5th refrain
翌日、僕とキミが相合傘で歩いているのを誰かに目撃されていたらしく、「あんたら、絶対に付き合ってるでしょ?」と朝からクラスの女子達から
「付き合ってないなら、なんで相合傘で歩いてたのよ?」
「あれは昨日の帰りに急に雨が降り出してさ、名畑が傘を貸してくれるって言ったのに、一本しか貸してくれなくて、仕方なくだよ」
僕の答えを疑う女子からは
朝のHRの開始を知らせるチャイムが鳴ると、僕とキミの席の周りに集まっていた女子達は
その日からなぜか僕とキミの距離感は微妙で――キミに
前の席のキミとの15センチがとても遠く感じた――。
そして、キミに借りた通算3冊目の本を読み終わり、以前のように直接返せるような雰囲気ではないので、『本、面白かった。ありがとう』と書いた紙を本に挟んで、キミが席にいない隙を見計らって、机の中に入れた。
次の日の朝、学校に登校し席に着くと、キミから久しぶりに話しかけられた。
「ねえ、また本……貸した方がいい?」
「もちろん。持田さんの貸してくれる本、全部面白かったし」
「……分かった。じゃあ、明日持ってくるね」
「うん、ありがとう」
キミは終始俯き加減で目線を合わせようとはしてくれなかったが、僕は笑顔で答えた。しかし、今日の会話はこれだけ――物足りなさを感じつつも、またキミと話せたということは嬉しかった。
翌日、キミは本を貸してくれると言っていたはずなのに、そんな気配は
「はい……これ」
と、本を差し出してくる。それは少し
僕は「ありがとう」と、お礼をいいながら受け取り、タイトルだけでも確認しようと本を開こうと手をかける。
しかし、キミはそれを慌てて
「えっと……家に帰ってからゆっくり読んで……」
と、いつになく真剣な顔でキミに言われる。僕はいきなりのことで驚き、「う、うん」と返事をし、貸してもらった本を大事に鞄に入れた。
僕はキミに言われたとおり家に帰ってから本を読み始めた。しばらく読んでいると、本の真ん中あたりのページに何か挟まっていることに気付いた。僕はまたしおりかなと思いそのページを開くと、一通の
それは、犬のイラストがワンポイントで入っているかわいらしい封筒で、
僕は封筒を開け、封筒と同じ柄の
『私は、キミの笑顔と何気ない優しさが好きです。いつからか私は、キミを見るたびにドキドキして、いつかキミも見た私の飼っている犬のように見えない尻尾を振っているのだと思います。よかったら私と付き合ってくれませんか? 返事はその本を読み終えるころにもらえたら嬉しいです』
それはキミからのラブレターで――。それに対する僕の返事は決まっていた。
一秒でも早く返事をしたい僕は
眠れない夜が明け、僕はいつもよりかなり早くに家を出て学校に向かった。誰もいない教室でキミの机に本を入れ、僕はほっとして今頃になって
そして、ふと前の席に気配を感じて、僕は顔を上げ眠い目をこする。ぼんやりとした視界の中のキミは、僕から返された本に気付き、落ち着かない様子で本のページをめくっていた。
それに気付き、僕の意識ははっきりとしたものになり、僕からの返事を読んだキミは思わず顔を手で
僕の方に向き合うように座ったキミは薄っすらと涙を浮かべていて、それでも満面の笑顔で何度も首を縦に振った。僕は指でキミの温かな涙を優しく
「ねえ、持田さん。今日一緒に帰ろう?」
僕の言葉にキミはもう一度強く頷いた――。
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