよ!パーティー! 盛り上がろうよ!!」


「なんで 燈夏祈ちゃんはこんなハイテンションなんだ?」


「ひげきねぇ ずっとこの塔にいたもんだし 誕生日に不幸があったからな パーティーするの久しぶりなんだよ」


「それでなのね」


「燈夏祈ちゃんを中心に ずっと頑張ってたんだー!」


と私は 今までのクリスマスとは違う 友達と一緒にいる とても楽しいものになった

12月25日という 私の誕生日に・・・・


~数時間後~


「ふへー 食った食ったー!」


「それじゃ そろそろ終わりにしよっか!」


「そうね こんな時間だし」


「それじゃあな ひげきねぇ 明日また来るよ」


「待ってるよー!!」


~舞雪塔 外~


「おい 院瞳」


「なぁに? 加不思くん」


と加不思くんは話しかけてきた

みなづと報道くんは周りにはいなかった


「どうして 局薬に誕生日のこと教えなかったんだ?」


「・・・知られたくなかったのよ あんな状況だったの 一人で居る寂しい子って思われたくなかったのよ」


「ふーん・・・」


と加不思くんは言った


「俺は 局薬のこと嫌いなのかと思ってたよ 親友だけど 全てを話せないみたいな・・・」


「あら それは心外だわ 私はみなづのことが好きよ?











性別という線を超えてね」


「!!!!?????!?!?」


「ふふ 嘘よ」


「おい それ冗談に聞こえねーぞ!!」


「嘘っていったら嘘よ さすがにレズなんてものにはならないわ」


「それならいいんだが・・・」


ふふ 戸惑ってる 戸惑ってる

私は みなづのことが好き

友達と言う意味で

もし・・・

もし・・・私がもう少し病んでいたら

みなづのことを性別の線を超えた好きになっていたかもしれないけれど

でもそんなことは もうこれからないだろう

私は笑った


「どうしたんだよ 急に・・・」


と加不思くんに言われながらも笑った

今までの・・・・今までの寂しさを埋めるかのように


「亜莉栖ちゃーん!」


と先に行ってたはずのみなづがやってきた


「どうしたの? みなづ」


「一緒に帰ろうと思って・・・ 樹斗くん先に行っちゃったし・・・」


「あいつ早いなー」


「ありがとう みなづ」


と私は みなづの頬にキスをした


「ふぇ!? 亜莉栖ちゃん!?」


「お前! さっきのやっぱり本当なんじゃぁ・・・・」


と二人は 頬を赤らめてそういった


「ふふ 嘘よ 嘘 さっきのはちょっとした意地悪よ みなづ 早く来ないと置いていくわよ?」


「え・・・まってよ 亜莉栖ちゃん!」


「ったく・・・」


12月25日 クリスマス 私の誕生日

去年まで 一人だった 誕生日

でも今年は・・・・友達と過ごした 誕生日

今日この日 私はずっと・・・・

ずっと・・・忘れない



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カナシミノウタ 港龍香 @minatoRK

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