最後のウタ~加不思 鏡太のカナシミ~

加不思鏡太 雪里燈夏祈 二人は塔の最上階から黄昏を見ていた


「ここからみえる夕日はきれいでしょー?」


「そうだな」


局薬事件から三ヵ月後 俺は夏休みに入っていた


「それじゃ そろそろ帰るから」


「また 明日ねー」


俺は家へ帰った


「ふふ なつかしいわぁ」


加不思 奈姫(かふし なき)俺の母さん


「母さん 何みてるだ?」


「アルバムよぉ・・部屋をお片付けしてたらでできたのぉ」


ふーん


「兄さんいたときのあるか?」


「昔のだからねぇ・・はいこれよ」


一枚の写真を渡した 

そこには小さいころの俺と俺に似た男の子がいる


弦座野 勇堵(げんざの ゆうと)俺の一つ上の兄

小さいころに父さんと母さんが離婚しちゃって

俺が母さんゆう兄さんが父さんに引き取ったんだ

離婚した後たびたび会っていたが 日に日にあわなくなった

今 何をしているかわからない

俺は写真を見ているうちに気がついたことがあった


「なぁ 母さんこの子だれだっけ?」


俺はゆうにぃの隣にいた女の子をさした

なんとなく雪里ににていた


「亜乃舞 蒲己雨ちゃんじゃなかったかしら?」


あのまい・・・ふこう?


「ふうちゃんよーおぼえてない?」


あぁ・・思い出した 亜乃舞 蒲己雨 ゆうにぃと同い年

俺の一つ上 お姉さんらしいひとだった


「そして瓜二つの妹がいたのよねぇ 双子しかも二卵性だったのに」


「双子?」


ふうねぇに妹がいたのか?俺は母さんに質問する


「名前なんていうんだ?」


「んーとね雪里・・・燈夏祈ちゃんだったと思うわ」


雪里が!?ふうねぇの妹!?

なるほどな だからふうねぇに似ていたんだ


「ふうちゃんとゆうくん 元気にしているかしらぁ~?」


「二人は元気だとおもうよ」


「あらぁ?なんで?」


だぶん・・と俺は言う そして


「運動部とか入っててさみんなに信頼されていて・・・」


とピンポーンとベルがなる


「はぁ~い?だれかしらぁ?」


と母さんがドアを開けるとそこにいたのはゆうにぃだった


「ゆうにぃ!?」


「鏡太・・・母さん・・・父さんが・・」


「実都野さんがどうしたの?ゆうくん」


そしてゆうにぃは言う


「父さんが・・・・死んだ」


といった同時に倒れるゆうにぃ


「あらぁ!すごい熱!」


ゆうにぃは父さんが死んだことを知らせるために走って

風をひいたのか?それとももともとなのか?どちらにしても

さすが ゆうにぃだ


「とりあえず俺の部屋に!」


「そうねぇ!!」


~次の日~


父さんの葬式がはじまる


弦座野 実都野(げんざの みとの)俺の父親

仕事熱心だが家族思いのいい父親だった

まぁ母さんに恐れていたわけだが

なぜ父さんと母さんが離婚したかというと

家庭の事情よりも家系の事情だろう

父さんと母さんの家系は昔から仲が悪かったらしい

どんな事情なのかは二人とも知らないみたいだが

父さんと母さんは出会って一目ぼれ 親の反対を押し切って結婚

そして俺とゆうにぃが生まれたのだ

どうしても離婚しろとうるさかったらしく

離婚 そして別々に暮らした

俺は母さん ゆうにぃは父さんの血が濃かったからそれぞれに引き取られた


ちなみに父さんが死んだのは交通事故

家の前でひき殺されたらしい

運転した人は居眠り運転で逮捕されたらしい


「やっほ きょうくん」


「ふうねぇ・・・」


亜乃舞 蒲己雨もといふうねぇがいた


「きょうくん久しぶり 元気だったみたいだね」


「ふうねぇもな」


見た目が雪里そっくりだ そういや姉だったけ?


「んーやっぱり燈夏祈はきてないか・・・」


「・・・!」


燈・・雪里を呼んだのか?


「小さいころにあっただけでも出ないさいよーっていったのにー」


「ふうねぇ その燈夏祈って誰だ?」


と俺は聞く だってほら約束あるだろう?


「きょうくんは小さい頃に会ったきりか 燈夏祈はね私の双子の妹なの」


「そういや 母さんにきいたな・・忘れていた」


どっちかというと姉妹だったのがな


「聞いた?名字は雪里 小柄でかわいいのー!」


雪里がかわいいかどうかは置いておこう

ふうねぇは聞く


「あれ?ゆうくんは?」


ゆうにぃは俺の部屋にいる まだ熱下がってないしな

俺はそのことをふうねぇにいった すると


「ふぅん」


と言っていた なんだ?興味がなかったのか?

と葬式が始まる 

ただの葬式 父さんの葬式 

ゆうにぃは何をしてるだろうか 黙って寝ているだろうか

ゆうにぃは黙って外に出るはずもない俺はそんなことを思っていた

が・・・ゆうにぃは一人で外に出て あの塔へと言っていた

そう雪里に・・・カナシミをあげるために・・・・


~塔 内部~


「失礼するぞ 雪里 燈夏祈」


「んー?誰かなー?キョウタ君が何か喋ったかなー?」


と燈夏祈は言う


「違う 俺はお前を知っているからここにいる」


「ふーん・・・まっ 知ってるのはいいけど あなたのカナシミは もらえない」


「!なんでだ!」


勇堵は驚く そして燈夏祈はこう言う


「人のカナシミはね もらえるものともらえないものがある もらえない物・・・そのカナシミは無くてはいけないもの ミナヅちゃんやアリスちゃんキト君とは違ってね」


そしてと燈夏祈は言う


「キョウタ君は・・・カナシミが大きすぎる 満ちているんじゃない カナシミが大きすぎて私にも他人にも そして・・・きっとキョウタ君自身も気づいていない」


勇堵はさらに驚く 自分の弟がカナシミを持っているから

しかも誰よりも暗くずっと一人で背負ってきたのだから


「鏡太のカナシミは・・・?」


「いっぱいあるけど・・・一番大きいのは・・家族全員と一緒にいられなくなった事 小さいときに起こったからかな?自分も泣きたいけどお母さんに心配させないように ずっとこらえてきたんだよ えらいねキョウタ君は」


「・・・なんで気づかなかったのだ?」


と勇堵は聞く そして燈夏祈は答える


「簡単だよ 最初にいったでしょ?気づかなかったって アリスちゃんの カナシミを貰ったあと気づいたんだよ」


勇堵は無言だったしばらくしてから言う


「鏡太のカナシミをとることはできないのか?」


「んー無理だね あそこまで大きいと死んでないと無理・・かな」


「え・・・お前6年前に・・・」


バンと音がしたドアのほういたのは鏡太 蒲己雨である


「6年前になにがあったんだ!ゆうにぃ!」


「・・・6年前・・火事があったんだその被害者が蒲己雨 燈夏祈の母 そして雪里 燈夏祈なんだよ」


とゆうにぃは言った だがすぐにふうねぇは言う


「違うよ ゆう君」


ふうねぇは続けてこういった


「6年前 死んじゃったのは燈夏祈のお友達なんだよ 6年前の・・・燈夏祈の誕生日 お友達とお母さんとでパーティーをする準備でお友達は先に来てたの 燈夏祈は委員会で遅くなってね 家に帰ったら 火事になっていたんだよ しかも事故じゃないって ところが驚きだよね」


え?と俺は思う 事故じゃない・・他殺・・?


「犯人がいたのか?」


「その通りなんだよきょう君」


とふうねぇがいうと 雪里は言った


「犯人はね・・・誰でもいいから火事を生で見たかったんだって・・・ そのあと自殺したんだけど・・・・そして友達の家にお父さんと蒲己雨お姉ちゃんが謝りに行ったの」


「燈夏祈はね お友達を殺してしまった罪悪感でこの塔に引きこもったんだ」


へぇ・・・と俺はうなずく ・・・・


「なんで・・・雪里はカナシミをもらっているんだ?」


「それはね 自分のカナシミを埋めるためなんだよ」


と雪里はいった 自分のカナシミを埋めるため

はたして俺がこれまで連れて来た人はどれだけのカナシミを埋めたのだろうか


「疑問も解決したところで ゆう君!風邪ひいてたんでしょう?帰るよー」


とふうねぇはゆうにぃを引っ張っていった

・・・反論する暇をあたえずに さすがふうねぇ


「雪里・・・・」


と俺は言う


「なに?キョウタ君」


「・・・大丈夫か?泣き顔になってるぞ」


「あはは 昔のこと思い出したらだよ 大丈夫も何も・・・ねぇキョウタ君 覚えてる?」


「ん?何をだ?」


と俺は聞く 雪里が問いかけてきたものに


「小さい頃のこと・・・約束してたんだよね・・・あっ!いや小さい頃のだし今はたしてって訳じゃないよ!」


と雪里はいった 小さい頃そう 俺は思い出した


『きょう君はねゆう君よりもかっこよくなるね!』


『そうかな?ゆうにぃは頼りになるし・・・』


『そう?きょう君のほうが私は好き!ふこうお姉ちゃんはゆう君みたいだけどね!』


『そうなんだぁ』


『そうだ!また会ったとき!こいびとになろ!』


『いいの?他に好きな人が出来るかもしれないよ?』


『ううん!きょう君以外にいないよ!ゼッタイ!』


『そう?また・・・いつか・・ね!』


『うん!ゼッタイ忘れないでねきょう君!』


『うん!ひげきねぇ!!』


そうこんな約束 これが俺と雪里・・・ひげきねぇの最初で最後の会話

あのあと雪里は引っ越したんだ


「きょう君?」


と雪里は言う そして俺はいうのだ


「わすれててごめんね ひげきねぇ 約束だね」


と そう小さい頃の約束 俺が忘れていた 雪里が覚えていた約束

それが今 はたされたのだ


~翌日~


さて 葬式が終わったあと ゆうにぃのことで話された

本当は離婚しているゆえ 母さんが引き取ることはないのだが

母さんの強い説得・・・でゆうにぃはこっちで引き取ることになった

本人は一人暮らしでもいいと行ってたらしいが んなもんかんけいねぇ


「いつでも実都野さんとゆう君が帰ってきてもいいように 大きく作ったのよ~」


といっている いや4人暮らしでも大きすぎるぐらいだ

母さんの説得を聞いていると父さんが母さんを恐れていた訳がわかった

あれはな・・・トラウマになりそうだ 悪女って感じだ


「それじゃ 俺は図書館に行ってくるから」


「図書館か?彼女でも・・」


「なわけないだろ 友達とだよ」


「いってらっしゃーい~」


と俺は家を出た


~図書館~


友達・・・といっても男だけでなく

局薬 院瞳 樹斗とである

夏休みの宿題をやろうと集まったのだ 

もちろんみんな私服だ


「でもね 全員頭いいのよね 樹斗君以外は終わるわよね」


「え!?なんで俺だけ!?」


「お前 中学のとき いつも忘れていたじゃねーじゃか」


「そうなの?駄目だよきちんともってこなきゃ!」


みたいな会話をして 局薬はふと聞いてきた


「あああああのね?加不思君 えっとその・・彼女とか・・・いる?」


「・・・・いるが?」


「ふえっ!」


と局薬が泣き出した なにか悪いことしたか?俺


「残念ね みなづ」


「うう・・亜莉栖ちゃん・・・」


と院瞳は慰めている


「俺が察するにあの塔の女の子・・・雪里燈夏祈っていったけ?」


「察する要素ありまくりね」


「どこに察する要素あるんだ!」


と俺は言う こいつらひげきねぇのところ連れていってから

性格かわってないか?


「ほう・・・」

「へぇ・・・」


と院瞳と樹斗がにやけた顔をする 何かしたか俺は!!


「それじゃ クラス中に・・・」


「広めるな!」


「みなづ~加不思君の彼女・・・・」


「言うなっ!」


こいつら気づいたのか?

そんなぐたぐたの中 夕方になると俺たちは別れた


俺はひげきねぇのところにいく

今でもあの塔にいる ふうねぇが家に来てみたいなこといってけど

ひげきねぇはあの塔がいいといったのだ

そういえば樹斗が塔についてこんなことを言っていた


「あの塔さ なんでも二人の学者がその土地を調べたら出てきた塔なんだってよ」


「へ~名前は?」


「舞雪塔だったかな」


と樹斗がいうと


「雪ねぇ・・・雪里の雪と同じだけど?」


「それじゃ 舞はなんだろ?」


「鏡太ーなにか知ってるか?」


「知らない」


と俺は即答した

いや俺はしっている おそらく舞雪塔の舞は亜乃舞の舞だ

おそらくひげきねぇとふうねぇの両親が見つけた塔なんだろう

俺はひげきねぇがいる塔・・・舞雪塔についた


「よっ ひげきねぇ」


「あ・・きょう君 カナシミ人連れて来た?」


「簡単に見つかるかって」


みたいな会話をして ひげきねぇはまた誰かからカナシミをもらうのだ

次は誰なのかもしかしたら これを見ているあなたなのかもしれない

自分のカナシミを埋めるために 俺はまたカナシミ人をみつけるのだ


ーあなたの悲しみ静めましょうー


   -あなたの苦しみ晴らしょうー


~あなたのカナシミはいったいなんですか?~



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