四つ目のウタ~報道 樹斗のカナシミ~

報道 樹斗つまるところ俺の親友のカナシミは 実は解らないのだ それは なぜか?


簡単な話 ひげきねぇが歌にしなかったからである

局薬のときだって 院瞳のときだって

塔をでると 必ず歌が聞こえてきた

しかし樹斗の場合 塔の外に出ても歌は聞こえなかったからだ


さて 樹斗がカナシミをあげた時期は6月の終盤・・つまり夏休み前のことだ 局薬みたいに不良にからまれない 院瞳みたいに事件に巻き込まれない そんな樹斗がある話を持ちかけてきた

・・・・・まぁ 俺が喜ぶ話だ

舞雪塔と同じく 不思議な建物となっている館 俺と樹斗は夏休み前にそこへいったのだ

最初にも言ったとおり 樹斗のカナシミは俺には解らない

しかし これを読んでいるあなただったら解るだろうか?

報道 樹斗のカナシミを


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おい鏡太ー! 夏休みもうすぐだなー!!」


と樹斗はそう言う


「テストも終わったしな 人数も少ないからか 試験休みもねぇし」


「そこで提案だ」


提案? 一体何するつもりだ?


「町外れの館にいこうぜ!」


と樹斗はそう言った

町外れの館

雪里がいる塔と同じく

不思議物件の一つだ

夏休みの暇なときでも行ってみようと思ったんだが

ここで行くのはいいかもしれない


「いいぞ いつだ?」


「出来れば 今日行きたいんだが いいか? 何か用事でもあるか?」


「何もねえよ 行こうぜ」


そして放課後 俺と樹斗はその館についた


「もし幽霊とかでたらどうする?」


「害なさそうだったら撮るし ありそうだったら逃げるぜ! お前を置いてでも!」


「あっそ」


と俺は言った

俺をおいてでもか・・・

まぁ 判断としていいかもな

実際あったら 慌てて 自分のことしか出来ねぇし


「それじゃ 入るか!」


と樹斗は館のドアを開ける

中に入ってみると

やはり あの塔と同じく

洋風の作りだった

まぁ 館だしな

俺等は しばらく館の中を見て回った


「なんにもねぇな・・・」


「そうだなー 期待はずれだなー」


「何もなさそうだし しばらくは 別々で探索するか?」


「おぉ! いいぜ!」


と樹斗とは一旦分かれる

合流場所を正面玄関と決めた


俺は 一階を見たあとすぐ二階に言った

どうやらこの洋館 財閥とかではなく

ホテルのようなもので使われていたらしい

部屋の構造もそんなものだ

経営が困難で潰れたんだろうな


実はと言うと

この洋館の正体を俺は知っている

と言っても噂程度で

潰れたというのも極最近聞いたんだが

この荒れようじゃ 最近じゃねーよな

たしかにこの洋館は

宿屋として使われていた

洋式旅館みたいなことを目指してたんだろうが

まぁ こんなところでたてたのが悪い

客もこねぇから 潰れたんだろ

しかもここには悪い噂があった


『夜中にくると女の子が館にいるんだって』


というな

周りからみたら気味が悪いが

俺にとっては 胸が踊る情報だ

だからこの館の正体を知っても

行ってみてぇって気持ちは高まるばかりだった

二階をある程度周り俺は 一階に降りる

正面玄関と向かいにドアがあり

そこにいけば 従業員の部屋となって裏口がある

そのドアの前に樹斗がいた


「・・・・・・・・・・・・・ごめんな・・・・・」

なにか言っているようだったが うまく聞き取れず

『ごめんな』しか聞こえなかった


「おぉ! 鏡太 お前はもう見たのかよ?」


「あぁ さらっとな お前は?」


「この先に言ったが 幽霊も何も出てこねぇから ちょっと残念だよ」


と樹斗が言うと

右手には花束があった

だが 俺はそれに突っ込まなかった

さっきの言葉とその花束でもう察しはつくが

まさかとかしか思えない


「お前 二階とかも見たのかよ?」


「二階にはいやーな空気しねぇし パスだな」


と樹斗は言った

どんなかんだ


「さーてと 何もねぇし 帰るか」


と俺は正面玄関の方に向く


「おうよ!」


と樹斗の声が後ろから聞こえ

俺はドアを開けた


~しばらくして~


帰る途中樹斗が話しかけてきた


「俺 あそこ一回行ってんだよ 潰れてまもないときにな」


「それは初耳だな」


「まぁ そこで信じられない光景を見ちまったんだ 今日は丁度1年なんだ」


と樹斗は言った

潰れたって話は 5ヶ月前に聞いた話だ

1年も前に潰れていたんだな


「まぁ その 付き合わせて悪かったな」


「いや どうせ俺も あの館に行きたいと思ってたからな 丁度良い機会だよ」


「今回は何もなくて良かったよ 1年前はこんな晴れやかな気分で帰ってなかったしな」


と樹斗は言う

でも 内心樹斗は辛いんだろう

いうなれば トラウマにもう一度向き合ったみたいなものだからな


「樹斗 1年前にどんなことが合ったか聞かないが お前の悲しみ助けてやろうか?」


俺は そう言った

そして行くんだ もう一つの不思議スポット

雪里がいる塔に・・・


~塔~


「雪里いるかー?」


「おー! キョウタ君ではないかー! 待ってたよー!」


「ほー こいつがこの塔の主ってわけかー!」


「・・・・・誰?」


と雪里がすごくシュールに質問をする


「俺は報道 樹斗だ!」


「あー・・・うんうん キョウタ君はいい人たちを連れてくるねー うんうん 私は雪里 燈夏祈!」


と雪里は言った こいつ また心の中見てやがるな


「あなたの苦しみ静めましょう

 あなたの悲しみ晴らしましょう

 あなたの悲しみは一体なに?」


と同時に光に包まれる

何回見ても不思議な光景だな

しばらくして光が小さくなった

局薬や院瞳とは違い

倒れてなかったので 

今回は疲れないで済みそうだ


「これが カナシミを上げたってやつか?」


「うん そうだよ キト君」


と話している 樹斗は情報マニアだからな

こんなところも良く知っていたはずだ


「鏡太ー 帰ろうぜー!」


と樹斗は言った


「じゃ また来るな」


「おう! 待ってるよ! キョウタ君!」


いい加減 カタカナ発言やめて欲しいんだがな

俺と樹斗は塔をでた


「局薬さんも院瞳さんも 変わったのは燈夏祈ちゃんのおかげなんだなー」


「ちゃんって・・・あいつ年上だぞ」


「おう 知ってるぜ! 名前も年もな 経歴だけ調べれなかったが」


こいつ侮れねぇ・・・・


「そうか・・・それで局薬さんが 鏡太のこと・・・・はこの理由のためなんだな」


と樹斗は言うが ある部分だけ聞き取れなかった

わざとか?

まぁ 深くは追求しねぇけどな


「あーあー これで不思議スポットはこの近辺なくなったな・・・」


俺は悔しがる 不思議調査が出来ねぇのは

まぁ 寂しいっていうかな・・・・


「なら夏休み 遠出しねぇか? 結構いい場所しってるぜ」


「おう 解ったよ」


ま 樹斗に任せればこんなもんだよな

そして俺等は普通に住宅街に出た・・・・


あれ? 何か足りない

あぁ 歌 か

樹斗のカナシミの歌を聞いていない

まぁ 聞くつもりはねぇし

だいたい察しているが

まだ推測の域

どんなことが起きて

樹斗がどんなことに巻き込まれたなんぞ

俺は知らない

樹斗ならそこらへんも調べるだろうが

俺はあいつじゃねぇしな

だから・・・・

樹斗自身がその事件を話してくれるまで

俺は待っていようと思う

俺等は 親友

だからな


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る